人造魔石の研究
場所はルーベン先生の研究室に移っていた。
「それで、その人造魔石ですか。
改めて確認しますが、ルーベン先生はクラス分け試験のときに魔力を注いでいた人造魔石の研究をしているのですよね」
「えぇ、元々試験用に作った物ではなく、魔石の代用品として作れないかと研究を進めていたものなのです。
アキト君も実感しているかと思いますが、都市部の生活は魔道具なしでは成り立ちません」
ナスカや領都ブレアフルを始め、この王都においても魔道具が広く利用されている。
街中の街灯から始まり、家の中では調理をする火を起こすのも、水を出すのも魔道具が使われている。
大きな街以外では、あまり使われていないが、街中での魔道具の依存度はかなり高いと思う。
俺自身も、その恩恵で地球から異世界に来た当初からあまり不自由を感じることは少なかった。
「そして、魔道具というのは全て魔石を使用しています。
その魔石は、基本的には魔物を討伐した時に、その魔物から採取するしかありません。
その為、どうしても冒険者に依存していますので、安定供給という面では不安も多くあります。
それを解決しようと、先人達は色々と知恵を出してきたのです。
例えば、魔物を家畜化しようとした人もいましたが、結局は魔物の凶暴性を抑えきれずに、育てていた魔物に殺されてしまいました」
確かに、魔物の魔石っていうのは、ゴブリンのような素材の価値がない魔物でも魔石には価値があって、冒険者の大きな収入源になっている。
魔物の家畜化を目指した人もいたのだけど、失敗をしているのか。
まぁ、俺みたいに従魔にすることは出来ても、殺すことが前提の家畜化はまず無理だろうな。
「私は、そんな中で魔石を人工的に作り出す人造魔石の研究をしていたのです。
ただ、今まで作り出せた試作品は、試験の時にアキト君も実感をしていると思いますが、魔力を注ぐにも技術が必要で、注いでいる最中に気を抜けばすぐに壊れてしまい、1回限りしか使えない代物だったのです。
はっきり言って、不良品も良いところです。
その不良品の特性が試験にはちょうど良いということで、今回のクラス分け試験で使うことになったのです。
そんな不良品をアキト君は完成品にしてしまったのです。
クラス分け試験の時は簡易的なテストしか出来ませんでしたが、その後にちゃんと時間をかけてアキト君の作り出した人造魔石の評価試験をおこないました。
その結果、その人造魔石に1回で注げる最大魔力量は、それまでの試作品と変わらないものの、注ぐ時に特に気を使うこともなく乱雑に注ぐことも出来、魔力を貯めてから使用するという行程を何度も繰り返すことが出来ています。
ただ、徐々にではあるが繰り返し使うことで性能が下がっていきましたが、今までの試作品は1回使い切りだったので、その差は歴然としています。。
これこそが人造魔石の完成形と言って過言でない。
是非、この研究を進める為にアキト君の力を貸して欲しいのです。」
ルーベン先生がそうやって頭を下げた。
「ルーベン先生、頭を上げてください。
人造魔石の研究に力を貸すのに、自分が気になっている点が2つあります。
それが解決できるのならば、お力を貸しても良いと思います。
まず、1つは人造魔石が広がることで、通常の魔物の魔石の価値が下がり冒険者の食い扶持が減ってしまうことへの懸念です。
自分はこれでも冒険者が本職で、その為の技術を学ぶ為に魔術学園に来たのです。
そんな俺が冒険者の仕事を減らす様な真似はしたくはありません。
冒険者ギルドからの心証も悪くなって依頼が受けにくくなっても困りますから」
俺はしっかりと属性魔術等を学びきったら、この異世界を回って行きたいと思っている。
その時は、世界的な組織である冒険者ギルドの冒険者という肩書を使っていくつもりだ。
そりゃ、俺のスキルだけでも食事は困らないし、泊まるところだって転移を繰り返してダンジョンに帰るって方法がないわけではない。
それにお金が必要になれば、俺の物品創造で酒でも作って売れば金はいくらでも稼げそうではある。
だからといって、冒険者を名乗っているのに、冒険者ギルドや他の冒険者が不利になることは、流石に出来ない。
「その点ですか。
私は経済的な専門家じゃないので、絶対とは言えませんが、冒険者の仕事が減るということはないと思っています。
そもそも、人造魔石自体を作り出すのに、魔物の魔石や素材が必要なので、人造魔石が流行れば、それを作るための依頼も増えるでしょう。
それに、人造魔石は1回に込められる最大魔力量が決まってしまっています。
その量は決して多くないので、使える場面は限られてしまいます。
仮に人造魔石が流行っても、大量の魔力を一気に使用する魔道具には、魔物の魔石が必要になって来ます。
この人造魔石は、街中で使うような魔道具に合うと思いますよ。
魔石の安定供給と言いましたが、こういう街中の魔道具に対する安定供給が中心になると思います。
更に、今は魔道具の研究が盛んになっているので、魔石の需要が常に高くなっています。
そういう点も含めて、冒険者の仕事が減ることはないと思いますよ」
「それなら、自分も安心して手伝うことが出来ます。
もう1つは、単純に報酬です。生徒だからといって、タダ働きをする気はありませんよ」
「そこに関しては、毎回の研究に参加して頂く毎に報酬をお支払いします。
というか、アキト君が冒険者ならば、冒険者ギルドに依頼として出しましょうか?
そうすれば、ギルド内の評価も上がりますし、将来的にも良いでしょう?」
「そこまでして貰えるのですか?
でもそれだと毎回、終わった後にギルドに終了報告をしないと行けないですよね。
正直、わざわざ行くのが面倒くさいので、普通に報酬さえ貰えれば良いですよ」
「その点でしたら、何とかなるかもしれませんよ。
実は、自分には兄がいまして、その兄が王都のギルド長、えっとつまり王国内の統括ギルド長ってやつでしたっけ、それになっているのです。
だから、私が兄と直接交渉をして、そういう煩わしいところは免除して貰えるようにしてみますよ」
「本当にそこまでして貰って良いのですか?
しかも、冒険者ギルド経由だと手数料もかかってしまいますよね」
「構いませんよ。それくらい。
アキト君が作ってくれたあの人造魔石には、それくらい苦労にもならないくらいの価値があるのです。
ただ、兄と交渉してみないと決定にはならないので、上手くいかなければ、直接契約でその分、金額に色を付けるということでお願いします」
「はい、そのへんはルーベン先生におまかせします」
「では、これからよろしくお願いします。
それで、実際に研究室に来て具体的に何を手伝って貰うかというと・・・」
ルーベン先生から具体的な手伝いの内容の説明があった。
やはり、研究素材として俺が作り出した完成品の人造魔石を用意することから始まる。
その際に、魔力の送り方や人造魔石の中に高密度で魔力を濃密にする方法等を観察して、実際に俺以外にも再現させたいとのこと。
更に、今度はその状態の人造魔石から魔力を抜いて行くのも大変だ。
これに関しては、自分はコアの力を借りたので、コアの紹介もしたら、非常に驚かれた。
ただ、魔力を抜く技術に関しては、そういう魔術もあるので、コアの代用が出来ないか試していくという。
流石に、魔術学園にもコアのような存在は確認出来ていないそうだ。
こんな感じで、話をまとめて、近接戦闘の授業の指導に続いて、もう1つの魔術学園での仕事が決まってしまった。
俺は属性魔術を学びに来ただけなのに、どうして、こうなったんだ・・・
ふぅ、伏線回収・・・
まぁ、大した伏線じゃありませんがw
作者は伏線を忘れそうなので、出来るだけ早く回収していくスタンスですw




