盗賊退治
領都への旅は順調に進んでいると思われる。
元々、ナスカと領都ブレアフルの間は、ナスカからは魔物の素材や魔石を、領都ブレアフルからはナスカでは自力で賄えない種類の食料品や日用品等を運ぶ為に商人の往来が頻繁におこなわれていた。
そのために、ナスカとブレアフル双方から兵士を派遣して定期的な魔物の間引きがおこなっているので、この街道を進んでいけばゴブリンの1匹も見かけずに済むこともあるらしい。
そんな街道を、わざわざ冒険者を護衛が必要なのかと思ってしまいます。
「ジョルシュさん、暇ですね。これって自分が護衛をする意味あるんですか?」
「まぁ、今のところはですね。
この街道沿いで簡単に魔物が発生してしまうのでしたら流通がストップしてしまって、ナスカは干上がってしまいますよ。
それよりも、厄介なのがいるんですよ・・・
ジャンヌ様、少し速度を落として進みましょう」
そうして、街道沿いをゆっくり進んでいくことになった。
すると、目の前にみすぼらしい恰好の男たちが10人、現れた。
それぞれ手には剣や槍を持っているが、手入れの不十分と言わざるを得ない。
あれならば、単なる鉄の棒でも振り回した方が武器としての性能を果たすだろうに。
「お前ら、ここは通行止めだ。通して欲しけりゃそれ相応の金を寄越しな。
お、そこにべっぴんさんもいるじゃないか、金が無けりゃそいつでも良いぞ」
まぁ、わかりやすい盗賊である。
ただ、盗賊も無理に命をかけたいわけでもないので、大概は全てを奪うのではなく、交渉して適当な金額で折り合いをつけて終わらせるそうだ。
ジョルシュさんが言っていた厄介なのって、こいつらってわけですね。
「ジョルシュさん、こう言っていますけど、どうしますか?
てか、ちょっとおびき寄せるつもりで、馬の速度を落としたでしょう」
相手に聞こえない程度の小声でジョルシュさんと相談する。
向こうも、すぐに襲って来る様子もなく、大人しく金銭や女性が手に入るならと見守る姿勢だ。
「やはりバレましたか。
まぁ、一般の商人だったりすると、こういうのも必要経費と割り切って、金銭とちょっとした飲食物を渡して通ったりするのですけどね。
ここは、せっかくですので、新進気鋭の冒険者君に退治をしてもらいましょう。
まぁ、殺しても良いのですが、生け捕りにすれば犯罪奴隷として売れますので、出来れば生け捕りにしてください。
その為に、荷馬車や魔術発動防止の腕輪を用意したのですから。
勿論、犯罪奴隷の売れたお金はアキト君にあげますよ」
どうやら、最初から想定しての行動だったらしい。
ちなみに、盗賊を発見した時は、殺しても犯罪にはならないし、仮に指名手配をされていた場合は報奨金も支払われる。
ただ、殺してしまうよりも、街の庁舎やギルドまで、引っ立てれば犯罪奴隷として買い取ってくれる。
犯罪奴隷は大概、鉱山に送られるか、ナスカが遭遇した大規模に魔物が来た際に一番最初に魔物と接敵をさせられるそうだ。
それに、盗賊が手に入れた金銭や宝石、魔道具等は全て、退治をした冒険者の物とされる。
実は結構、この盗賊退治や護衛依頼を専門にしている冒険者も結構いるくらいには美味しい仕事らしい。
さて、ここは依頼主からご指名を頂いたので、手早く片付けてきますか?
「ジャンヌ、自分が対処しますが、もしも逃げられそうな場合は足止めをお願いします」
「はい。主なら楽勝かと思われますが、ご武運を」
馬から降りて、盗賊達の前に立ちます。
「こんにちは、これでも冒険者をしているので、貴方達を退治しようかと思いますが、よろしいでしょうか?
あ、殺しはしませんが痛い思いはすると思うので、もし嫌だったら降伏をしてください」
そう言って、笑顔で近づいていきます。
「おい、ガキなめんじゃねえぞ。こっちとら、大人が10人いるんだ。
いくら冒険者だろうと、まだガキじゃねえか。お前達やっちまえ!」
一番奥の盗賊がそんなふうに言い出すと、残りの盗賊たちが自分に向かって来た。
まぁ、この見た目だと威圧みたいなのは皆無だろうしね。
では、自分も得意の縮地を使って攻め込みます。
一番奥にいた偉そうな盗賊のクビに剣を当てている
「これで、おしまいだと思いますが、続けますか?」
「い、いつの間に・・・
しかも、他の連中も既にやられているだと。」
そう、この一番奥にいた盗賊にたどり着く間に、他の盗賊の皆様は動けなくなる程度の攻撃をさせて頂きました。
勿論、剣を使ってしまうと、手を抜いても腕を落としたり、致命傷になりそうだったので、拳で攻撃させて貰いました。
皆さん、綺麗にボディに一撃、要は腹パンでうずくまってしまっています。
中には、この前に食べた食事を戻してしまっている人もいますね。ばっちいな。
んで、その後にわざわざアイテムボックスから剣を取り出して、盗賊のクビに剣を当てています。
多分、剣のが威圧感が出るかなって思って。
「分かった。降参する。だから殺さないでくれ」
うん、こちらとしては全員を犯罪奴隷として売り払う予定だったので、問題ありません。
「ジョルシュさん、こんな感じで終わりましたが、良いですか?」
「流石にアキト君ですね。上出来です。
そうしたら、盗賊をロープで縛って、念の為の魔術発動防止の腕輪を装着させてください。それと、アイテムボックスから荷馬車を出して、盗賊たちを荷馬車に積み込んでください。
あぁ、あとそこの盗賊、貴方達のアジトを教えなさい」
「アジトを知りたいのか?
じゃあ、せめて俺だけでも開放してくれよ。
アジトまで案内するし、アジトの中身は全部やるからさ」
この期に及んで、諦めの悪い盗賊です。しかも、自分だけ助かろうとしています。
「アキト君、そのままクビを跳ねてしまいましょうか?
別に他の盗賊をおこせばアジトは教えてくれるでしょうし、同じ盗賊の死体を見ればきっと口を軽くしてくれるでしょうしね」
あぁ、こりゃジョルシュさんのが相当上手だ。
「じょ、冗談ですよ。アジトですよね、すぐにご案内させて頂きます。
こ、この先の小さな洞窟をアジトとして使っています。
ど、どうか、命だけは命だけはどうか助けてください」
うん、ジョルシュさんにビビった盗賊は必死で命乞いをしています。
「素直でよろしいですね。
じゃあ、アキト君。アジトでお宝回収をしてきて良いですよ。
もし、人質のような方がいたら、お連れしてあげてください」
というわけで、スケルトン達を出して、盗賊を縛りあげて魔術発動防止の腕輪の装着、それにジョルシュさんの護衛という形で残しておいて、自分とジャンヌ、それに命乞いをしている盗賊に案内をさせてアジトに向かった。
自分がスケルトンを出したことで、盗賊はさらにビビってしまい、今や青白い顔をしております。
青白い顔の盗賊の案内でアジトの洞窟まで来ました。
アジトの洞窟まで来ると、洞窟の前を守っていた2人が、青白い顔の盗賊を見かけて何事かと近寄って来ましたので、手早く無力化をさせて頂きました。まぁ、同じ腹パンです。
んで、サクッと縛り上げて、アジトの中を探索しています。
中は灯りの魔道具を使っているらしく、結構明るくなっています。
洞窟内に盗賊はおらず、人質になっている人もいませんでした。
結構、がっぽりと稼いでいるようで、貨幣が袋いっぱいに入った物がいくつもあります。
手を付けていない非常食やお酒の樽、それに武器や魔道具なんかもアイテムボックスにしまっていきます。
「こんなもんかな?他に部屋は無いんだよね」
「は、はい。ここまでです。はい。」
すっかり従順になった青白い顔の盗賊が答えます。
ということなので、アジトとなっていた洞窟探索を終えて、出てきました。
さて、ジョルシュさんのところに戻って、先を進みますか。
異世界の道中と言ったら、やっぱり盗賊ですよねw
だいたい、問答無用で切捨御免が成立しますw
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