内緒の告白
「ふぅ、それでジョルシュさんが、この街の代官をしているとして、どうして道場主なんかしているのですか?」
「あれ?意外と冷静ですね。もっと驚いてくれても良いのに」
「いや、普通にいつも訓練で街を出る時に兵士さんが顔パスでジョルシュさんを通したりしていたり、ダンジョンでも同じように入っていけたので、街のお偉いさんとは思ってましたよ。
まぁ、予想以上ではあったので、これでも十分驚いていますよ」
「驚いてくれたなら、満足です。
そうそう、何故道場主をやっているのかってことですよね。
あの道場は元々、この地を我がブレアフル家が開拓をおこなった時から設置されていたものです。
ブレアフル家は武によって、他国から国を守り、魔物から国民を守って、国に仕えて来た武の家柄です。
新たに開拓をする時は、開拓者達が自らの身を守れるように武を教えていく道場を設置していたのですよ。
ただ、通常は街が発展していけば、治安維持や外敵から防衛する兵士や仕事として魔物を狩る冒険者くらいしか武は必要ないので、開拓者向けの道場は自然と取り壊してしまうのですがね。
以前、ダンジョンに向かう際にもお話をしたと思うのですが、当時の道場主である先祖の姉と、その直弟子3人がダンジョン内の最奥に挑戦した時に、僕の先祖は実力不足で追い返されました。
その先祖が後にブレアフル家の領主となるのですが、いつかそのダンジョンを我が一族の手で攻略をしたいと願い、大きく発展したナスカの道場も維持をされて、我が一族で最強の者をそこの道場主として置くことになり、今代は僕が就くことになったのですよ。
そういえば、ダンジョン最奥に挑戦をした、先祖の姉の名はジャンヌ・ブレアフルと言う名でしたね。
そちらの女性も同じジャンヌとおっしゃっていましたね。きっと貴方のような強い女性剣士だったのでしょうね」
そう言って、ジョルシュさんはジャンヌを見つつ、何処か遠くに思いを馳せているようだった。
しかし、改めて、ジョルシュさんからその話を聞いて、ある結論に達してしまった。
うん、間違いなく、その時のダンジョンを挑戦したジョルシュさんの先祖の姉って、このジャンヌのことだよね。
しかも、3人の直弟子って、あの剣と槍とナイフのスケルトンのことだよね。
うん、絶対に間違いない。
ジャンヌに顔を向けると、静かに頷いた。
うん、自分に全部任せるということだね。
はぁ、どうせダンジョン内で何があったかは聞かれるだろうし、ここにいる人達ならまぁ言っても良いかな。
「あのですね、ジョルシュさんに皆さん。落ち着いて聞いてください。
その先祖の姉のジャンヌさんですが、間違いなく、この目の前にいる女性です。
ジャンヌ、証拠を見せたいので、ネックレスを外してくれないか」
「はい、わかりました」
ジャンヌがネックレスを外すと、そこには骨だけのスケルトンが現れました。
皆さん、流石にびっくりしていますね。
あ、グラシア婆さんだけが、いつもの感じで笑っていた。やっぱり予想していたか。
「見ての通り、ジャンヌはスケルトンです。
色々あって、ダンジョン内で自分が使役しました。
ダンジョン内で何があったかと言うと・・・」
こうして、自分がダンジョン内で何があったのか、説明をした。
「まさか、我が一族の最強とも名高い、ジャンヌ様に会えるとは思いもしませんでした。
ジャンヌ様に鍛えられて、それだけアキト君は強くなったわけだね。
しかも、意思のあるダンジョンコアなんて、聞いたこともありません。
デニスは、冒険者ギルドでそんな話を聞いたことはありますか?」
「いや、あるわけない。
俺自身もいくつかダンジョンコアを見たことはあるが、意思を持っているようには見えなかったな。
確かに魔力は感じるが、それも魔物の魔石だって魔力を持つ。それよりも魔力が多いってだけの感覚だったな」
「ふぉふぉふぉ。わしも長いこと生きて来て、ダンジョンコアを利用した魔道具なんかも見たことあるが、意思を持ったものはなかったのじゃ。
ふむ、その腕輪にある魔石がダンジョンコアの複製とは。
魔族の魔道具なんぞよりも、その腕輪とダンジョンコアを解析したいのぉ」
グラシア婆さんが怪しい目で、コアが付いている腕輪を覗き込んで来た。
『主よ。あの婆さんは危険なのだ。絶対に渡してはならないぞ』
優秀なコアがめっちゃビビっている。
いや、流石にコアを渡すようなことはしないから、安心してくれ。
「それよりも、アキト。
あんた1ヶ月もダンジョンの最下層で訓練をしていたのに、ご飯はどうしてたんだい。
アイテムボックスを持っているのは分かったけど、元々1ヶ月も潜る予定じゃなかったんだから、食事を入れていたわけじゃないだろ?
仮に、干し肉とか黒パンの携帯食をアイテムボックスにあったとしても、それだけで1ヶ月も過ごして、今もあれだけ戦ってくれば、もう身体はボロボロだろう。
本当に体調は大丈夫なのかい」
ローラさんがめっちゃ心配してくれている。
本当にローラさん良い人だな。
それに、ジョルシュさんもデニスさんも自分の師匠として信頼できるし、グラシア婆さんには下手に隠した方が、後々面倒くさいことになりそうだから、ここで見せてしまうか。
コアが予定していた通りに、ダンジョンコアの能力で食事の用意をしたって形にした方が、リスクは減るのだろうけど、お世話になった人に嘘をつき続けるのは嫌だしな。
まぁ、ここからバレてしまっても、今の自分なら大丈夫という自信がある。
「それはですね、自分にはこういうスキルもあるので、大丈夫でした」
タブレットを出して、物品創造からコンビニのおにぎりを5つ出現させた。
おにぎりなら、手軽に食べられて便利だよね。
「スキルで作り出した、食べ物でおにぎりって言います。
美味しいので是非召し上がってください。
ちょっと、開け方が特殊なので、手に持って一緒に開けていきましょう」
皆さんに1個ずつ渡して、一緒に開けていく。
まぁ、見たことのない文字や写真がついているし、個包装しているフィルムもこっちにはないだろうから、おっかなびっくり感はある。
おにぎり自体の見た目も真っ黒だしな。
全員が包装からおにぎりを出せたので、まずは自分が一口。
うん、やっぱりおにぎりは美味いね。
このおにぎりの具材はすじこ。個人的にはいくらよりもすじこのが好みなんだよね。
自分が食べたのを確認すると、ローラさんとグラシア婆さんが意を決して、口にした。
男性陣は、それを見守っている。いや、男性陣ビビりすぎでしょ。
「うん、美味しいよ、これ。
中には魚とちょっと変わったソースを混ぜているのかね。
このソースはきっと何にでも合うね。作り方を知りたいぐらいだ。」
ローラさんが食べたのはツナマヨ。
流石、ギルドの酒場を仕切っているだけのことはあって、マヨネーズの凄さに気がついていた。
「ほぉほぉほぉ。確かに、これは美味しいのぉ。
この詰まっている白いのは米で、中身は梅じゃな。
だいぶ昔、遠い異国で食べたことがあるが、うん懐かしいのぉ」
おぉ、グラシア婆さんは米と梅干しを当ててしまった。
異世界にも米や梅があるってことは、スキルなしでも和食いけるかもな。
女性陣2人が美味しそうにおにぎりを食べているのを見て、男性陣2人もおっかなびっくり食べてみた。
「あ、確かに美味しいですね。
僕の具材は魚を焼いたものでしょうか、塩味だけですが十分に旨味があって美味しいですね。」
「あぁ、確かにこれは美味いな。
俺の中身は肉だな。何の肉かわからんが、甘辛くて独特の風味があって美味いぞ」
ちなみにジョルシュさんが鮭で、デニスさんは牛肉のしぐれ煮ですね。
2人とも、あんなにビビっていたのに、美味しそうに食べていますよ。
「しかし、食べ物を出現させるスキルなんて、聞いたことないねぇ。
しかも、このおにぎりを包んでいた透明な素材は、わしも長く生きて来たが見たことも聞いたこともないのじゃ。
それに、この全く不明な文字や精巧な絵まで描かれているなんて、何処の酔狂なのがここまでするのかのぉ。
アキトや。お主、何かまだ隠していることがあるんじゃろ?」
流石、グラシア婆さん、おにぎり一つでそこまで見抜きますか。
伊達に人生経験が長そうであるな。
「はい、実はですね。自分はこことは別の世界で生まれて、トゥーダローカの創造神であるブラマー様に頼まれて転生して来ました」
はい、アキト君が色々とバラしてしまいます。
まぁ、誰にでも話をするわけでもないですが、目標が悠々自適です。
内緒を抱えたままでは、悠々自適は難しいので、適度にバラしていきます。
仮に裏切られても何とかなるって戦力が整ってからってのが、若干の腹黒さがありますがねw
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