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王都エルトリア

無事にジョルシュさんが男爵の授与が決定したことを、王家の使者から通達をされて、ブレアフル家では出発の準備で大忙しです。

昨日、結婚式が終わったばかりなので、大変だなと思っていたら、この送り出しが終わったら、屋敷の使用人の方々は交代で休暇が与えられるとのことです。

福利厚生は大事ですね。


さて、今回の陣容は俺とジョルシュさんが、ナスカから来たのとは違って、しっかりとした2頭立ての豪華な馬車にブレアフル辺境伯家の騎士団から精鋭10人が騎乗して付いて来ることになりました。

これはブレアフル辺境伯家出身の男爵が貴族界隈で舐められないようにする為の処置ということです。

そして、当初の予定通り、Cランク冒険者の俺にも護衛依頼を指名して貰いました。

さて、正式に依頼を受けたので、騎士団の方と同じように馬を用意しないといけないのかなとか考えていたら、ジョルシュさんとエクベルトさんの2人と一緒に乗ることになってしまいました。

これでも、正式に依頼を受けたのに良いのでしょうか?


「良いのですよ。アキト君はどちらかと言うと、最後の切り札的な存在ですから、どうしても必要があったら、その時にお願いします」


「うむ。それにジャンヌ様もいらっしゃるからな。

我々が馬車でふんぞり返っていて、ジャンヌ様に護衛をされるなどあってはならないから、アキト殿とジャンヌ様には一緒に馬車に乗って移動をして頂く」


そんなこんなで、昼過ぎには出発の準備が整ってしまいました。

元々、準備をしていたとしても、随分早く整いましたね。


「それでは、クラウディア行って来るよ。

結婚してすぐ離れてしまうけど、帰って来たらナスカでのんびりしよう」


「えぇ、ジョルシュ様、どうぞお気をつけて。お帰りお待ちしております。

ジョルシュ様が帰って来るまで、しっかりと男爵夫人の心構えをお義母様、お義姉様に教わっておきます」


そういえば、この新婚さんも結婚式翌日には離ればなれで大変だよな。


「ほら、アキト。お前はそのまま、魔術学園に入学するんだろ?

しっかりと、実力を付けてくるんだぞ」


「ほんと、当分はナスカにも辺境伯領にも帰って来ないんだよね。

ナスカに戻ったら、美味しいものを沢山用意してあげるから、いつでも帰っておいで」


昨日の結婚式から、まだナスカへ戻っていなかった、デニスさんとローラさんが見送りに来てくれています。

1人でこの異世界に来た自分ですが、こうやって見送りをしてくれる人と出会えたのは、本当に嬉しいものですね。


「2人ともありがとうございます。

魔術学園でしっかりと実力をつけて、ナスカにまた必ず帰って来ますから」


そんな挨拶もそこそこに、王都へ向けて出発することになった。




目の前には大きな城壁が見えて来ている。

あれが、このエルトリア王国の王都エルトリアの城壁らしい。


「ジョルシュさん。あまりにもあっけなく到着し過ぎじゃないですか?」


そう、ブレアフル辺境伯領の領都ブレアフルから、この王都まで来る間、十数日はかかったが、その間、盗賊には1回たりとも遭遇することはなかった。

時たま、小さな魔物が街道沿いに現れたと思ったら、騎士が威嚇をするだけで逃げて行く始末でした。

ナスカから領都の間は短期間の間に3度も盗賊に遭遇したのに。


「あぁ、それはですね。どの貴族領も自分の領内の中心地と王都の間にある街道には、かなり気を配って盗賊退治や魔物退治を定期的におこなっています。

仮に王都への街道沿いで他の貴族が通過中に盗賊にでも襲われたら、その区間を管理している貴族の面目は丸つぶれとなってしまいます。

下手に王族が襲われたら、お家取り潰しの可能性まで出てきてしまいます。

ですので、各貴族は自持ちの騎士団は勿論、冒険者にも依頼を出して、お金も時間もかけてやっているのですよ。」


「それにのう、アキト殿。

しっかりと、騎士団に護衛をされた馬車を狙う盗賊はそう多くないさ。

あまりにもリスクが大きすぎる。

それに、これでも我が家は武門に優れた家柄でその武力で他国から王国を守る盾として辺境伯に任じられているからな。

その家紋を付けた馬車を狙う命知らずだったら、逆に捕まえて我が家で鍛えなおして一兵卒にでもしたいぐらいじゃよ」


なるほど、同じ領内を餌をぶら下げて移動していた俺達と、領都と王都を結ぶルートを完全防備で進んで来た今の状態では、全然違うわけですね。


「でも、そうするとナスカが新しく男爵領の領都になるんでしょ?

ナスカからブレアフル、そして王都への街道がになるのだから、ナスカとブレアフルのルートもしっかりと盗賊退治をしないといけませんね」


「本当にそれですね。

一応、この間、アキト君達と3つの盗賊団を壊滅させたので、多少は楽でしょうが、しっかりと騎士団を組織して、街道沿いを綺麗にしてしまわないと。

どうです、アキト君。今からでも魔術学園の入学を中止して、僕の騎士団に入らないかい?

今なら、騎士団長の席も空いているよ。

ナスカの英雄が騎士団に入ってくれれば、領民も喜ぶだろうしさ」


「丁重にお断りさせて頂きます。

正直、自分は組織で何かをしようとするのは、地球でもう散々してきたので、こっちでは好き勝手悠々自適に生きようと思っているのですから、騎士団なんかに入っちゃったら、ジョルシュさんにどれだけ無茶をさせられるか」


「本当に残念ですね。

でも、いつでもアキト君が希望すれば席を用意しますので、忘れないでくださいね」


「ジョルシュだけズルいぞ。

我が、辺境伯領でもアキト殿の実力があれば十分にやっていけるので、もし世界を回って疲れてしまったら、我が家に来て頂けたらと思いますぞ」


なんていうか、期待には応えられないけど、2人の気持ちが嬉しいな。

こうやって、この世界の生まれでもないのに、俺の居場所を用意してくれようとしてくれている。

勿論、貴族としての打算もあるのでしょうが、それをひっくるめてもありがたい。

本当に、この世界に来てから、良い人にめぐり会えているな。

これも創造神様の加護の影響かな。


さて、王都の門にも貴族専用の門があり、騎士団の方が手続きをしたら、荷物のチェックもなしにスムーズに王都の中に入ってしまいました。

流石、貴族に対してはそういうことは出来ないのだろうな。

ただ、貴族と悪党が手を組んでしまったら、やりたい放題じゃないだろうか?


王都は中心部に王城があって、ここは王族が暮らすだけではなく、国や王都の政治や執務をおこなう場所でもあり、法衣貴族や領地持ちの貴族でも直接王様を支える貴族はここで働いているらしい。

そこの周りに貴族達の邸宅がある貴族街で、普段は領地で働いている貴族も別邸としてここに家を構えておくそうだ。

この貴族街に俺が通うことになる魔術学園もあり、ここで寮生活をすることになる。

そして、この貴族街を囲むように壁と門があり、平民は許可なく中には入ることが許されない。

この貴族街から外側で平民の家があったり、商館があったりと平民の人々の生活圏になっている。

門の出入りのしやすい場所には、冒険者向けの宿屋や道具屋等々もある。

勿論、王都内にも冒険者ギルドがあって、そこがこの国の冒険者ギルドを統括する統括ギルドらしい。

そして、中には王都で一旗あげようと来たが夢破れた人が集う、貧民街と呼ばれる地域もあるらしいが、そこは出来るだけ近づかないようにと言われている。


そんなわけで、無事にブレアフル家の別宅に到着をすることが出来ました。


このお話で、無事に50話達成です。

アクセス数も毎日1000PVを超えたり超えなかったりって感じですが、徐々にではありますが評価ポイントも増えております。

これからも、応援よろしくお願いします。

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