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結婚式前夜

そんな日々を繰り返しているうちに、ジョルシュさんの結婚式の前日になった。

なんとか、王都からの爵位授与の通達が届く前に結婚式を迎えることができそうだ。


ナスカの代官であり、もうすぐ領主になるジョルシュさんの結婚式なのだが、その代官が不在で政務が忙しい為に、ナスカの庁舎からは幹部の方が1人しか参加していない。

後ほど、男爵及び領主としての挨拶と奥様の紹介をナスカでやるらしい。

まぁ、披露宴みたいな感じだろう。


ただ、ナスカの冒険者ギルドのギルド長と併設酒場のトップであり、ジョルシュさんと一緒にパーティを組んでいた、デニスさんとローラさんは2人揃って参加予定で、ブレアフルに来ていた。


2人は新郎の古くからの友人で大事なゲストなので、ブレアフル邸の一室を用意されていた。

そこに自分が地球産のお酒とおつまみを持って、お邪魔させて貰っている。

デニスさんには、酒精が濃い蒸留酒が好きだったので、ブランデーをロックで。

ローラさんには、甘いお酒ということで、あんず酒をこちらもロックで。

自分はゆっくりと飲みたい気分だったので、度数低めの発泡日本酒を。


「しかし、アキト、お前も元気にやっているみたいだな」


「ええ、まぁ元気にやっていますよ。

ジョルシュさんとはお会いして来ましたか?」


「あぁ、既に挨拶してきたわよ。

それに、以前から話には聞いていたけど、奥さんになるクラウディアちゃんも良い子だったねぇ。

あれならば、男爵夫人としてもやっていけるだろうさ」


「そうそう、ジョルシュが男爵でナスカの領主様だもんなぁ。

基本的には今まで代官でやっていた仕事をそのままって感じだろうけど、貴族様だと領内で騎士団を用意して、王家の命令で戦争に行くこともあるだろうから、これからが大変だろうな」


そう言えば領都ブレアフルには騎士団と兵士隊が両方あって、ナスカの街には兵士隊しかいなかったな。


「ちなみに、騎士団と兵士隊って何が違うんですか?」


「騎士団っていうのは、王族や貴族直属の武装集団で主に他国との戦争に行ったり、領内の村々を回って魔物や盗賊の被害がないか確認をして、必要であれば討伐もする。

それに騎士っていうのは、準貴族って扱いになって名字持ちになる。

兵士隊っていうのは、基本的には大きな街に常設でおかれて街の治安や外敵から街を守るのが仕事だな。

大規模な戦争や、その街が直接戦争に巻き込まれる時には戦争にも参加するが、まぁ少なくともエルトリア王国内ではあまり聞かないな」


「へぇ、そんな違いがあるのですね。」


「そういえば、アキトは魔術学園に行っちまうんだって?

すると、こっちに帰って来たら、ブレアフル辺境伯家かジョルシュのところの新設の男爵家の騎士団にでも所属するのかねぇ」


「いえいえ、自分は冒険者を続けていきますよ。

ただ、しっかりと実力を兼ね備えたら、世界を色々回って来ようかなとは思っています」


「そうか。やっぱ、お前はこの辺境伯領じゃ収まらない器だったな。

それじゃ、しっかりと魔術学園で学んで来ないとな。

しかし、魔術学園だったら、冒険者ギルドでも推薦枠があるから、俺に言ってくれれば魔術学園への推薦を用意してやったのに」


「いやぁ、そもそも魔術学園の存在を知らなかったですし、知らないものの推薦なんてお願いできませんよ。

あ、そうそう、アンナやケイト達は元気にしていますか?

彼らももうGランクを卒業して、Fランクで本格的に冒険者始めたところでしょ?

結局、このまま王都の魔術学園に行ってしまうので、彼らに挨拶も難しそうですよね」


「あいつらか。うん、しっかりと冒険者を始めているぞ。

しかも、ナスカに魔物が迫って来た時に、魔物に囲まれて手も足も出せないで、お前に助けられたじゃないか。

それが、かなり堪えたのか、慎重に依頼をこなしつつ、新人のFランクの中ではかなり安定してやっていってるな。

しかも、Gランクも終わったてのに俺のところに来て、近接戦闘をもっと教えて下さいって言って来たよ。

特に後衛組のアンナとフィデス。あの時、ただただ震えているだけだった自分が許せないみたいで、かなり真剣に学んでいるな。

ジョルシュが領主になっても、あの道場を可能な限りは続けるらしいから、あの4人組をジョルシュに預けても面白そうだなって思っている」


「へぇ、あの4人も頑張っているんだな」


「アキトも今からは無理だろうけど、魔術学園の長期休みになったら、ナスカにおいでよ。

アンナ達だけじゃなくて、私らもまた会いたいからさ」


「えぇ、それは勿論。転移や縮地移動も出来るので、たまには戻りますよ」


「そいつは頼もしいな。

じゃあ、またダンジョンから魔物が溢れ出して来たら、ナスカの英雄様に守って貰わんとな。

って、そういえば、今のナスカ周辺にあるダンジョンって、アキトの従魔のダンジョンコアが管理しているんだよな。

今まで通りの定期的なダンジョンから魔物を溢れさせるのって出来るのか?」


「ちょっと、確認しますね」

『コア、聞いていたよね』


『はい、主よ。

ダンジョンの魔物を今まで通りに定期的に溢れ出させることは可能だ。

逆に溢れさせないように調整することも、今の私ならば造作もなく出来るぞ』


「デニスさん。

今まで通りに溢れ出させることも可能ですし、逆に溢れ出さないようにすることも出来るらしいですよ」


「あぁ、なら今まで通りに頼む。

その時は周辺からも冒険者が集まって来て、ナスカ全体の書き入れ時で盛り上がるしな」


「でも、良いんですか?

いつもの定期的に魔物が溢れ出して来るときでも、少数の死者や冒険者を引退するレベルの重傷者も出るって聞いていますよ。」


「そうだな、それは間違いない。

ただ、今のナスカのダンジョンはお前という特殊な存在がいて、そうやってダンジョンを管理することができる。

ただ、お前が死んだらどうなる?

それに冒険者はナスカのダンジョン以外にも挑戦することもあるだろう。

そういう時に、ダンジョンをなめてかかって無駄に命を散らすような、やわな冒険者は育てたくない。

俺らも今まで以上に死者は出さないように準備して臨む。

頼んでダンジョンを復活してもらったが、可能な限り今までと同じ感じで頼む」


「承知しました。その辺は、うちのコアが上手くやってくれるでしょう」


『任せよ、主。私にかかれば、ダンジョンのいくつでも同時に管理してみせよう』


うん、コアならば、安心して任せられる。


「ただ、流石に前回の規模のは止めてくれよ。

あれじゃ、ナスカそのものが潰れてしまう。

その時には、意地でもナスカの英雄様を呼ばないとな」


そんな感じで、ナスカの話をしていたら、明日の主役のジョルシュさんが入って来た。


「おぅ、ジョルシュ、お前こんなところに来て良いのか?」


「えぇ、独身最後の夜ってことで別々で。クラウディアも友人に会いに行っていますよ。

クラウディアは、このブレアフルで生まれ育ちましたからね、この街に友人が沢山いるので、今頃、羽を伸ばしているでしょう。」


「まぁ、これから男爵夫人としてやっていかなきゃいけないんだから、今のうちに羽を伸ばしておかないとな。

んで、男爵様は街にご友人はいないのかよ」


「まだ、男爵じゃないですよ。

まぁ、これでも領主の息子ですからね、有象無象で寄ってくる子はいましたが、なんか僕を通して、親のご機嫌ばっかを測っている子ばかりで、そのうち離してしまいました。

そんな時に、打算もなく僕を兄のようにしたってくれたのが、クラウディアだったんですよね。

僕もそこそこ良い年齢になっていて、訓練が忙しかったですが、クラウディアがやってくると気が休まる感じがして、その頃からデニス達とパーティを組むまでは、ほぼいつも一緒でしたよ。」


「結局、話はノロケに落ち着くのかよ」


「まぁ、これから新婚なんですから、許してください。

アキト君、自分にもお酒を頂けますか?」


「それでしたら、自分も今飲んでいる、このお酒にしておきましょう。

これは甘めで軽い口当たりですし、酒精も抑えめの発泡日本酒です。

新郎が、式当日に二日酔いでベロンベロンじゃ、クラウディアさんに申し訳ないですからね」


「アキト君にまで心配をかけるのならば、今日はそうしておきましょう。

皆、僕の為に来てくれてありがとう。明日もよろしく頼むよ」


こうして、ジョルシュさんの独身最後の夜はふけていくのであった。


この投稿日が多くの地域でお盆の入りですね。

今はコロナの影響で、実家に帰れない人も多いでしょうが、実家から離れていても気持ちがあればご先祖様は喜ぶと思います。

いつもと違った形でお盆を過ごしましょう。


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