魔導人形使い イーナ
「ほ、本当にこの素材を貰ってしまって良いの?」
「えぇ、クラス分け試験の時には、流石にやりすぎてしまったと思っていたので、どうぞお受け取り下さい」
すると、イーナさんは丸太に抱きついてしまった。
「やった!やった!これで、私の魔導人形が復活するわ!」
大喜びをしていた。
うん、俺自身も本当にクラス分け試験ではやりすぎてしまったと思っていたので、コアを使ってまで、素材を作り出した。
なので、喜んでくれて、こちらも嬉しい限りだ。
「26番、確かアキトだっけ。
あんた、私の魔導人形をバラバラにしたから、本当に大嫌いだったけど、ちゃんと素材を用意するなんて良いやつじゃない」
「というか、アキト君。よくあの魔導人形の素材が分かりましたね。
しかも、樹齢1000年超えのトレントの素材なんて、市場にも流れていないし、一体何処で手に入れたのですか?」
イーナさんは喜んでいるだけだが、ルーベン先生は出どころが気になるようだ。
1000年超えのトレントの素材は滅多に手に入らないようなので、そりゃ気になるのだろう。
「そうですね。あまり公表はしていないのですが、自分のスキルに物を出せるのがあります。
勿論、条件があって何でもかんでも出せるってわけではないですが。
2人とも内密にお願いしますね」
「えぇ、私はこのトレントの素材を貰えるんだから、誰にも言うものですか!
逆に何かあったら、私が何でも助けてあげるから、頼ってちょうだい。
これでも、魔導人形を操るような操作系魔術では、かなり優秀なんだから!」
「私も言ったりしませんよ。
アキト君の不興を買って、人造魔石の研究を手伝って貰えなくなったら、困るのは私ですから。
ただ、もし人造魔石に必要な素材で通常では手に入らない場合は、協力をして頂けないでしょうか?」
「あ、それは良いですね。
私も、もし魔導人形の素材で必要な物があったら、協力してくれる?」
「えぇ、その辺の協力はしても良いですけど、何でも手に入れられるわけじゃありませんよ。
その素材に関しての知識や、それ自体の見本を預かったりしないと難しいですし、解析する時間も必要です。
あと、手間代も含めて、相応の値段で買ってくださいね」
「やはり、スキルがあっても簡単にいくわけではないようですね」
そんな話をしながら、ルーベン先生は勿論、イーナさんともこれをきっかけに仲良くなった。
「アキトはさ、操作系の魔術とか習わないの?」
ルーベン先生の研究室で人造魔石の完成品を作っていると、イーナさんが声をかけて来る。
ルーベン先生は俺が人造魔石に魔力を注ぎ込んでいる様子を観察しているが、作業に問題がない範囲内で雑談をしたりするのは気にしないようだ。
ただ、観察に忙しいので会話に入ってくることもない。
俺自身も同じ作業の繰り返しで、最初の頃は気を使っていたが、今では話しながらでも問題なく作業が出来るようになった。
どっちかって言うと、イーナさんがいない時は退屈するぐらいだ。
イーナさんは、ルーベン先生への用事がないときでも、たまに顔を出して雑談をしている。
だいたいは俺が渡したトレントの素材で作っている、新しい魔導人形の話だ。
今度こそ、俺の技でも壊れない魔導人形を作り出すんだと頑張っているようだ。
「うーむ、特に今のところは考えていませんね。
元々、ここに来るまでに近接戦闘をかなりの実力は身につけられていると思うんですよ。
その上で、属性魔術も使えるようになれば遠近両方の戦闘に関して、十分じゃないですかね」
「でも、アキトはソロ冒険者で卒業したら世界中を旅するんでしょ。
魔導人形を上手く操れば、ザコ敵用の露払いもできるし、大きな荷物を運ばせることもできるし、色々便利なのよ」
「うーむ、でも俺には従魔達もいますし、結構大きなアイテムボックスもあるから、そこまで必要性を感じないんですよね」
「あぁ、そっか。そういえば、アキトと従魔達が指導役で、近接戦闘の授業中に生徒たちの模擬戦の相手をしているって聞いたわね。
で、でもさ、操作系魔術って私が使う魔導人形を操るだけじゃないんだぞ。
例えば、属性魔術のファイアーボールなんかも、ただ飛ばすだけじゃなくて、自由に動かして相手が避けても追いかけるように操作することも出来るんだぞ
属性魔術を学びに魔術学園に来たなら、興味はないか?
そこまでの応用は、属性魔術の授業ではやらないはずだから」
お、確かに、某超有名漫画でもエネルギー弾を器用に動かす技を使うやつがいたな。
まぁ、そいつってその漫画だと、かませ犬的でネット上とかでネタ扱いをされているんだけどなぁ。
でも、実際にそういう風に魔術を操れるようになれば、戦術の幅は広がって良いかもしれない。
「確かに、そういう使い方が出来るなら、操作系魔術の授業を受ければ良かったな。
でも、今年度で必要な実力が身につけば、卒業も考えているんですよ
それだけの為に来年も魔術学園に残るのもちょっとなぁ」
「じゃ、じゃあ私が個人的に教えようか。
アキトのその魔力を高密度にして、人造魔石に送り込んでいる様子を見れば、魔力操作はかなりの腕前のはずだから、コツさえ掴めばすぐに使えるようになるはずよ」
イーナさんは、前のめりになって提案してきた。
「でも、良いのですか?
授業もとっていない生徒に助教が個人的に指導をしても」
「別に禁止されていないから良いのよ。
それに、これは恩返しなんだから。
アキトのくれたトレントの素材のおかげで、かなり順調に新しい魔導人形の作成が進んでいるのよ。
それで、だいぶ私も冷静になって来たんだけど、私って助教の立場なのに生徒から高価な素材を巻き上げて、それを使って魔導人形を作っているんじゃないかって」
「でも、あの素材は俺がイーナさんの魔導人形を壊してしまったことへのお詫びなんだから、気にしないで良いんですよ」
「でもさ、試験官でもあるルーベン先生も言っていたでしょ。
アキトの行動は試験を受ける者として、全力を尽くしただけ。
そして私は自分の魔導人形を、私の実力不足で壊されてしまっただけ。
アキトは何も悪くないのに、私はアキトに酷い態度を取ってしまった。
それなのに、アキトは私にトレントの素材を用意してくれたから、私もアキトに何か恩返しをしたいと思って。
だから、どうかな。私に恩返しをさせてくれないか?」
イーナさんって真面目な人なんだろうな。
だから、どうしても素材の分を何かで返したいのだろう。
「そうですね。だったら、操作系魔術を教えてくれませんか?
あ、あともう1個お願いしたいことがあるんですが?」
「お、おう。何でも言ってくれ。
エッチなことでも1回ぐらいなら我慢してやらせてやっても良いぞ。」
イーナさんが顔を真っ赤にして、そんなことを言い出した。
いや、確かにイーナさんは美人でスタイルも良いので、1回お世話になりたいって。
「ち、違いますよ!そんなことを頼みません。
イーナさんが作っている魔導人形が出来たら、見せて欲しいのです。」
「あ、あぁ。そういうことか。
それならば、アキトに頼まれなくても出来上がったら見てもらうつもりだったぞ。
アキトに貰った素材を中心で作ったんだから、当たり前だよ」
「じゃあ、それでお願いします。楽しみですね。
操作系魔術の練習は、自分がここで研究の手伝いをしている日でイーナさんが来られた時に、手伝いが終わったあとで良いでしょうか?」
「えぇ、それでいいわ。じゃあ、早速今日からやっていきましょう。」
という感じで、操作系魔術を教わることになった。
ただ、別に魔術人形を操ったりするまで、細かいのは不要なので、数日で必要な操作系魔術は使えるようになってしまって、イーナさんはちょっと不服そうだった。
魔術学園でアキト君が必要な技術を手に入れていく部分になっています。
強くなっていく過程なので、物足りない方もいるかと思いますが、よろしくお願いします。




