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助教からの依頼

「あ、貴方がアキト殿ですね!」


今は、昼食後の一時で、食堂で1人食後のお茶を楽しんでいた。

他のSクラスの皆は次の時間帯で同じ授業を受けており、その授業の準備もあり昼食後、すぐに準備に取り掛かっている。

そして、自分はその授業は受けていないという理由があって、こうして1人でいる。

決して、ボッチなのではない。そう、この学園ではSクラスの友人達がいるので、立派にボッチを卒業しているのである。


そんな、ボッチ卒業して、あえて1人の時間を過ごしていると、年若い女性が話しかけて来た。

ショートカットでスポーティなイメージの人族の女性で、年齢は自分よりはちょっと上で10代後半から20代前半といった感じだろうか。

今から運動でもするのだろうか、動きやすそうな恰好をしている。


「はぁ、自分がアキトで間違っていませんが、どちら様でしょうか?」


「失礼しました。私はこの学園で助教をしているレオナと申します」


助教とは魔術学園の教師の一種で、実際に授業を受け持つ講師、授業を受け持ちつつ研究室も構える教授に至る過程で最初に着く役職である。

主に授業のサポートや生徒の相談を受け、研究室で雑用をしたりする。

多くの場合は、魔術学園を卒業して、そのまま魔術学園に残って、助教の仕事に着くが、他の仕事を経験してその後に助教に着く場合もある。

レオナさんの場合は、普通に若い部類なので、前者なのだろう。


「実は折り入って、アキト殿に急ぎの相談があって来ました。話を聞いて頂けますか?」


「まぁ、時間もありますし、お話聞く分には良いですよ」


「ありがとうございます。実は、アキト殿に近接戦闘の授業を手伝って頂きたいのです」


「え?どうして、また自分が手伝いを?まだ、入学したての新入生ですよ」


「それは勿論分かっています。

実は、私と一緒に近接戦闘を担当していた講師の先生が、かなりご年配の方で、前回の授業で腰を痛めてしまいまして。

そこで、かなり高名な回復術士にも診ていただいたのですが、老化が根本的な原因ということで回復魔法の効き目が悪く、未だに回復しないのです。

もしかしたら、そのまま引退をなされるかもしれないとの話もあります。

そこで、他の教授や講師で近接戦闘系の指導を出来る人がいないか探したのですが、この時間帯は既に全員忙しく、学園長先生と相談をした結果、外部から臨時講師を呼ぶまでの間、私一人で担当をすることになったのです」


そういえば、俺が冒険者ギルドのGランクに入る直前に、属性魔術を専門にしていたお爺ちゃん魔術師が、ちょっと大人の事情があってお亡くなりになったという。

俺が異世界で関わる可能性がある男性老人は関わる前にドロップアウトしているな。


「流石に、私も近接戦闘の授業を1人で見るのは厳しいので、助っ人を用意できないかと学園長先生にお願いをしたら、アキト殿の名前が上がったのです。

クラス分け試験のときは、特殊な近接戦闘のスキルを重ね合わせて、あの魔導人形をバラバラにして、壁まで破壊したと聞きました。

それに、私も実際に先日のネイサン・ドーレスとの決闘は見させて頂きました。

あれだけの実力があれば、文句なしで近接戦闘の授業を任せることも出来ます。

勿論、私がメインで授業を受け持つので、その補助をお願いする形ですが」


あぁ、あの決闘を見ていたのか。

しかし、本当の決闘相手は貴族の息子の小太りマルコだぞ。

実際に決闘の約束にプラスしてペナルティを受けたのはマルコだし、ネイサン先輩は普通に学園に通っているのを見かけたことがある。

まぁ、あとから聞いた話だと、ネイサン先輩は近接戦闘において、ここ最近の生徒の中では最強クラスであったらしい。

それを圧倒してしまえば、そういう話もくるのかもしれないな。


「話は分かりました。でも、それを受けるメリットが自分にはないですよね」


そうなのだ。

正直、会ったこともない爺さんの腰痛が辛かろうが、ここで依頼に来た女性が美人さんでも、何でもかんでもホイホイやりますよって聖人君子な存在じゃない。

俺は自分の学びたいものを学びに来ているのだ。

ここで、色々と繋がりのあるゲルトさんが依頼に来たのであれば、一考の余地はあるが、初対面の知らない助教さんだからな。


とっとと、断ろうと少し冷たくメリットの話を持ち出したが、何故かレオナさんは待っていましたとばかりに、不敵な笑顔を見せた。


「はい、それは学園長先生との話でも出来てきました。

ただ、私はアキト殿と始めてお話をするので、好みも何も分かりません。

そこで、学園長先生に説得を重ねて、学園長先生に出来ることならば何でもすると言質を頂きました。

勿論、ほら。一筆しっかりと書かせて、これがその証明書です」


そう言って、レオナさんは、黄門様の印籠よろしく、俺にその証明書を見せて来ました。

確かに、俺がレオナさんの授業の手伝いをすれば、学園長が可能な限り何でもすると書かれている。


「証明書の補足欄にも書いてありますが、魔術学園での成績に関することや、誰かを害する等々出来ないことは何個もあり、何でもと書いてありますが厳密に何でもではありません。

ただ、このエルトリア王国でも近年は最高学府とも名高い、この魔術学園の学園長ですよ。

様々な情報は集まり、王国内は勿論、海外にも様々なコネがあると言われています。

その相手に、制限はありますが何でもと出来るのですから、結構お得だと思いますよ。

どうでしょうか、これは貴方に対してのメリットになりませんか?」


いやぁ、凄いな。このレオナさん。

自分では適切な報酬を用意することが出来ないと考えて、学園長を巻き込んで報酬を用意させてしまった。

俺としても、ここの学園長に何でもお願い出来るなら、願ってもない話だ。

将来的に中位や高位の精霊が見つからなければ、協力して貰えるかもしれないしな。

この人、結構なやり手だな。


「分かりました。それだけの報酬があれば、自分も問題ありません。

これから、よろしくお願いします」


レオナさんに手を差し出すと、しっかりと握手をした。


「はい、ありがとうございます。こちらこそ、お願いします」


「それで、その授業っていつの何時の枠なんですか?

流石に授業の時間帯と被っていると授業を優先させたいのですか?」


そう、どんなに良さそうなメリットがあっても、この学園には学びに来ているので、そこは優先したい。


「あぁ、そうでした。アキト殿、早速ですが急ぎますよ」


そう言って、先ほど握手した手を今度は引っ張って走り出した。

あぁ、まだ紅茶も残っているのになぁ。

しかし、まさかとは思うが、これって・・・


「ええ、流石アキト殿、お察しの通り、次の時間帯の授業になりますよ。

だから、アキト殿が一発で納得できる報酬も学園長先生に出させましたから」


おぅ、まさかノータイムで授業に、しかも教える側で参加するとは。




走りながら、今までの授業の進展状況と今日の課題を確認した。

それによると、先日までの授業で全ての生徒が最低限、身体の一部分を身体強化するところまでは成功したらしい。

早い者では全体の身体強化も出来るようになったとのこと。

そこで、今日は実際に模擬戦を通して、身体強化がどのレベルまで出来ているのかを確認させる予定だったらしい。

時間的にもそのお爺ちゃん講師とレイナさんの2人で捌いて、全員1回模擬戦出来るかって感じらしくて、どうしても今日から助っ人が欲しかったそうだ。

まぁ、前回の授業でその講師とレイナさんがデモンストレーションで身体強化の模擬戦を見せたら、張り切り過ぎて腰をやってしまったとのこと。


さて、そんなこんなで、生徒たちが待っている訓練場に到着した。


もっと、さらっとこの回だけで、アキト君の先生シーンは終わると思っていたんです。

なんか、文字数が増えていたので、次回に続きますw

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