ブレアフル辺境伯家
「これは、ジョルシュ様、おかえりなさい!
これまた、大規模な盗賊団を退治されたのですね」
流石、領都の兵士さんはジョルシュさんのことを知っているようですね。
「いえいえ、自分ではなくこちらのアキト君が率先して討伐してくれたのですよ」
「あ、貴方がナスカを救った英雄のアキト様ですね。
ナスカでのことは、この領都ブレアフルまで伝わって来ています」
「いえいえ、自分だけではないですよ。
あの場にいた全員が命をかけて戦ったから、ナスカを守れたのですよ」
「いやぁ、お若いのに素晴らしい。
冒険者は成果をあげるとすぐに増長してしまうのも多いのですよ」
「まぁ、話はその辺にして、盗賊を預かって貰えますか?」
「これは失礼しました。ジョルシュ様。我らにお任せください」
すると、門番の兵士さんは応援を呼んで盗賊の身柄を連れて行ってくれた。
それに合わせて、荷馬車や自分の従魔達も収納していきます。
流石に領都内をウロウロさせられないからね。
「ジョルシュ様。これだけの盗賊の数がいますと、換金の書類も準備に時間がかかってしまいますが、どうしましょうか?」
「それでしたら、出来上がったら、領主の館に持って来てもらえますか?」
「はい、かしこまりました。必ずお持ちします」
「よろしくお願いします。
それでは、アキト君、ジャンヌ様、行きましょう。」
こうして、領都ブレアフルの中に入っていった。
ブレアフルの街をジョルシュさんが先頭で進んでいく。
すると、大きな館が現れました。
その館の門には白髪交じりの初老の男性が立っていた。
風貌はお年を召していますが、背筋はピンと伸びて、服装も皺が一つもなくピッチリとしています。
身体は細身ですが、あの下はきっと引き締まった筋肉が付いているのでしょうか。
「ジョルシュ様、ジャンヌ様。お帰りなさいませ。
アキト様。ようこそ、お越し下さいました。
私、ブレアフル辺境伯家の執事を仰せつかっております、パックと申します。
どうぞ、よろしくお願いたします。」
「パック、元気そうで何よりです。
父上と母上はいらっしゃいますか?」
「はい、エクベルト様、ベルタ様、それにオットー様もお待ちしておりますよ」
「兄上までも待っていましたか。わかりました。
ジャンヌ様、アキト君、ここまで長旅でお疲れかもしれませんが、このまま挨拶に向かってもよろしいですか?」
「ジョルシュさん、自分達は体力に関しては問題ないので良いですよ」
「ありがとうございます。パック、このまま父上達のところまで案内してください」
「よろしいのでしょうか?
別室でご休憩できる準備もしておりますが」
「えぇ、大丈夫です。案内お願いします。
どうせ、皆、首を長くして待っているのでしょ」
「かしこまりました。それと、馬はこちらでお預かり致します」
他の使用人の方が出てきて馬を預かっていきました。
「それでは、どうぞご案内致します」
執事のパックさんの案内で館に入っていきます。
ある扉の前で止まって、ノックをした。
「御主人様、ジョルシュ様とお客様達がお招き致しました」
「あぁ、お連れしてくれ」
中から声が聞こえてきた。
中は応接間のような感じだろうか、そこに3人の人物がいた。
「おぉ、ジョルシュよ、よくぞ帰って来た。」
そう言って、1人の男性が立ち上がり、ジョルシュさんにハグをして来た。
こちらもパックさんと同じくらいの初老の男性で、こちらは筋肉盛々でまるでボディビルダーの選手のような肉体である。
「父上、お客様もいらっしゃるので、お止めください」
ジョルシュさんが赤面して止めている。
今まで、あんな顔をしたところなんて見たことないぞ。
「おお、そうであったな。うむ、ではそちらの女性が?」
「そうです。あのダンジョンで命を落としたと思われていたジャンヌ様です」
すると、ジャンヌの前に来たと思ったら、片膝をついてジャンヌを見上げた。
しかも、この男性だけでなく、もう一人の男性と女性までもその男性の後ろで膝を付いた。
あ、パックさんまでもが一番後ろで膝をついています。
自分も一緒にした方が良いのかな?
「ジャンヌ様。今代のブレアフル辺境伯家の当主を務めております、エクベルト・ブレアフルでございます。
ジャンヌ様におかれまして、長い時の間、あの忌まわしきダンジョンにおられたと聞いて、胸が張り裂けそうな思いになりました。
貴方様の弟でもある我が先祖もジャンヌ様がお帰りになられないと知って、なんとかあのダンジョンを攻略しようとしましたが叶わず、今際の際までジャンヌ様のことを思って亡くなったそうです。
その後を継いだ我々子孫一同も何度も挑戦をしておりましたが、力及ばずこの体たらくでございます。
本来であれば、このブレアフル家は全てジャンヌ様あなたの物。
もし、ジャンヌ様がお望みであれば、その全てをお渡ししようと思っております」
そう言うと、頭を下げてしまった。
いやぁ、ブレアフル家でのジャンヌが神格化していると聞いていたが、まさかブレアフル家の全てを渡そうとするなんて。
「エクベルト殿、顔を上げてください。
まず、前提として私は当時、当主候補でもある嫡子扱いではありましたけど、当主の座は弟に譲るつもりでいましたので、当主の座には興味がありません
そして、私は既に死亡してスケルトンの身で、この身体もあくまでも魔道具で作られた偽りの身体です。
私の全ては主であるアキト様に捧げておりますので、私は何かをブレアフル家から頂くつもりはございません。
もし、それでもとおっしゃられるのならば、主であるアキト様にお力添えをして頂ければと思います。
それと、もし何か私に出来ることがありましたら、アキト様の許す範囲ではございますがお手伝いは致しますよ」
うんうん・・・・え?
別に自分もブレアフル家から何かをしてもらうつもり無いんだけど・・・
いや、なに、主を立てて私やるでしょってドヤ顔をしているの?
全くの無関係のつもりで成り行きを見守っていたのに、こっちにたまを振ってくれてんの!
すると、頭をあげたエクベルトさんは
「わかりました。
それがジャンヌ様の望みということでしたら、そういたしましょう」
すると、エクアドルさんは立ち上がって、自分の方を向いた。
後ろにいた男性と女性は席に戻って、パックさんは壁沿いに立っています。
いやぁ、自分にまであれをやられたら、溜まったもんじゃありません。
「ご挨拶が遅れて、大変失礼した。君がナスカの英雄と呼ばれるアキト殿だね。
改めまして、私がブレアフル辺境伯家の当主を務めている、エクベルト・ブレアフルだ。
まずは、領主として、ナスカの街を救ってくれたことに本当に感謝している。
こちらにも増援の要請は来ており、すぐに出立をさせようとしたところで、君が解決をしたと報告を受けている。
状況を聞いている限り、もし君がいなければ、我々が着いた頃にはナスカの街は息子共々破壊尽くされてしまっていただろう。
領主として、父親として本当に感謝している。
そして、ジャンヌ様とあの我が一族の宿縁深きダンジョンの件だ。
ブレアフル辺境伯家の当主として、あのダンジョンを攻略してくれた上に、本来会うことはできないはずだった、ジャンヌ様とこうして会わせてくれた、君には表現の仕様がないほど感謝している。
ジャンヌ様は、ああ言って何も受け取らないとおっしゃっているので、主であるアキト殿にどうかこの恩に報いるべく、何かをさせてくれないだろうか。
ここまでしてくれた者に何も返せないのでは、それこそブレアフル辺境伯家の末代までの恥だ」
おっ、おう、何ていうかお礼を受ける側がお礼をさせてくれと強要されているって凄いな。
しかも、ジャンヌに何も要らないって言われてしまったから、こっちに対する押しが強すぎる。
そんな急に言われても、すぐには思い浮かばないぞ。
ジャンヌさんの辺境伯家での立ち位置というか、重要度というかそんな感じを表現したかった。
あ、そういえば、残り2人が名前も明かされてませんね。
そこまで、行かなかった~
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まぁ、バレバレですね
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