ユリウス・ルサールカ学園長
「何だと!おい、ネイサン。お前、同じSクラスで3年のくせにどうしてギブアップなんかするんだ!」
はい案の定、マルコが騒いでいます。
3年も学んだSクラスのネイサンが負けるとは思っていなかったんでしょうね。
「申し訳ございません。マルコ様。
この者は私よりも数段以上、実力が上だったのは間違いありません。
多分、私が魔術学園であと10年修行しても、今の彼に追いつけるかどうか」
「く、くそ。おい、立会人!この決闘は無効だ!私は学園を辞めないぞ!」
顔を真赤にして、立会人に迫っています。
「マルコ殿。決闘は本学園内での正式なルールになっています。
貴方とアキト殿は負けた方がこの学園を辞めると決めた上で、決闘をしたのです。
残念ですが、マルコ殿には本学園を退学して頂きます」
「あり得ない。あり得ない。
私はグローマン侯爵家の次男、マルコ・グローマンであるぞ。
その私が、退学なんてあってはならない。
立会人、貴様では話にならない、もっと上の人間に話をつけに行くぞ」
そう言って、マルコは1人訓練場を出ていこうとした。
すると、男性の声が聞こえてきた。
「マルコ・グローマン。その必要はありませんよ」
そう言って、この決闘を見学していた人混みの中から、背の高いエルフの男性が現れた。
いやぁ、エルフって美形が多いけど、この人もかなりの美形だな。
少し、同じSクラスのユーリアにも似ている気がするな。
「始めまして、マルコ・グローマン。それにアキト殿。
私がこの学園の学園長を務めているユリウス・ルサールカです」
「おぉ、学園長殿。この決闘は無効なのです。
むしろ、このグローマン侯爵家の次男、マルコ・グローマンに、いやグローマン侯爵家そのものに歯向かうアイツこそが、この学園を堕落させる原因になるはずです。
是非、学園長殿のお力であの者を退学処分に追い込んでください。
アイツを退学処分にして頂ければ、グローマン侯爵家が全力でこの学園をサポートしましょう。寄付金も勿論かなりの額を用意すると約束しますぞ」
あろうことか、マルコは自分の退学を取り消すだけに飽き足らず、俺を退学させようと学園長に訴えている。
しかも、侯爵家って立場と金をちらつかせて、言いたい放題だな。
てか、これで俺が退学になるような学園なら、大暴れして辞めていってやろうかな。
「貴方の希望は分かりました。では、学園長としての判断を申し付けます」
マルコはこれで逆転出来ると思って、ニヤニヤ顔をしている。
「この決闘を全て有効とする。よって、マルコ・グローマンは即刻退学処分とする。
また、侯爵家の立場を利用して、学園長である私にこの学園のルールを破らせようとするとは言語道断。
その責任を持って、マルコ・グローマンには魔術学園への入学・受験は永久停止。
また、グローマン侯爵家の持つ魔術学園への推薦枠も10年間停止とする」
おぉ、キッチリと処分を確定させたな。
しかも、俺を退学させようとしたところまで踏み込んで、処分を下したな。
それを聞いたマルコは顔を真っ赤な顔をして怒っていたのが、今度は青白く変わってしまった。
「学園長殿、分かった。私の退学は素直に受け入れよう。
ただ、何とか侯爵家への処分は撤回して頂けないだろうか」
「良いですか。マルコ・グローマン。
これがこの学園で貴方に教えられる最初で最後のことですから、よくお聞きなさい。
貴族が貴族の名前を出して、何かを訴えるということは、その言葉にはその貴族が全責任を担うということ。
貴方はグローマン侯爵家の名前を出して、自分の退学の撤回とアキト殿の退学を訴えた。
その訴えはグローマン侯爵家を代表した言葉なのですから、ペナルティもグローマン侯爵家に受けて頂くのが筋です。
貴方が簡単に出した貴族の名は、そうやって自分だけではなく家にまで返ってくることを、よく反省しなさい」
そう言われて、マルコはうなだれてしまった。
「さて、決闘騒ぎはこれでおしまいですから、皆さん解散してください。
特に新入生は明日から様々な授業で初回ガイダンスがあるのですから、今日は早く帰って明日へ備えてください」
学園長にそう言われたので、俺も応援してくれたSクラスの皆と一緒に帰ろうかな。
「あ、そうそう。アキト殿はちょっとお話をしたいので、学園長室まで付いてきてください。
ついでに、ジェフリー殿下とユーリアもね」
学園長に捕まってしまった。まぁ、決闘の当事者なので仕方ない。
ジェフリーは決闘に至る経緯の張本人だから、確認の為に呼ばれるのは分かるけど、なんでユーリアも呼ばれているんだ?
同じエルフだからか?
学園長のあとを付いていき学園長室に入った。
ふかふかのソファーに座って、学園長自らが入れてくれた紅茶を飲みつつ、今回の決闘に至る経緯を俺とジェフリーで説明した。
「そうですか、概ねこちらがユーリアから聞いていた一報の通りですね。
一応、この学園の学園長で決定権は持っていますが、それでも魔術学園は王国の組織ですからね、正式な決定を報告書にして王国へ伝えないといけないのですよ。
しかも、今回はグローマン侯爵家へのペナルティも含んでいますので、細かく正確な記載をしておかないと」
「それなら、別に自分個人としては、別に侯爵家へどうこうってありませんよ。
まぁ、流石にマルコはしつこそうなので、辞めてもらった方が良いのですが」
「これは別にアキト殿の為にってわけではありませんよ。
私に対して侯爵家の名を使って、ルール破りを訴えたこともありますが、もっと大きいのは、マルコの様な人間を魔術学園へと推薦したことにあります。
最近は推薦されて来る生徒の質が年々悪くなったとは思っていましたが、いくら自分の息子だからといって、あんな人間を送ってくるとは。
彼のように実力もないのに、貴族というだけで傲慢に振る舞う人間は魔術学園の趣旨に反します。
そんな人間しか送って来られないなら、推薦枠なんて不要ですよ」
「でも、そうするとグローマン侯爵家に関わる人間は不利になってしまうのではないですか?」
「別に推薦枠がなくなるだけですよ。
受験はできますから、本当に魔術学園で学びたいと思っているなら、他の人間と同じように受験を受けて、入学をしてくれば良いのですよ」
あ、そういえばそうか。
この学園は推薦枠だけじゃなくて、受験で入学する生徒もいるんだから、そっちから入学すれば良いわけだ。
「さて、アキト殿。
君の実力は先程の決闘を見て分かりましたけど、かなり上位の実力ですね。
しかも、今回の決闘でも本気を出していなかったでしょうから、本気を出したら化け物クラスでしょう。
これでもエルフですから、属性魔術には自信のある僕ですら君と対峙するのは怖いですね。
どうしても、貴方を倒さなければいけないなら、超長距離から極大魔術で何とかするしかないでしょうね」
どうにも、学園長から見ても俺の実力は化け物らしい。もう、化け物呼ばわり慣れて来た。
しかし、超長距離からの極大魔術って俺を倒すだけで、その周りが壊滅状態になるんじゃないか?
「それだけの実力があると、生徒との決闘は必ず勝ってしまうので、アキト殿には申し訳ないが、通常の決闘は禁止とさせて頂きます。
自分から決闘を申し込むのは勿論、相手から決闘を申し込まれても、必ず私に報告をしてください。
どうしても、決闘が必要な事態と判断したら、私の立ち会いの元でおこなって頂きます。
あぁ、勿論模擬戦のような何もかけなければ、大丈夫ですよ」
「でも、学園長って立場は結構忙しいのではないですか?
急ぎで確認をしたい場合はどうしたら良いのでしょうか?」
「あぁ、それでしたら、ユーリアに伝えてください。
僕とユーリアは特殊なスキルで、お互いに離れていても話ができるスキルを持っているからね。
今回の決闘の一報もユーリアから、そのスキルで報告が来たんだよ」
「え、ユーリアと学園長ってどういう関係なのですか?」
「あぁ、言っていなかったね。ユーリアは僕の娘なんだよ。
ユーリアが可愛いからって、付き合いたいなら僕の許可を得てね」
パッとユーリアの方を見ると顔を赤くして頷いていた。
あ、マジで親子なんだ。
学園長登場!
学園長をエルフにするのは、予定通りですが、ユーリアと親子になったのはパットした思いつきです。
これがどうなるのか・・・
分かりません!




