パルティナさん
そうして、ジョルシュさんとクラウディアさんの結婚式の朝を迎えた。
まぁ、俺は出席するだけなので、特にこれといって何かをすることはありません。
ちょっとだけ、ジョルシュさんに頼まれて準備をしましたが、それももう終わっています。
そうして、自室でのんびりしていると、扉からノックが聞こえたので、中に入って貰った。
「いやぁ、すまないアキト殿、式の前でのんびりしているところ、お邪魔させて貰うよ。」
部屋に入って来たのは、オットーさんの妻である、パルティナさんである。
この人は何を隠そう、今の王様の第2王女殿下だった人で、さらに戦姫と呼ばれるぐらい強く、近接戦闘にかけては近衛隊の隊員と接戦をする実力があったそうです。
当時、魔術学園に通っていたオットーさんと同級生だったそうですが、そこで何やらあってみたいです。
オットーさんが卒業後、父上のエクベルトさんの跡を継ぐ為にブレアフル辺境伯領に戻って来たら、パルティナさんは何を考えているのか、王家の誰にも知らせないまま単身でブレアフル辺境伯家に居付いてしまい、そこから王家や辺境伯家、それと元々のパルティナさんの婚約者とその家を巻き込んで、非常に大変なことになってしまったそうです。
一時期は、ブレアフル辺境伯家が分離独立することになるのではないかとの噂も出たくらいに。
そんな関係各所が大揉めに揉めた結果、パルティナさんの意思やオットーさんの将来性、建国当初から国を守って来た辺境伯家との関係性をも考慮されて、オットーさんとパルティナさんは晴れて結婚をすることが出来たそうです。
もう、それだけで小説一冊くらい書けそうな内容らしいのですが、オットーさんが恥ずかしがってあまり詳しくは教えてくれません。
今度、上等な酒を持って口を割らせましょうか。
さて、そんなパルティナさんですが、義理の弟の結婚式が間近に迫っているというのに、俺の部屋に来るなんて、何か御用でしょうか。
「アキト君、申し訳ないのだが、アレを分けて貰えないだろうか?」
「アレですか?でも、既にかなりの量をお渡ししたはずですが」
「恥ずかしい話、アレを私自身も食べてしまって、中々止めることができなくて、既に残っていないのだ」
「あの量のアレを食べてしまったのですか?」
「あぁ、本来は私が食べるものではないと分かっていたのだが、試しに食べたときのことが忘れられず、一口だけともう一度食べてしまったら、止まらなくなってしまった。
もう、アレがなければ、いつ暴れだすか分かったものじゃない。
なんとか、結婚式を無事に終わらせる為にも、今一度頂けないだろうか」
「ふぅ、分かりました。今回は特別ですよ。」
そうして、部屋のテーブルにあったティーソーサーの上に置いた。
たまごボーロを
「おぉ、ありがとう。アキト殿、これで式の最中もゾフィーがぐずらずにすみそうだ」
そう、パルティナさんが欲しがっていたのは、たまごボーロだったのです。
初めて、パルティナさんとお会いした時に、大泣きしている赤ん坊を抱いていました。
オットーさんとパルティナさんの第一子で長男のゾフィー君です。
もうすぐ8ヶ月ということですが、母親であるパルティナさんが自分で育てたいということで、乳母は置かずに辺境伯家のメイドでも子育て経験のある人に手伝って貰っているそうです。
ベルタさんも、乳母を置かずに自分で子育てして、やんちゃな男の子3人を見事に育てあげたらしいです。
さて、ゾフィー君も御両親の血を明確に引いており、中々のやんちゃぶりでよく泣いて、そんなゾフィー君が一番早く泣き止ませることが出来るのもパルティナさんなのです。
俺たちが挨拶に伺った際も、大きな声で泣いていてパルティナさんがあやしているのですが、どういうわけか中々泣き止みません。
そんな状況なので、また改めて挨拶をしようかと思ったのですが、ちょっと思いついて出したのが、たまごボーロです。
最初は、パルティナさんも自分の子供に見たこともないお菓子を食べさせるのは躊躇していたのですが、同席していたジョルシュさんも勧めてくれて、試しにまずはとパルティナさんが口にしてくれました。
ほのかな甘味と口どけの良さに驚いて、美味しいといくつも食べてしまいました。
これならばゾフィー君にも食べさせてあげられると、一口あげてみると、あんなに泣いていたのに笑顔になっていました。
パルティナさんに、もっともっととおねだりまでしていました。
そんなこんなで、ゾフィー君の為に大量のたまごボーロをあげたのですが、どうやらゾフィー君だけではなくて、パルティナさんまで一緒になって食べてしまって、結婚式当日というのに貰いに来たというわけです。
本当は、ゾフィー君と一緒にパルティナさんも式には欠席の予定だったのですが、たまごボーロがあれば、ゾフィー君が大人しくなると分かって、新郎新婦も是非にと言ってくれたので、参加することになりました。
それなのに、肝心のたまごボーロが無くなってしまっては、式の為には出し惜しみするわけにはいけません。
「しかし、念の為にたまごボーロのレシピも辺境伯家の料理人の方にお伝えしてあるのですけどね」
「えぇ、それも聞いていたのですけど、流石にここ数日は式の後の披露宴の食事の準備で忙しそうにしていたので、頼みにくかったのです」
自分もすぐにここから離れて魔術学園に向かうのが分かっていたので、たまごボーロのレシピを地球WEBで調べてみたら、片栗粉、卵、砂糖、牛乳で作れることが分かったので、ここの料理人に教えていた。
ただ、片栗粉が知られてなかったらしいので、じゃがいもから作る片栗粉のレシピも追加で用意しました。
この片栗粉が結構手間がかかるので、今のこの時期にはちょっと大変かもしれませんね。
ティーソーサーに載せた、たまごボーロをパルティナさんとゾフィー君が一緒に食べています。
良いですね。お母さんと赤ちゃんというのは、ほっこりします。
「じゃあ、この皮袋の中にたまごボーロを入れておきましたので、式中はこれをあげてください。
それとこっちの大きな皮袋にも大量に入れておきましたので、これも渡しておきます」
「いやぁ、ほんとにすまないね。
いくら、アキト君の能力でどんなに出せるからって、あまり甘えすぎるのも申し訳ない」
そう、ブレアフル家の人々にはお世話になっていますし、悪い人はいなさそうなので、ジョルシュさんとも相談して、俺の能力のことや異世界人であることを教えてしまいました。
あんまり、隠し事が苦手なのかもしれないなぁ。
「しかし、アキト君もジョルシュ殿の爵位の通達が来たら、一緒に王都に行ってしまうんだろ。
もっと、ゆっくりしていけば良いのに。」
「ちょうど、そろそろ魔術学園のクラス分けの試験があるらしいから、このタイミングになりそうなんですよね」
「アキト君の訓練を見学させて貰ったけど、間違いなくSクラスになるだろうさ。
私もこの子がもっと大きかったら、一緒になって訓練に参加したいのだけどねぇ」
朝早いというのに、パルティナさんは眠ったままのゾフィー君を連れて、朝の訓練を見学していましたが、自分も参加をしたかったわけですね。
戦姫と呼ばれるくらい、武術に傾向していたわけですから、確かに興味はあるのでしょう。
「それに、王家にいた頃から、私もジャンヌ様の逸話は聞いていたので、女性であれだけ活躍されたこと、同じ女として、とても尊敬していました。
実際にお会いできるとは思ってもいなかったので、こうやってブレアフル家に嫁いで、本当に良かったですわ。」
そういえば、初めて会った時から、ジャンヌのことをキラキラした目で見ていたような。
ジャンヌ、やっぱり凄かったんだな。
「これから、何度でもお世話になることもありますし、ゾフィー君の手が離れるくらいになったら、ジャンヌとの訓練の機会も設けますよ。ジャンヌもいいよね」
「ええ、私はいつでも大丈夫ですよ」
「はい、その時を楽しみにしておりますわ」
オットーの奥さんを出していなかったので、結婚式前にちょろっと出そうと思ったら、一話それで埋まりました。
てか、自分で軽くあらすじ書きましたけど、オットーさんとパルティナさんの話をいつか番外編か短編で書きたいなぁ。
以前書いた短編の続き等々、書きたいネタはいくつかあるのですが、大きな骨格はあってもストーリーは書きながら進めているので、同時進行で他作品を書ける自信がない。
自分が好きな作家さんは3作をちゃんと並行して同時進行していて、どういう頭をしているのか気になります。(めっちゃ褒め言葉です)




