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王都冒険者ギルド

ルーベン先生から人造魔石の研究の手伝いを依頼されて、数日が経った日の放課後。

今日は冒険者ギルドに顔を出すことになっていた。


昨日、ルーベン先生から冒険者ギルドの依頼として、人造魔石の研究を概ねこちらの希望通りに出来ることになったと連絡があった。

ただ、ギルドの方から本人の確認もしておきたいとのことで、一度で良いので顔を出して欲しいとのことらしい。

特に日時の指定もないとのことで、早速今日の放課後出向くことにしたわけだ。


王都冒険者ギルド。

エルトリア王国の冒険者ギルドの中でも、王国の統括ギルドという特別な位置にある。

統括ギルドとは、その名の通り、その国内の他のギルドを統括している。

他の支部内で解決の難しい依頼があれば、統括ギルドから冒険者を派遣したり、複数の支部をまたがるような大規模な依頼の場合は、統括ギルドの人間が仕切ったりすることもある。


そして、何よりも国内で唯一Aランクの認定が出来るのが統括ギルドになる。

Aランクの上に、Sランクというのもあるが、このSランクは世界を股にかける様な多大な功績と人外の実力を認められないとなれず、現在は5人に満たないと言われている。

複数の統括ギルドの推薦と、冒険者ギルドの全てのトップに位置する本部ギルドの認可が出て、初めてSランク冒険者と認められるのも、その狭き門の一因である。


ということで、実質的にはAランクが最高位の冒険者として扱われている。

俺も王都に来てから、魔術学園に入学するまでは王都の冒険者ギルドで依頼を受けてこなしていた。

ナスカやブレアフルでも依頼をこなしており、王都に来た早々にBランクの冒険者になった。

その後も、王都周辺での依頼を中心にこなしつつ、たまに転移と縮地のコンビで遠距離での採取や討伐依頼もこなしていた。

護衛依頼は、流石に護衛対象を転移で連れていくってなるのは、面倒くさいことになりそうなので、おこなっていない。

それでも、通常は1週間かける依頼を1日で達成して、しかも王都から見たら田舎であるブレアフル辺境伯領から来た俺を、王都の冒険者は苦々しく思っていたようだ。

一部の冒険者は不正を疑っていたようだが、確たる証拠もなく、ギルドの酒場で悪口を言うのが関の山だ。

まぁ、そんな環境なので俺も依頼の前後にギルドに寄るくらいで、知り合いの冒険者というのも出来なかった。


王都のギルド側は俺の依頼達成率の高さや、その量からAランク冒険者の打診を受けていたが、魔術学園への入学を控えており、特に焦ってAランクになる必要性も感じないので、保留にしていた。


そんな王都の冒険者ギルドに久方ぶりに来た。魔術学園に入学してからは初めてだ。

中に入ると、今の時間は依頼を受けている冒険者が多いので、中はガランとしていた。

奥の酒場のエリアでは、既に依頼を終わったのか、今日は依頼を受けなかったのか、数人の冒険者が呑んでいたが、こちらに気づく様子もない。

こんな早い時間から既にあの赤ら顔ならば、後者かもしれないな。

そんな様子を見つつ、ギルドの受付に向かう。


「こんにちは。Bランク冒険者のアキトです。

今回、魔術学園での依頼を受けるにあたり、事前にギルドに顔を出すようにと言われたのですが」


受付の女性にギルドカードを見せながら説明をした。


「はい、アキト様。お話は聞いております。ご案内しますので、付いてきてください」


そう言うと、女性は受付から出て歩き始めた。

階段を登ってある部屋の前まで来ると女性は扉をノックをした。


「ギルド長。アキト様がいらっしゃいました」


「あぁ、入ってくれ」

部屋の中から声が聞こえた。


女性が扉を開けて、俺に入るように誘導するので、部屋に入った。

すると、ルーベン先生にそっくりの男性が部屋の中にいた。


「始めまして、この王都の冒険者ギルドのギルド長とこの国の統括ギルド長をしている、シーメン・ベルテだ。

君がアキト君だね。弟から話は聞いているよ。さぁ、そこに座って」


シーメンさんに言われて、部屋の中のソファに腰をかけた。


「あの、ルーベン先生にそっくりなのですが・・・」


「何も言われなかったのかい?ルーベンとは双子の兄弟なのさ。

アイツは自分の研究に熱心すぎて、そういう気の利かなさがあるんだよね」


「まぁ、ご兄弟っていうのは、間違いなく分かります」


「それは良かった。

さて、今回、弟から依頼をされた案件についてです。

特に問題も無さそうだし、内容も魔術学園内でのことなので、毎回のギルドへの終了報告は不要とします。

アイツも魔術学園の教授の位置にいるので、早々起こることもないでしょうが、もし何か問題等あれば、ギルドに報告をしてください」


「はい、分かりました」


「まぁ、本当はこういう依頼の場合は、冒険者ギルドが間に入ることは少ないんですけどね。

依頼主と冒険者が直接交渉は特に禁止にはしておりません。

勿論、その依頼内容によって、著しく冒険者ギルドに不利益を生じさせる場合は、ペナルティを課すこともありますけどね」


「人造魔石の完成品の普及は冒険者ギルドに不利益にはならないのですか?」


ルーベン先生からは、大丈夫とお墨付きを頂きましたが、不安もあったので口から出てしまいました。


「弟から聞いた話や、依頼書に付属された研究内容を確認しましたが、問題はないと判断しました。

仮に、この人造魔石の普及によって魔石の価値が下がったとしてもアキト君にペナルティを課したりはしませんよ。

しかし、アキト君みたいな冒険者がいてくれるのは嬉しい限りですね。

基本的に、多くの冒険者の方々は自分の利益のみを追求しており、アキト君のように冒険者全体のことを考えられるのが、どれだけいるだろうか」


「でも、ナスカが魔物に襲われた時は冒険者も街の兵士も一丸となって、守ろうと奮戦をしていましたよ」


「流石に、王都も同じ目にあったら、冒険者も頑張ってくれますかね。

ナスカのように、定期的に魔物が溢れ出てくるようなダンジョンが近くにあって、迫ってくるのにも慣れていれば、すぐに動けるのでしょうが。

王都の近くにもダンジョンがありますが、そこはかなり安定をしていて魔物が溢れ出る現象も、王都がここに出来てから一度もありません。

攻略禁止にも指定をされているのですが、最終層までいくことは禁じられていないのに、そこまで目指す冒険者もおらず、ほとんどが素材集めで満足しているのが現実ですよ」


「場所によっても、冒険者の質も変わって来るものですか」


「えぇ、今回、アキト君にご足労をかけたのは、一部の冒険者から君が依頼の達成を不誠実な方法でしているのではないかって話があったからなのです。

ギルドでは、アキト君のナスカでの活躍、ブレアフルでの成果も報告として上がって来ているので、そんな話は信じていなかったのですが、今回良い機会なのでこうやって面談をさせて頂きました。

まぁ、ナスカのデニスギルド長からも、絶対に大事にした方が良いぞって手紙も届いていますからね」


「あぁ、デニスさんには、冒険者に成り立ての時から色々とお世話になりました」


「そうだ。そのデニスギルド長から、アキト君が冒険者ギルドを卒業したら、世界を回ってみたいとありましたが、本当ですか?」


「はい、魔術学園にも世界を回るのに、さらに実力をつけようと通っていますから」


「そうですか。

でしたら、保留になっている、Aランクの試験を受けて、卒業までにAランクになっておいた方が良いですよ。

Aランク冒険者は特別な扱いで、国を横断する際の関所や街に入る時に、ほとんどの国で貴族用の門を使用することが出来て、スムーズに移動できます。

他にも、Aランク冒険者には様々な特典があり、世界を回りたいと思っているアキト君にはオススメしておきます。

あと、こちらとしても、アキト君が名を上がれば、我がギルドとしても非常に名誉なことになります」


「自分が名を上げるかは分かりませんが、世界を回るのに必要そうならば、卒業までにAランク目指してみます」


世界を回るのに便利になるなら、そりゃゲットしちゃいますよ。

今までは、特に魅力を感じなかったってだけで、保留にしていましたし。


「えぇ、というか、アキト君の場合は実力を確認する為の模擬戦さえこなせば、Aランクを認定出来るので、いつでもお待ちしておりますよ」


今まで、保留にしていたAランクも目指すことになった


はい、また設定が暴走したw

さらっと流すつもりが、ワイの設定好きが文量を増やすんだ。

というか、そういう設定を考えて出すのが楽しい。


もっとキャラを魅力的に出したいとか、

ストーリーをより面白くしたいって気持ちもあるんですよ。

本当に!


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