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王子様、寮へ来る

そんなこんなで、ダンジョン最奥での訓練がグレードアップされました。

ジャンヌが雷の属性で、他のスケルトン達は剣のスケルトンのガウェインが土、槍のスケルトンのランスロットが水、ナイフのスケルトンのトリスタンが風の属性が使えるようです。

皆、使えると言ってもスキルもなく、それほど強力な威力を出せるわけではないのですが、そのちょっとの魔術が結構厄介な時もあるって実感をしました。


ガウェインとは、縮地で一気に近づこうとした時に足元にほんの小さな穴を作られて、それで縮地の方向がずれて、狙っていない場所へ縮地をさせられた。

ランスロットの槍の連撃をかいくぐって、接近しようとした瞬間に目に小さな水が飛んで来て、一瞬目をつぶってしまった瞬間に一撃をくらってしまいました。

トリスタンの風の魔術とジャンヌの雷の魔術は、どちらも速度を上昇させるくらいらしいのですが、トリスタンの方は全体的な素早さが上昇して、さらに自身に風でほんの少し浮かせることで、より変則で手数が増えた攻撃を可能とされて対処が難しくなった。

ジャンヌの雷の魔術は、直線的な速さが上昇をしており、さらに剣にほんの少しだけだが雷をまとわせることで、それを受けるとちょっとした痺れを感じる。

元々、俺も基本戦術としている、縮地からの一撃がさらに早くなり、紙一重で受けると剣を伝ってくる小さな電撃で感じる痺れが油断となって、次の一撃を捌き切れなくなる。


それぞれが属性魔術まで使ってくるようになって、少しは慣れたはずのジャンヌ達との訓練が、また大変になって来た。

はぁ、キツイなぁ。




そんなキツイ訓練を終えて、寮へ帰って来ました。

なんか、寮の中が慌ただしいな。誰か来ているのかな?

まぁ、寮内ではボッチの俺には関係ありません。

Sクラスの生徒が寮にいれば、ボッチを卒業出来るのでしょうが、王子様は王城から通って来ますし、他の3人は女性なので女子寮の方で生活をしています。

さて、お腹が空いたのですが、寮内は未だに騒がしいので、部屋でスキルを使った食事で済ませてしまいましょうか。

でも、寮の食堂も結構美味しいんですよね。

地球では食べたことのない、ちょっと変わった食材もあっていい感じなのです。

まぁ、騒がしいから部屋で食事ってのもボッチを加速させそうなので、食堂に向かいますか。


食堂に着くと、どうやらこの騒がさしさの原因はここにあったようです。

一つのテーブルのところに生徒が集まって、誰かを質問攻めにしています。

うん、流石にあの近くでは食事をする気にならないので、料理を受け取ったらちょっと離れた席に移動します。


さて、今日のメニューはワイルドベアと呼ばれる魔物の肉を使ったシチューがメインで、それにサラダとパンがついています。

しっかりと煮込まれたお肉はホロホロでナイフがスッと入って、簡単に切れてしまいます。

口に入れるとその柔らかさですぐに溶けてしまいます。

味わいも嫌な臭みはなく、それでいてジビエの様なちょっとした癖がいいアクセントになっています。

これは、めっちゃあたりかもしれない。パンをちぎってシチューに付けてもめっちゃ美味い。

うん、寮が騒がしくて、ここで食事するか迷ったけど、来てよかったな。


そんな風に食事を楽しんでいたら、正面から急に声をかけられた。


「いやぁ、アキトは美味しそうに食事をしているね?」


そちらをみると、なんとジェフリーが立っていた。


「え、なんで、ジェフリーが寮の食堂にいるの?」


「そりゃ、食事をするために食堂にいるのに決まっているじゃないか。

まぁ、食事はもう済ませたんだけど、アキトが食事をしている姿を見かけて声をかけたのさ」


「いや、だからどうして、ジェフリーが寮にいるんだよ。

王城で豪華な食事が用意されているんじゃないのか?」


「あぁ、それは俺が今日からこの寮で生活するからだよ。

いやぁ、確かに王城の食事は豪華なのが多いけど、僕はここの食事のが好きだよ。

色々とバランスが良いし、しっかりと素材の味を生かして美味しく仕上げているよね」


「まぁ、確かにここの食事は美味しいけど、うんそういうことじゃないよな。

どうして、王子様であるジェフリーが寮で生活を出来るんだよ。

寮に護衛が必須だから、寮暮らしは出来ないって言っていたじゃないか。

まさか、あの学校にいたような連中を寮に潜ませているのか?」


そんなんじゃ、寮でゆっくり落ち着くことも出来ないから全員片付けるぞ。


「流石に、ここでは何だから、食事が終わったら僕の部屋に来てくれよ、じゃあまた後で」


そう言って、ジェフリーは去っていった。

はぁ、一体何でなんだろうな。

中途半端に置き去りにされてしまったのに、せっかくの食事も気になって集中できないじゃないか。

とりあえず、食事を腹に詰め込んで終わらせるのであった。




「あら、アキトずいぶん早く来たね。食事はゆっくり食べないとダメだぞ。

まぁ、そこのソファーに腰掛けてくれよ」


ジェフリーの部屋は寮の中でも特別用なのか、Sクラスの俺の個室よりもかなり広く出来ていて、ソファーにテーブルまで用意されていた。


「ジェフリーが中途半端に去っちまうから、俺も急いで飯を終わらせたんだろうが」


そう言いながら、ソファーに腰をおろした。


「あぁ、それは悪いことをしたね。すまんね。

アナベラ、アキトにお茶とお菓子を用意してあげて。」


「承知いたしました」


すると、ジェフリーの部屋にいたメイド服を来た女性が用意をしてくれて、俺の前に置かれた。

一口飲んだが、かなり上質な紅茶で美味しかった。


「まぁ、色々聞きたいことはあるんだけど、まずはどうして寮で生活するこになったんだ?」


「そうだね。これにはアキトのおかげでもあるんだよね。

元々、父上とは僕が王城から通う代わりに学園内では護衛抜きで学園生活を謳歌するって約束だったのに、アキトが学園内に潜んでいた護衛をボコボコにしてくれたおかげで、約束を反故にされたからね。

だから、今回反故にされた分ってことで、寮での生活も確保出来たんだよ」


「それで寮で生活ってなったわけか。部屋はこの広い特別室ってわけか?」


「あぁ、本当はアキトと同じSクラスの個室か、君とだったら同部屋でも良いけどな」


「いや、流石にそれは俺が嫌だわ」


「流石に冗談だよ。

まぁ、ここが妥協案で寮内の王族や貴族用に使用人付きの人間が部屋で生活ってなったわけさ。

今は貴族の大半が王都に屋敷を構えているから、ほとんど使われていないんだけどね。

たまに、大規模な商人の子供が入学する時に使うくらいかな」


「なるほどな、それでその使用人ってのが、そこのメイドさんか?」


「あぁ、僕の専属メイドのアナベラだよ。アナベラ挨拶を」


「始めまして、アキト様。

ジェフリー殿下のメイドを務めさせて頂きます、アナベラと申します。

ジェフリー殿下共々よろしくお願いいたします。」


ショートカットの美人さんが挨拶をしてくれた。


「まぁ、父上からのお目付け役でもあるんだけどね。

それに、それなり一応護衛としての実力はあるんだよ。

まぁ、アキトにはかなわないだろうけどさ」


「でも、ジェフリーの希望はかなったんだろ。良かったじゃん」


「あぁ、これで魔術学園を思いっきり楽しめるよ」


ジェフリーが嬉しそうに笑っている。


「よし、それじゃ紅茶も良いけど、お祝いに一杯やろうぜ」


そう言って、アイテムボックスからおすすめの日本酒とグラスを出す。

しっかりと冷えた冷酒だ。


「俺のおすすめの酒だ。この辺じゃ珍しい酒だと思うから楽しんでくれよ」


「アキト、君はアイテムボックスまで使えるのか。

へぇ、こんな透明な酒は珍しいな。しかも、このグラスも中々の一品じゃないか」


「それじゃ、ジェフリーのこれからの寮生活に乾杯!」


「乾杯!」

王子様、寮へ来るどころか、寮生活をしちゃう王子様ですw






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