宴会と酒
「それでは、ナスカを守りきった我らの英雄アキトにかんぱーい!」
もう、何度目か分からない乾杯が繰り返されていた。
ギルドに併設された酒場には、冒険者や兵士達がところ狭しと飲んで騒いでいる。
無事にナスカの街を守りきったということで、ナスカの住民からカンパもあり、足りない分はギルドや庁舎で肩代わりをしてくれるという太っ腹な対応なので、皆、飲めや歌えのどんちゃん騒ぎである。
自分自身では奥の方の皆に見えないところで戦っていたから、それほど目立ってないと思っていたのだが、ケイト達を助けたところや、スケルトンやスライムを召喚するところ等々、目撃者が話をばらまいたそうで、何だかんだで英雄って立場に持ち上げられてしまった。
まぁ、自重はしないつもりだったので、仕方ないですね。
ほどんどの冒険者は自分を讃えてくれるのだが、歳の近い冒険者には睨まれているような気がする。
双方とも少々の死者や重傷者が出てしまったが、この規模の魔物が押し寄せて来た割に少なかったらしい。
特に、冒険者に多い風習なのだが、冒険者稼業をしていると家族と離れて暮らしているような場合も多いので、遺族が近くにいなかったりする。
だから、こういう時は亡くなった者の代わりに、派手にどんちゃん騒ぎをして飲み明かすのが供養になるらしい。
お前がいなくても、何とかやっていけるって死者が安心していけるように。
一角で、他の冒険者よりも大きな声で笑いながら泣いている冒険者達がいるが、きっと彼らは今回亡くなった者のパーティや関係者なのだろう。
気を使って、ベテランの冒険者が声をかけたりしていた。
まぁ、そんなこともあって、ギルド併設の酒場はカオスのような有り様である。
調理場の方では、ローラさんがギルドの職員も使って、酒を用意したり、料理を用意したりと、とても忙しそうにしている。
ローラさん自身も戦線で傷ついた冒険者や兵士に回復魔法で回復させていたというのに、今も元気に働いて、すごい人だな。
ちなみに、デニスさんは今後のことでジョルシュさんと打ち合わせがあるとのことで、この場所にはいない。
グラシア婆さんは、魔族の魔道具を解析すると嬉しそうに店に戻っていった。
そして、自分はというと
「ねぇ、ねぇ、アキト飲んでるの?キャハハハ。
今回はアキトが主役だから、いっぱい飲まないとダメなんだよ。キャハハハ」
自分の左側ではアンナがお酒を飲みながら、めっちゃ笑っている。
うん、笑い上戸ってやつだろうが、楽しそうなので、まぁ良い。
「良いですか、アキト。
貴方はここに来た当初は僕よりも弱かったはずなのに、どうしてあんなに強くなってしまったのですか。
しかも、そんなにイケメンで、かっこよすぎじゃないですか。
これはいけません。僕もアキトよりも強くならねば。
よしアキト、貴方が強くなった方法を教えなさい。僕もですね、昔から・・・」
右側ではケイトが一方的に話を続けている。
別に説教ってわけではないのですが、こちらが返事をする間もなく、どんどん話かけてくる。
なんだろう、飲んだら延々と話をするタイプなのだろうか。
普段はそれほど喋っているタイプではないが、酒が入るとタガが外れて喋りまくってしまうのか。
まぁ、普段からなんか溜め込んでそうだからな。発散になればよいか。
そして、アンナとケイトと続いたら、ウォルフとフィデスだが近くにはいない。
何処にいるのかと思ったら、ちょっと離れた場所で、2人で飲んでいた。
しかも、なんか手なんか繋いで、イチャイチャしているぞ。
おい、アンナにケイト、お前ら良いのか?って思ったが、アンナは笑って、ケイトは喋って全く気がつく様子がない。
まぁ、いいか、後ほどパーティ内で揉めなきゃ良いけど。
しかし、自分がいない1ヶ月の間でくっついたのか、この戦いでくっついたのか。
元々、同じ村出身で冒険者になったと言うが、今回の戦いで、吊り橋効果でくっついた可能性が高いかもしれませんね。
あ、ちなみに、ジャンヌは、スケルトンなので飲食不要とのことで、自分の後ろに直立不動で立って、今回の活躍で自分に不満を持ってそうな輩が近づいて来たら、眼力一つで追い払っています。
それと、見た目は美人でスタイル抜群なジャンヌなので、不埒な気持ちで近寄ってくる輩も一緒に追い払っています。
勿論、フレンドリーに接してくる冒険者や兵士の皆さんには、特にそういうことはしない。
皆さんお酒を持ってきてくれて、その度に乾杯を繰り返しているので、もうお酒でお腹がチャプンチャプンです。
あ、そんなに酒を飲んで酔わないのかですって、ちょっと気分が良くて高揚感はありますが、無病息災の効果で酩酊みたいな感じにはなりませんね。
ちょっと、気合を入れると酔いも覚めてしまいそうです。
流石に飲みすぎてしまったので、トイレに行ったついでに、外に出て夜風を浴びていたところ、ジョルシュさんとデニスさんがギルドの方に来ました。
「お、今日の主役じゃないか、楽しんでいるか?」
「えぇ、お二人はお仕事終わったのですか?」
「いいえ、流石に今回の規模は大きすぎましたので、まだまだ仕事自体は残っているのですが、あまり根を詰めてもってことで息抜きに来たのですよ」
「まぁ、ギルド長の俺と代官のジョルシュが酒場で飲んでいたら、他の連中が気を使うだろうから、俺の部屋でローラに持って来て貰って一杯って感じだな」
「あ、それでしたら、僕も一緒に参加していいですか?
まだ、安物しか出せませんが、異世界産のお酒を差し入れますよ」
「それは嬉しいですね。
さっき、頂いたおにぎりも美味しかったので、異世界のお酒も興味ありますよ」
「おぅ、来い来い。俺も楽しみだ」
こうして、3人でギルド長室に向かいました。
あ、ジャンヌも勿論一緒ですよ。
途中で、ギルドの職員さんを捕まえて、酒場のローラさんへおつまみをお願いします。
「ほら、おっさん2人と今夜の主役に、ローラさんの特製おつまみセットだよ。
てか、つまみだけ揃えて、酒は不要って何をする気なんだい?」
ローラさんがおつまみを持って、ギルド長室に来ました。
「差し入れで、異世界産のお酒を振る舞おうと思いまして、もし良ければローラさんもご一緒にいかがですか?」
「あら、嬉しいね。じゃあご相伴に預かろうかね。
どうせ、酒場の方もボチボチ酔いつぶれた連中も現れて来て暇になりそうだしね。」
後で、話を聞いたところ、アンナもケイトも自分が席を外したらすぐに酔いつぶれて、ウォルフとフィデスが部屋まで連れて行ったそうです。
それぞれの好みのお酒のタイプを確認して、物品創造します。
ジョルシュさんには異世界のワインをとのことで、コスパの良さで評判の高いチリ産の赤ワインを。
デニスさんは酒精の高い酒が良いとのことで、ウイスキーをロックで。
ローラさんは甘いお酒が飲みたいとのことで、梅酒をロックで。
自分は、先程まであまり美味しくは思えなかった生ぬるいエールばかりを飲んでいたので、ここはギンギンに冷えたビールを、ちなみに銀色のやつです。
「それでは、ナスカの無事と創造神の使徒、アキト君を讃えて、乾杯!」
そう、創造神ブラマー様は異世界でもしっかりと知られているらしく、ブラマーさんに頼まれて来た自分は創造神の使徒にあたるらしい。
いや、別に特にやることないって言われているのに、使徒なんかで良いのでしょうか?
「ほぉ、これが異世界のワインですか。
このレベルのワインが手頃な値段で飲めるとは。
これなら、王族や上級貴族の晩餐会で振る舞うことが出来る味ですよ」
「いやぁ、この酒もすごいぞ。
強い酒精で喉が焼けるように来る。
でも決して、ただ酒精が高いだけじゃなくて、独特の風味があって非常に美味い」
「こっちのお酒も美味しいわよ。
酒精は高いのだろうけど、甘さと、この果物の酸味でとても飲みやすいわ。
これは悪い男が女の子にでも飲ませたら危険だね」
ふぅ、自分もギンギンに冷えたビールは最高だ。
やっぱ、これじゃなくっちゃ。
皆さん、それぞれにお酒を回し飲みをしたり、自分も追加でお酒を出して、楽しい一夜を過ごしました。
やっぱり、スキルはただ隠しておくよりも、こうやって知り合いと楽しんだ方が良いですね。
異世界にはお酒の年齢制限はございません。
日本ではお酒は20歳になってから!
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