魔術学園について
「それでは、魔術学園への推薦、よろしくお願いします」
「ふむ、分かった。すぐに手続きに入ろう。
もしかしたら、ちょうどジョルシュが爵位を受けるタイミングで一緒に王都へ行き、入学という形になるかもしれないな。
その際は、私とジョルシュの護衛として依頼を出させて貰うので一緒に行こうじゃないか」
「それは、ありがとうございます。
何か、学園に入るまでにやっておいた方が良いことってありますか?」
「我が家からの推薦の場合は、入学試験はパスで入学になるので、入学だけを考えたら特に何も無くても良いが、クラス分けの為に実力を確認する試験がある。
その試験もアキト殿の実力ならば問題なく、最高位のSクラスに振り分けられるだろうけど、念の為、今までと同じ訓練をしておけば良いのではないかな」
え、いや、今までと同じって結構キツイのですが・・・
というか、属性魔術の基礎訓練とかしなくても良いの?
「あの?自分は属性魔術を学びに行くのに、今までと同じ訓練じゃ近接戦闘の訓練になっちゃいますよ」
「それで大丈夫。試験っていうのは、属性魔術でも身体強化のような近接用の魔術でも何でも良いから、魔力によってその実力を示せば良いからね。
その上で、Sクラスに入学をしておけば、自由に学びたいものを学べて、学園でこれだけのものを学べたと証明出来れば、卒業も自由にすることが出来る。
Aクラス以下だと教授や講師陣が設定したカリキュラムを年単位で受けることになるが、アキト殿の希望とは合わないだろ?」
おぉ、エクベルトさんはかなり俺のことを理解してくれている。
どうしても、時間がかかるなら仕方がないけど、短縮して必要なものだけ取れるなら、そっちの方が断然嬉しいぞ。
「魔術学園、その中でも特にSクラスは個の実力をより高める教育を基本にしているからね。
実力が高ければ高いほど、それに見合った教育を授けてくれるはずだよ。
はぁ、貴族みたいなボンボンよりも、冒険者みたいな実力主義で生きる人間の方が学園の本質に合っているはずなんだよなぁ」
エクベルトさんが何故かため息を吐いてしまった。
「何か、魔術学園であるのですか?」
「あぁ、これから魔術学園に行こうとしているアキト殿に話すのは何だが。
私も次男のゲルトや知り合いの学園の人間に聞いた話なのだけど。
魔術学園には私がアキト君にするように高位貴族には推薦する権利があるのだよ。
それを使って貴族の子弟が魔術学園に入学してくるケースが増えていてね。しかも、あまり実力を伴わない形で。
魔術学園は高い実力を持った卒業生を排出している関係上、かなりの名門という風に認識されている。
だから、箔をつける為に入学して来る貴族も多いのだが、そもそもクラス分けで実力が伴わずに下位のクラスになり、そこでも実力不足で厳しい立場におかれる。
するとね、親の貴族の名を掲げて講師陣やクラスメイトを脅すのですよ。
教授や講師陣はあくまでも王家直属なのですが、それぞれの地元にはその貴族の領内で生活をしている親族がいたりしますので、無下にすることも出来ないそうです。
魔術学園はその実力主義の観点から、貴族も平民も関係なく、あるのは実力による差だけ。
その上で、高位貴族が持つ推薦というのは、これだけ実力のあるものを推薦したぞという、貴族自身の人を見る目を表していたのに、劣悪な子弟を送り込んで来るなど恥知らずにも程がある。
せっかくこれから行こうとしている学園なのだが、念の為に知っておいて欲しい。
勿論、Sクラスの講師陣にはそういうのに屈しないし、学園の講師陣は本当に実力の高い者が揃っているので安心して欲しい」
「はい、分かりました。
でももし、自分が貴族の子弟に何かされたら、辺境伯家に類が及ばないように、我慢したほうが良いですか?」
ぶっちゃけ、貴族関係でゴタゴタするくらいなら、その学園は辞退させて頂きたいのだが。
「あぁ、もしそういう連中がアキト殿に何かしてきたら、ボコボコにしてしまって構わないよ。
あくまでも、魔術学園内は個人の実力が全て。
お互いが正々堂々やり合う分にはお咎めもないし、それを盾に我が家に何か言ってくるならば、私達が対応するので安心してくれたまえ」
そう言って、エクベルトさんはガハハと大笑いし始めた。
おい、マジで本当に良いのか?俺もやっちゃう時はやっちゃうぞ。
「あの、オットーさん本当によろしいのですか?」
「はい、これに関しては私も同じ考えですし、我が一族も代々そうして来ました。
例え、王族に連なる者だろうが、貴族の最高位の公爵家の人間だろうが、学園内で相手に問題があるならば手を抜かずにやってしまってください。
その方が、魔術学園の為にもなるでしょう」
おいおい、オットーさんまで、そんなことを言っている。
流石、武で国に貢献をして来た、辺境伯家といったところだろうな。
でも、自分も我慢をしなくて良いならば、それはそれで助かる。
まぁ、向こうから手を出して来なければ、こちらも手を出しませんよ
「それなら、安心ですね。自分も必要な自衛は好きに取らせてもらいます」
「主よ。大丈夫だ。必要ならば私が全て切り伏せるので安心されれば良かろう」
ジャンヌの俺に対する過保護のようなものが発動しているぞ。
って、ジャンヌをそのまま連れて行くわけにも行かないだろう。
「あの、ジャンヌがこう言っていますが、護衛って連れて行っても良いのでしょうか?」
「あぁ、ジャンヌ様が気合を入れているところ、大変に申し訳ないのですが、アキト殿のことを考えたら、護衛はなしの方がよろしいかと。
一応、貴族の人間も通うことになるので、護衛がいても良いのですが、ハッキリ言って魔術学園内では護衛を連れているだけで、実力不足とみなされてかなり侮られます。
別にそれによって成績が変わるというわけではありませんが、周りの目は厳しいでしょう。
ジャンヌ様には大人しくアキト殿の帰りを待っていて頂いた方がよろしいかと思います」
話を聞いて、ジャンヌがこの世の終わりのような顔をしていた。
いや、自分これでもジャンヌに勝っているんだよ。
護衛より強いんだから、別に護衛をしなくても良いじゃないか。
「確かに、主は強いのですが、それはあくまでも集中力が高い時のことです。
油断をしていても、すぐに戦闘に切り替えられれば良いのですが、主は集中力を高めるまでに時間がかかり過ぎます。
良いですか、敵はいつ来るとも限りません。
油断するなとは言いませんが、すぐに対応出来るレベルまでにならないと、心配でなりません」
おぅ、ガッツリとダメ出しを食らってしまった。
そんなに油断しまくりでしょうか。
まぁ、平和で命のやりとりのない日本で生まれ育った自分と、街から街へ移動するだけで、魔物や盗賊を警戒しないといけいない、この世界で生きてきたジャンヌと比べたら、普段から油断しまくりに見えるのでしょうが・・・
「ナスカの英雄もジャンヌ様から見ると、まだまだってところですかね。
それでしたら、どうでしょうか。
このまま、この領都ブレアフルに滞在して頂いてジョルシュの結婚式にも参列して貰い、アキト殿の魔術学園入学とジョルシュの爵位授与で領都に行くまでの間、Sクラスに入るための訓練に加えて、ジャンヌ様が安心して学園内をアキト殿1人で過ごせるレベルまで鍛えるというのは?」
「あ、それは良い案ですね。
短い時間でしょうが、主ならばしっかりと訓練をすれば、さらに強くなると思います」
おい、なんか、このジジイとんでもないことを言い出したぞ。
ジャンヌ達の訓練の厳しさを知らないからそんなことを言えるんだぞ。
ただでさえ、キツイ訓練にプラスアルファしようとするんじゃないよ。
「あ、あのですね。
自分も一応、ナスカでジャンヌがジョルシュさんと訓練している間は街中を1人で過ごしていたので、そんなにジャンヌが心配することないと思いますが」
「ジョルシュ、お前1人だけズルいじゃないか・・・
まぁ、学園内で魔物がいるわけでもないですが、ただ相手は貴族ですよ。
アキト殿は実力を持ちながらも、あくまでも平民です。
実力不足の貴族達からしたら一番目の敵になりやすい存在ですからね。
どんな卑怯な手をかけて来るかも分かりません。
それに、ブレアフル家の推薦ですが、ブレアフル家が魔術学園内の問題に、積極的に手を出さないのは知れ渡っているでしょう。
勿論、喧嘩を売ってくるならば、何処であろうと受けますがね。
というわけで、我が家の名前ではアキト殿をお守りするのは、中々に難しい。
アキト殿には、どんな攻勢にも負けない実力を備えて頂きたい」
あぁ、何だかんだでエクベルトさんも心配をしてくれているんだな。
「あと、領都で訓練をして頂けるならば、スキを見て私も参加できそうですしね」
おい、ちょっと待て、このジジイ。本音が漏れているぞ。
大変に申し訳ありません。
今まで、主人公アキトの一人称は「自分」で統一していましたが、この話から一部で「俺」も使用させて頂きます。
元々、「自分」は一人称にも二人称にもなる単語なので若干使いづらかったのですが、何となく使ってしまっていました。
どうしても「自分」を使うと、どっちを指してんだって不明な部分が出ており、今までは何とか誤魔化していたのですが、マジ限界です。
そこの表現の調整で時間を食ってしまいます。
まぁ、アキト君が実力を付けて生意気になったとでも解釈して頂いても構いません。
多分、前に戻って訂正はしないだろうな。
それよりは、毎日更新を続けていく方が、読者様が喜んで頂けると思うので




