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アキト先生の模擬戦 その1

この話には少々お下品なシーンがございます。

お食事中の閲覧はオススメ致しません。

訓練場に到着すると、既に近接戦闘を受講する生徒たちが、それぞれが準備運動をしながら待っていた。

近接戦闘は身体強化の魔術的な部分に合わせて、実際に身体を動かすことになるので、実技の授業の時には、事前に準備運動をしておくようだ。

いちいち、授業を始まってから準備運動をするよりも効率は良いのだろうが、その分、生徒は早く準備をしなければならない。


その中で何人か見知った生徒もいた。まぁ、見知ったというか友人達であるけど。

そう、この授業には俺以外のSクラスの生徒達、ジェフリー、ユーリア、ダキニ、シーラの4人が参加しているのだ。


え、俺?俺は未だに空いている時間にナスカのダンジョンまで戻って、ジャンヌ達と近接戦闘を、しかも最近は属性魔術も織り交ぜた訓練をさせられているのに、どうして、授業でまでやらないといけないんだよ。

というわけで、俺はこの授業を受けていないので、そういう点でも俺が教える側に推薦されたんだろうな。

でも、もしかしたら、授業を受けていても同じ状況ならやらされていたかもしれない。


「皆さん、集まってください。授業を始めますよ」


レイナさんが声をかけると、友人達を含めて授業を受ける生徒達が集まって来た。

俺がレイナさんの隣に立っていると、友人達は不思議そうな目で俺を見ていた。

そりゃそうだよな。俺が授業を受けないと知っているのに、ここの場所でしかも指導する助教の隣にいるのだから。


「さて、皆さんにお知らせしなければいけないことがあります。

前回までこの授業を担当していましたベルノルト先生ですが、未だに腰痛から回復しませんので、別の講師を用意することになりました。

そして、別の講師の準備が出来るまでの暫定ではありますが、私が中心で指導をしていきます。

それと、私一人では実技の授業を受け持つことは厳しいので、このアキト殿が手伝いをしてくれることになりました。

彼は新入生のSクラスですが、その実力は私もある決闘を見て確認をしています。

かなりの実力を持っていることは間違いなく確認できています」


Sクラスの友人達は一瞬、驚いた表情を見せたが、すぐに納得の表情をしている。

まぁ、友人達は俺の決闘に立ち会っていたようなものだからな。実力の程は分かっているだろう。

他にも同じように納得の表情をしている生徒がそれなりにいるが、彼らも同じように決闘を見ていたのかもしれない。

ただ、多くの生徒は同じ生徒で、いくらSクラスとはいえ新入生である俺が指導をするということで、戸惑いの顔をみせている。

さらに、一部には明らかに俺が指導をするということで、不満そうな生徒もいる。


「あら、不満そうな子もいますね。分かりました。

それでは、どうせ今日は皆さんが使えるようになった、身体強化の魔術を使った模擬戦を私かアキト殿とする予定です。

最初に皆さんの前で、アキト殿と生徒の中で誰かと模擬戦をしてみましょう。

もし、そこでアキト殿が負けてしまったら、アキト殿の指導はなし。

その上で、勝った生徒は、これ以上授業を受けなくても最高評価で単位をあげましょう。

どうですか、誰か挑戦をしてみませんか?」


レオナさんがそんなことを言って、不満のある生徒を煽り始めた。

まぁ、流石に負けるつもりはないが、授業の時間も決まっているのに、こんなことをしていて良いのか?


「よっし、じゃあ俺が相手をしてやる。

いくらSクラスだろうが、こんなヒョロガリのガキに負けたりはしないぜ」


筋肉モリモリで、いかにも近接戦闘が得意そうな男が前に出てきた。

俺よりも年齢は結構上で、レイナさんよりちょっと下くらいですかね。

そういえば、こいつが一番不満そうな顔をしていたな。

よく見ると、不満そうな顔をしていた大半は、こいつとその取り巻きのようだった。


「はぁ、じゃあやりますか。レオナさん、本当に良いんですね」


「えぇ、アキト殿のお好きなように、相手をしてあげてください。

あ、流石に怪我はさせないようにお願いしますよ」


レオナさんの許可も出たので、俺はこの筋肉だるまと相対する。

俺はレイナさんから受け取っていた模擬刀を構えて、相手も同じ模擬刀を使うようだ。


「おい、お前、いくらSクラスだからって舐めるなよ。

俺はこれでもAクラスだし、ここに来る前から全身の身体強化が使えるんだ。

どうせ、お前はそんな筋肉もない体だ。遠距離中心の魔術士タイプなんだろ」


どうして魔術士タイプが近接戦闘の授業で指導側に回ると考えるのか。

しかも、筋肉がないと近接戦闘が出来ないなんてことがあるわけない。

実際に、俺の師匠のような3体のスケルトンは、全く筋肉がないのにあれだけ近接戦闘が強いのだから。


「はぁ、御託は良いですから、早くかかって来てください。授業の時間も決まっているんですから」


「へっ、どうせお前はここでお終いだから、授業のことなんて気にしなくて良いぞ」


そう言って、筋肉だるまが突っ込んで来た。

ふむ、確かにあれだけ筋肉があっても、そこそこの速さで突っ込んで来たんだから、ちゃんと身体強化は使えているのだろう。

振り下ろして来た模擬刀も受けてみたが、武器強化まではいけてはいないが、しっかりと腕の筋肉だけじゃなくて身体強化も使っているな。


ただ、こいつは身体強化で体を動かして、模擬刀を振るっているだけで技術的なものは感じられない。

確かに身体強化はそれだけで十分に一般人に比べたら強くなれるけど、それを使いこなすには、しっかりとした技が必要だ。

魔術学園という名前から、魔術としては身体強化や武器強化が出来れば良いとでも思っているのかね。


それに、その身体強化にしても、この感じだと全身を強化し続けているだけで、バランスよく魔力を分散させているわけでも無さそうだ。

こんな身体強化の使い方をしていれば、異様な魔力量か魔力回復のスキルでもなければ、このまま適当に受け続けているだけで、魔力切れでへばるだろうな。

まぁ、それをやるとこいつが納得をしないだろうから、実力の差ってやつを見せてやるか。


筋肉だるまが振るっている模擬刀が、俺の模擬刀に当たる瞬間に、俺の模擬刀に魔力を一気に送り込み武器強化をする。

すると、筋肉だるまの模擬刀はポキっと折れた。

それを見て、ハッと筋肉だるまが驚いた瞬間に、素早く拳に魔力を集めて身体強化をして、筋肉だるまの腹にパンチを食らわせた。

そう、腹パンである。

一応、全身に身体強化をしているのだから、多少は耐えると思っていたが、腹パンを食らった筋肉だるまは、先ほど食べたであろう昼飯をリバースしてしまい、そこに顔を突っ込んで倒れてしまった。

おいおい、身体強化をしていたはずなのに、ここまでやらかすか?

全身に身体強化をしていれば、防御力もしっかりと上がっているはずなのに。


「はぁ、アキト殿、怪我はさせていないようですが、流石にこれはやり過ぎです。

ほら、そこの一緒にいた連中。そいつを保健室に連れていって、ここの掃除をしなさい。

もう、アキト殿と一戦しようなんて思わないでしょ?」


レオナさんがそう言うと、筋肉だるまの取り巻き連中が青い顔してうんうんと頷いている。

そりゃ、こんな吐瀉物に顔を突っ込むようなことにはなりたくないよな。


取り巻き連中は、筋肉だるまを保健室に連れて行き、掃除を開始している。


「アキト殿、流石にここまでされると、模擬戦を任せられないのですが・・・」


「いやぁ、流石に普通はここまではしませんよ。

実力の差を見せようとおもったのと、身体強化がちゃんと出来ていれば、この惨劇にはならないと思ったのですが、どうも彼の身体強化が甘かったようです」


「じゃあ、そういうことにしますので、生徒の半分の模擬戦をおまかせしますね。

ただ、攻撃をする際は寸止めにしてあげてくださいね」


「分かりました!」


こうして、他の生徒にも模擬戦をおこなうのであった。


はい、何故かもう1話アキト先生が続きます。

実は前話の最初の取っ掛かりは、結構悩んだのですが、書き始めるとスイスイと進んで文字数が増えてしまいました。

多分、アキト先生の活躍は次話で終わるはず・・・


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