ダキニと獣化
「アキト。アキト。シーラから聞いたのだけど、シーラと一緒に王都の周辺で魔物退治をして来たって本当なのか?」
放課後、今日は人造魔石の研究の手伝いもなく、ナスカのダンジョンへ行って、ジャンヌ達との近接戦闘の訓練をする予定だ。
一旦、寮へ帰ろうかと思っていたら、同じSクラスの狐系獣人のダキニがシーラとの先日のことを聞いてきた。
「あぁ、そうだぞ。
ちょうど、冒険者ギルドの前で会って、一緒に王都周辺で魔物退治をすることになったんだよ」
「良いな。良いな。今日、アキトが暇なら一緒に魔物退治に行きたいのだ!」
どうやら、ダキニはシーラと一緒に魔物退治に行ったことを聞いて、自分も一緒に行きたいと思って俺に声をかけて来たらしい。
「あぁ~、今日は暇だからダキニと一緒に魔物退治に行くのは良いけど、しっかりとまとまった時間がないと、魔物を探す時間も必要だろ?
流石に、放課後から寮の門限までの時間じゃ、そんなに魔物退治も出来ないだろ?」
「あぁ、それは確かにそうなのだ。それじゃ、今日はダメなのだ」
今日は無理と分かると、ダキニが落ち込んでしまった。
少し、可哀想だな。
「ダキニは、どうして魔物退治に行きたかったんだ?」
「実は、獣人族のスキルに訓練場では使いにくいのがあるのだ。
王都の外で魔物退治をしながらだったら、周りに迷惑をかけにくいし、アキトがいてくれたら何があっても安心なのだ」
いったい、どんなスキルを使うつもりなんだ。
しかも、俺への迷惑は別に良いのかよ。
まぁ、ダキニに迷惑をかけられても気にしないけどさ。
「じゃあ、魔物退治とはいかないけど、ちょっと変わった場所で何でもありの模擬戦してみるか?」
「アキトはそんな場所、知っているのだ?」
「おぅ。場所はちょっと離れているけどな。
その獣人族のスキルがどんな感じか知らないけどさ、多分そこで使う分には問題ないはず。」
「本当に良いのだ?
実際にクラス分け試験で、何をしても良いって言われて、本当にやったら、訓練場が酷いことになったのだ」
あぁ、俺と同じようにやらかしたんだな。
「それに、場所が遠いとなると、結局往復の時間がかかって模擬戦が出来ないのだ」
「それは、特殊な移動方法方法があるから、その辺は任せてくれ。
そこならば、どんなに暴れても大丈夫なのは保証するぞ」
「分かったのだ。
そこならば、いっぱい暴れられそうなのだ。早速行くのだ!」
ダキニが俺の腕を引っ張って、早く行きたいとねだってきた。
ダキニと2人で転移をする為に、人通りのいない場所へ来た。
女子と2人で、人通りの少ない場所・・・
全く、何もなくて、これから模擬戦をしようとするだけ何だけどね。
「アキト!これは凄いスキルなのだ。
伝説や噂の類いかと思っていたのに、本当に転移出来るんだな」
ダキニと2人で転移をして、ナスカのダンジョンまで来た。
元々、ジャンヌ達と訓練をする予定だったのだから、俺としてはそれにダキニが加わった感じだ。
サクッと、ジャンヌ達を召喚して紹介し合った。
ダキニは特に難しいことも考えていないようで、サクッと終わった。
「それじゃ、早速、俺と模擬戦をするか?」
「やるのだ!」
ということで、俺とダキニが向かい合って、模擬戦を始めた。
「アキト、じゃあ最初から本気でいくから頼むのだ!”獣化”」
ダキニは獣人族の中でも耳と尻尾にしか獣としての特徴を残さない種族だ。
それが、獣化を始めると、目に見える肌から赤みがかった黄色の毛が生えて来て、少しすると全身がその毛で覆われた。
そして、指先の爪は大きく伸びて、尻尾も二股に別れていた。
元々、狐系獣人なのだが、今の姿は二足歩行をしている狐のようでもある。
「がるるっ!」
獣化を完了させたダキニは一気に俺に迫って来た。
今までのダキニとは思えないほどの速さだ。
一直線で俺に接近して、長く伸びた爪を俺に振り下ろした。
俺は模擬刀でそれを受けるが、ダキニと授業中で模擬戦をやった時は模擬刀を使っていたが、それよりも何倍も強い一撃を放っている。
ダキニはそのまま、その爪で俺にラッシュをしかけてくるが、その一撃一撃がしっかりと重みがある。
ただ、何故かダキニの今までやってきた、模擬戦での良さが現れていない。
ダキニの良さはテクニカル的な攻撃にある。
今みたいなラッシュをするにしても、いつもだったらその中にフェイントを織り交ぜて、本命の一撃を入れようとしてくるのだ。
更に風の属性魔術が得意なので、それも巧みに取り入れて、風の刃を近接で放ったり、攻撃祖速度に微妙な緩急を付ける攻撃をしたり、上手く属性魔術も織り合わせている。
本人は天真爛漫な性格をしているのに、こと戦闘に関しては老練な使い手のようで関心をしていたのだ。
それが、今はどうか。
一撃の重さや最大速度は間違いなく上昇している。
多分、身体強化よりも上昇率が高いかもしれない。
しかし、全くといって良いほど、テクニック的なものを感じられない。
ただ、敵を見つけて暴れているだけで、本当に獣の相手をしているようだ。
これって、きっと獣化を制御できていないんじゃないか。
5分くらいだろうか、ダキニの攻撃を捌いていると、急にダキニの攻撃がやんで、ダキニはそこに座り込んでしまった。
すると、全身を覆っていた赤みがかった黄色い毛は元に戻って、尻尾も1本になっていた。
そこには、いつもの狐耳と尻尾のあるダキニがいた。
ただ、結構魔力を使ったようで疲れ切った様子だが、顔はスッキリした感じをしている。
「はあぁ、久しぶりに獣化を使ってスッキリしたのだ」
「ダキニ。もう、良いのか?」
「アキト、ありがとうなのだ。
獣化を使えたのは、クラス分け試験の時以来なのだ」
「獣化って、あれ制御出来ていないよな?
いつものダキニらしくなかったぞ。」
「やっぱり、アキトもそう思うのだ。
この獣化って、どの種族の獣人でも使える者が現れるけど、本当に少数の獣人しか使えるようにならなくて、各種族に1人いれば良い方なのだ。
特に、私達、狐系獣人の獣化はドンドン進化していって、最初は二尾っていう二股の尻尾の状態から始まって、最終的には九尾まで進化するのだ。
九尾の獣化が出来るようになると、全身が白い毛に覆われて、それぞれの尾は9つの属性魔術全てが使えるようになるって伝説もあるのだ。
ただ、最初に二尾の獣化ができるようになると、本能というか野生というか、そういう感じに飲み込まれてしまって、全く制御できないのだ。
獣化中も意識はしっかりとあるけど、どうしてもその意識で獣化中の身体は制御できないのだ。
結局、代々の狐系獣人は獣化を恐れて、九尾どころか二尾から進化をしないのがほとんどで、九尾に至ったのは、狐系獣人の始祖様お一人だけと言われているのだ。
私は魔術が大好きだから、絶対に九尾の獣化も出来るようになって、9種類の属性魔術を使えるようになりたいと思っていたのだ。
それもあって、魔術学園にきたのだけど、最初のクラス分けに獣化で失敗してしまって、どうしようかと思っていたのだ。
そこで、シーラから、アキトと魔物退治に行ったと聞いて、外でアキトと一緒ならば、獣化の練習も出来ると思って声をかけたのだ」
なるほど。
特に獣化を出来る獣人族自体が少ないし、各種族で1人いれば良い方って感じならば、九尾に至る過程が伝えられずに手探りのままだったのだろう。
そこで希望を持って魔術学園に来たものの、クラス分けで失敗。
それにいくら魔術学園でも獣人族固有のしかも使える人間が限られる獣化を研究しているところもないだろう。
それで、白羽の矢が立ったのが俺というわけだ。
今度はダキニです。
まぁ、実家も遠いので、そんなに長くないと思います。
多分、次話でサクッと終わるかな。




