Gランクの依頼
翌朝は、ずいぶん早く目を覚ましてしまった。
それでも、朝食はもうすぐ頂ける時間だから、酒場に行ってしまおう。
「あら、ずいぶん早いわね。もう用意できてるから、食べちゃいなさい。」
ローラさんが朝早くから朝食を用意してくれる。
酒場なので、結構夜遅くまでやってるはずなのに、もう働いているなんて凄い人だな。
朝食は黒パンに野菜スープ、サラダに目玉焼きという日本でもありそうな朝食メニューだな。
黒パンとサラダは夕食と変わらない。
野菜スープは、昨日のシチューみたいな濃い旨味はないけど、野菜から出る優しい旨味を感じて、身体に優しく染み渡るようだ。
目玉焼きは塩で味付けされていて、黄身は固焼きだ。地球の鶏の卵よりも、黄身の味が非常に濃く感じる。もしかしたら、この卵も鶏じゃなくて魔物の卵だったりするのかな?
でも、魔物を飼育して卵を供給できる環境なんかあるのかな?
ちなみに、目玉焼きは半熟に醤油が良いんだけど。
醤油も物質創造で出せるようになったけど、カウンターの向こう側にはローラさんもいるから、流石に出すわけにはいかない。残念だ。
食事を終える頃には、他のGランク冒険者達もぼちぼち集まって来ていた。
でも、昨日一緒に食事したケイト達はまだ来ていないな。
とりあえず、食事も終わったので午前中の依頼ってのを受けてこよう。
ギルドの受付まで来たら、男性の方が受付を担当していた。
「おはようございます。昨日Gランクの登録をしたアキトですが、午前中は街中での依頼があると聞いたのですが」
昨日作って貰ったギルドカードを渡した。
「はい。Gランクのアキトさんですね。
Gランクの依頼ですが、依頼内容はギルドで決めて、それを受けて頂く形になります。
基本的には、午前中で終わるように依頼主には伝えてあります。
依頼が終わりましたら、依頼書にサインを受けて、それをギルドに提出して下さい。
以上が簡単な流れになりますが、何か質問はありませんか?」
「はい、多分大丈夫かと。実際にやってみてわからないことがあれば質問させて貰います。」
「そうですね。基本的にギルド職員なら誰でも分かっているので、気軽にお声掛け下さい。
それでは、今日アキトさんに受けて頂く依頼は、街の外壁の補修工事ですね。
Gランクの方々には一度は必ず受けて頂く依頼です。
主に現場の職人の下働きのようなものです。何度か通って頂くと簡単な補修作業等もあるらしいのですが、初回ですので難しいことはないと思います。
依頼書と現場までの簡単な地図をお渡ししますのでご確認下さい。」
ギルドカードと一緒に依頼書と地図を渡された。
「ありがとうございます。頑張ります。」
ギルドを出て、地図に指定された場所に着いた。
まだ、職人さんは来ていないらしい。
しかし、街に来たときも大きな壁かと思ったが、近くでみると本当に大きいな。
しかも、ところどころ欠けていたり、穴が空いたりしている。そんなに古そうには見えないんだがな。
そんな風に壁を眺めていると、昨晩一緒に食事をした中の、熊耳で大柄な少年のウォルフが来ていた。
「お、おはよう。アキト。
アキトも外壁の補修作業に来たんだな?」
「おはよう。ウォルフ。
あぁ、俺もこれを今日の依頼に指示されんたんだよ。
そうそう、見てくれよ。外壁のこの部分なんてこんなに欠けていたり、穴が空いてるんだよな」
「あ、あぁ。それは、ナスカの街は周りを魔物が出現する森に囲まれて、その奥にはいくつかのダンジョンもあるんだな。
それで、時たま森を溢れ出した魔物が街の外壁までたどり着いて暴れていくんだな。」
「そうなのか。
でも、そんな場所で作業するってことは、この依頼って結構危険なのか?」
「そうでもないらしいんだな。
基本的に森の魔物の中で数が多かったり、街まで出現しやすい魔物は常設依頼ってことで冒険者に討伐されているんだな。
それに、魔物が森から溢れ出す時はいつも決まったタイミングがあるらしく、今はその時じゃないんだな。
見張り台からも兵士さんが見張っているから、森から異変があれば鐘をならして知らせてくれるらしいんだな。」
「へぇ、だから職人が外壁の外で仕事できるし、Gランクの依頼で済むわけだ。
しかし、よくそんなこと知ってるな。ウォルフたちもGランクなんだから、まだ冒険者になったばっかりだろ?」
「お、おら達はナスカに来る前から一緒に冒険者になろうってことで、ナスカの冒険者のことを調べておいたんだな。
おらとケイトを指導してくれた元冒険者の猟師さんも色々教えてくれたんだな。
おら達の村からだと、近くに冒険者ギルドがあるのはナスカだけなんだな。」
なるほど、しかし異世界で冒険者をやっていくのも大変だな。
そんな風にウォルフと話をしている間に、他の冒険者や職人達がやってきて、作業が開始された。
「それじゃ、Gランクの冒険者達はこれでおしまいだ。
依頼書にサインをしてやるから、こっち来い。
他の連中は昼休憩だ。午後も頼んだぞ」
そんなこんなで、Gランクの午前中の作業は終わって、職人のまとめ役の人に集まっていく。
順番にサインを受けていくと、自分の番になった。
「お前さんは今日が初参加だったな。
最初はなんかこいつ大丈夫かって思ったけど、休憩なしでずっと働き続けていたな。大丈夫か?
お前らだって、午後から訓練があるんだろ?」
「大丈夫ですよ。これでも体力には自信があるので、これくらいなら楽勝ですよ」
「はぁ、今回の連中っていうか、今までの冒険者の中でもお前さんが一番働いていたと思うよ。
それに、そっちの身体の大きな熊耳のやつも重い荷物バンバン運んでくれてたな」
自分を褒めたあとに、先にサインを貰って、自分を待っていたウォルフのことも褒めてくれる。
「あ、ありがとうなんだな。力だけならちょっとだけ自信があるんだな」
ウォルフが照れくさそうに後頭部をかきながら答えていた。
「お前さんらなら、冒険者でもやって行けるだろうが、もし仕事に困ったら、直接うちに来てくれれば雇ってやるよ。
体力や力だけで職人がやれるわけでもないが、お前らなら職人でもやっていけるだろ」
「冒険者無理そうだったら、その時よろしくおねがいします。」
街で職人って生活も良いのかもしれないけど、自分は異世界をもっと色々と見て体験していきたいから、まぁ無いかな。
無事に依頼を終了させて、冒険者ギルドに帰った。
「あ、ウォルフ!それにアキトも一緒じゃん!なに、同じ依頼だったの?
良いなぁ。あたしの今日の依頼って知らない人ばっかりで退屈だった~」
冒険者ギルドに戻ったら、猫耳少女のアンナも戻って来たところで、受付に依頼の終了報告もまだなのに捕まってしまった。
そんなアンナに対して、いつもの如く
「ちょっと、アンナ待ちなよ。
ウォルフもアキトも、依頼の報告がまだなんだから、話は終わってからにするよ」
という感じで、犬耳少年のケイトに止められている。
「う~。じゃあ待ってるから、早くね。早く!」
そうやって、受付に急かされる。
ちなみに、うさぎ耳のフィデスも隣でボォーっとしていた。
そんなこともありつつ、受付に依頼書とギルドカードを提出する。
ちなみに、受付は昨日冒険者登録をしてくれた受付嬢だった。
朝は見かけなかったから、シフト制なのかな?
「はい、アキトさん今日が初依頼でしたね。お疲れさまです。
通常は大銅貨4枚の依頼でしたので、Gランクの手数料を除いて、大銅貨2枚になります。
まぁ、Gランクで出来る依頼はほぼ同じ金額ですが。
それで今回の報酬はギルドカードに貯金をしますか?それとも現金で受け取りますか?」
そういえば、ギルドカードの機能に貯金みたいなのが付いてるって話があったな。
確か、他の支部でも出金できるから、銀行のキャッシュカードみたいだな。
正直、まだ神様たちから貰ったお金もまだまだ残っているので、残っている間は貯金をしておこう。
「それじゃ、貯金でお願いします。」
そんなやり取りを終わらせて、別の受付で処理を終えていたウォルフと一緒にアンナ達のところへ行った。
今日もなんとか毎日更新が出来ています。
少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。
短編が人気なので、それに負けないようにしないと・・・
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