王家からの使者
そんなこんなで、皆が楽しんだ結婚式も終わり、翌朝。
新郎のジョルシュさんを始め、エクベルトさん、オットーさんのブレアフル家の男どもは、かなりの酒を呑み過ぎて二日酔いで、誰も朝食に姿を現しません。
逆に、女性陣は皆、朝からしっかりと揃っているので、お酒が強いのは女性陣ですね。
そうしたら、ベルタさんがその理由を教えてくれました。
「ふふふ、それには秘密があってね、回復魔術に似たので解毒魔術があって私はこれを使えて、この解毒魔術で二日酔いも回復できるからなのよ。
まぁ、あれでも男たちは急遽の式で忙しくしていたから、少しはゆっくりさせておきましょう。
というか、パルティナちゃんはゾフィーちゃんの世話もあるから早起きも仕方ないけど、クラウディアちゃんは、もっとゆっくりしておいて良かったのに」
「いえ、お義母様。私はブレアフル家の娘としてだけではなく、男爵家の夫人としても生きていかなければならないので、これくらいは頑張れますよ」
「はぁ、あまり気を張り詰めすぎてはダメですよ。
無理をして身体を壊したら、何もならないですから」
「はい、お義母様、気をつけますわ」
こんな感じで、新しい母娘の会話を楽しみつつ、朝食を頂きました。
朝食後に紅茶を頂いていると
「奥様、王家からの使者が領都に到着した模様です。
すぐに、屋敷に来られるだろうとのことです」
ブレアフル家の執事であるパックさんがベルタさんに伝えます。
「では、男どもを起こしにいきますか。
すぐに動かさないといけないので、私も一緒にいってすぐに解毒魔術をかけます。
パックいきましょう」
そう言って、ベルタさんはパックさんを連れて、席を立っていきました。
さて、王家からの使者が来たということは、俺もそろそろここを出立するのでしょうね。
Side:ジョルシュ
昨日の式で流石に呑み過ぎてしまったので、二日酔いの頭を部屋でゆっくりと回復させていたら、母上とパック、それにクラウディアが部屋に入って来て大慌てで僕を起こします。
何事かと思っていたら、王家からの使者がもう領都に入ったということで、急ぎ起こしに来てくれたようです。
母上の解毒魔術を受けて、なんとか頭も回るようになり、急いで準備をします。
何とか、僕と父上の体裁を整えたところで、王家からの使者がブレアフル邸に到着をしたそうで、応接間で迎えます。
最初から、用事がある自分と、この屋敷の主であり寄親にもなる父上の2人のみでお迎えをさせて頂きます。
「ようこそ、遠路はるばるブレアフル辺境伯領へおいでなされた。
私が当主のエクベルト・ブレアフル辺境伯である」
「エクベルトの三男に当たります。ジョルシュ・ブレアフルと申します。」
「はじめまして、王都の法衣貴族をしております、イブリン・クローム男爵です。
どうぞ、よろしくお願いします」
そう言って、イブリン男爵は父上と僕に握手をしてくれた。
「それでは、早速ですが仕事をさせて頂きましょう。
これより、国王陛下よりの書状を読む」
イブリン男爵がそう言うと、僕と父上は膝を付いて、頭を垂れた。
ここより先の発言はイブリン男爵の発言ではなく、全て国王の発言になるので、敬意を払う為にこのような恰好で拝聴することになる。
「ブレアフル辺境伯家、エクベルト・ブレアフル辺境伯が三男、ジョルシュ・ブレアフルよ。
此度は、ブレアフル辺境伯家、因縁のダンジョン攻略を指揮監督し、悲願を達成したこと、誠に喜ばしい。
エクベルト・ブレアフル辺境伯より、辺境伯家の家訓に沿って、辺境伯家所有の男爵の権利を、これに寄与した貴殿に譲渡したいとのこと。
王家で検討した結果、ジョルシュ・ブレアフルを新たな男爵に任命すると決定した。
急ぎ、王城まで来られて、爵位の授与を受けるように。以上となります。」
「此度の王家の決定、謹んでお受けします。
急ぎ、準備を整えて王城に参上致します。」
「我が願いを聞き届けて頂き、誠に感謝いたします。
ジョルシュと共に、王城へ出向き改めて国王陛下に感謝の意を示させて頂きます」
「承知しました。
それでは、私はこのことを急ぎ王都へ戻り知らせて来ましょう」
「イブリン殿よ。わざわざ遠路はるばる来て頂いたので、我が家でゆっくりしていかれては、どうだろうか?」
「いえ、王家の使者として働く私が歓待を受けるわけには参りません。
急ぎ、王都へ戻り報告をしてきますので、エクベルト様とジョルシュ殿におかれまして、是非急いで王城へいらっしゃることを願います」
「そうですか、ではパックよ。イブリン殿がお帰りになられるので、例の物を」
父上がパックに伝えると一つの皮袋を手渡した。
「この皮袋はアイテムボックスが付与されています。
中身はこの辺境伯領の特産品や食べ物やお酒が入っております。
どうぞ、お受け取りください」
そう言って、イブリン殿に手渡そうとすると、イブリン殿は受け取りません。
「エクベルト様、そんな大層な物は受け取れません。
受け取ってしまっては歓待を受けてしまうのと代わりありません」
「イブリン殿、我が家としてもわざわざ王都からこの辺境の地に足を運んで頂いた客人に手土産の一つも渡さないで帰らせたと知られれば、辺境伯の名が廃ります。
辺境伯は手土産一つ手渡せない程、疲弊しているのではないかと言われてしまうものです。
ですので、どうかこの皮袋だけはお受け取りして頂きたい。
それに、これは内密ですが、特殊なルートから手に入れた幻の酒も入っております。
是非、王都の方のお口に合うか試して頂きたいのですが?」
「ま、幻の酒ですか?」
「えぇ、まだ販売としてのルートが確立したわけではありませんが、その質はかなりの物ですよ。
いくつか種類がありますが、酒精の強い物や、最上級ワインに負けないと思われる品もあります。
どうでしょうか?味を見て頂くということで是非に」
「わ、分かりました。
しっかりと味見をさせて頂いて、王都でお会いした時は是非感想をお伝えさせて頂きます」
そう言って、父上から皮袋を受け取りました。
「ありがとうございます。道中楽しんで頂き、是非、王都で感想をお聞かせください」
「それは、勿論。それでは、これで失礼させて頂く。
また、王都でお会いしましょう」
そうやって、イブリン殿は退出されたので、父上と共に玄関までお見送りをさせて頂いた。
「しかし、父上。まさか歓待の席も設けることが出来ないとは」
「うむ、王家の使者役は法衣貴族の中で何人かおるが、あのイブリン殿は絶対に歓待を受けないことで有名だからな。
でも、あの清廉潔白だからこそ、王家の信頼も厚く重要な案件ほどイブリン殿が遣わされるらしいぞ」
「でも、それを見越して、手土産なんてよく用意していましたね」
「まぁ、誰が来ても大丈夫なように用意をしておくのが重要だぞ。
あとは、シレッと酒好きのイブリン殿が食いつく餌を用意してな」
「その酒がまさか異世界で作られた酒とは思わないですよね。
まぁ、どれも味は間違いないですし」
「本当に、アキト殿のおかげだな。
アキト殿がいなかったら、式での酒も足りなかっただろうし、この作戦も上手くいかなかった
そもそも、ジョルシュが男爵になることもなかったし、結婚もまだ先だっただろうな」
「えぇ、本当にアキト君には頼りっぱなしで」
「ジョルシュ、アキト殿に何かがあれば、我が家は全力でアキト殿を守るぞ」
「ええ、分かっています。
ただ、あの子、何かあっても1人で解決してしまって、守らせてくれないかもしれませんよ」
「まぁ、それはあるかもしれんな。
それでも、無駄になっても良いから準備と心づもりだけはしておこう」
「ええ、それは勿論」
暑くて、昼間時間があっても書く気力がわかず。
夜にやっと書いている感じです。
暑さに負けて毎日投稿が止まったらごめんなさい。




