聖域での出発準備
「鑑定」
森の中の一本の木に鑑定のスキルを使用すると、
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木
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と、視界の一部に表示された。
うん、そりゃ木だろうよ。
まぁ、これをもう何十回と試したわけですが。
今の少ない魔力では木を木と知るしか出来ないわけです。何か哲学的ですが単なる魔力不足です。
それでも、最初の頃はこの哲学的な鑑定を使ったときに物品創造で駄菓子を出した時と同じ疲労感と回復を感じていたのに、今ではその感覚はなくなっている。
たぶん、魔力欠乏による疲労感は魔力が完全になくなってしまったときに起こる現象のようで、自分の魔力が増えて来た今では起こらないのだろうな。
ちなみに、転移も試してみましたが、目をつぶってその場所をしっかりイメージをしないと転移することが出来ないようです。
今は実際に目に見える範囲くらいしか転移できないわけですが、かなり離れた場所でもこのイメージがしっかりとできるか不安ですね。
たぶん、緊急時とかに簡単に転移とはいかないでしょう。
さて、魔力も少しは増えてきたみたいなので、新しい物が手に入るか、物品創造を使って見ましょう。
「タブレット」
やっぱり、まだ駄菓子類しか無理だろうな。
駄菓子を安い順で見ていると美味しい棒型菓子の何種類やふ菓子等々のあとに、キャベツの名を冠したソース味の駄菓子が手に入るようになっていた。
他にも、何種類もの新しい駄菓子が買えるようになっていた。知らない駄菓子もいっぱいあるな。
キャベツの駄菓子をクリックして手に入れる。うん、ソース味が美味い。
さて、駄菓子を食べながら考える。
いつまで、この聖域にいようかな。
正直、池の水はめっちゃ綺麗で飲んでみたが、特に問題ないどころかミネラルウォーター並に美味いと感じた。
そして、駄菓子とはいえ食べ物はある。少なくとも体感時間で数時間の間、鑑定のスキルを使用して、魔力の値が10以上は増えたと思われるので、ここで魔力を増やしていけば、食料品にも困らないだろう。
ただ、それじゃせっかくの異世界を堪能できない。
特盛スキルで悠々自適に過ごしていくことが自分の目標である。
安全なこの場所で過ごしていくのも、ある意味悠々自適なのかもしれないが、それは決して楽しくはない。
ということは、どこかのタイミングでこの聖域から出なければいけない。
さて、どのタイミングで聖域から出ていこうか。
ここにいるだけでも、スキルは覚えられるが実際に技術を学んだ方がスキル創造の必要な魔力も少なくて済むからな。
ここで、そんな技術を得られるわけもないし。
それに、神様たちも街で冒険者をやった方がスキルに必要な技術は手に入れやすいと言っていたな。
あとは、聖域から街までがどのくらいかってところか。
一応、神様たちは聖域から出たら、近いところに街があると言ってくれていたが、神様のスケールで近いって本当に近いのだろうか?
1回聖域を出たら、この聖域が消えてしまうので、戻って来ることも出来ない。
うーむ。
「よし!」
そうしたら、魔力100を超えるくらいを目指そう。
日本には、100円均一と便利なお店が存在する。
しかも、最近の100均は野菜や調味料、缶詰等々も置いてあるお店がある。
魔力100を超えれば、そういう100均の商品は何でも手に入れられる。
そうすれば、多少遠くに街があっても100均の道具とペットボトルの水分で生き延びられるだろう。
少し、慎重かもしれないが、神様たちから長生きを求められているのだから、これくらいで良いでしょう。
ソース味のお菓子の空袋をアイテムボックスにしまい込んで決意するのであった。
はい、アイテムボックスは地球の製品用のゴミ箱になっています。ポイ捨てダメ絶対。
「鑑定」
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聖域の木
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異世界の聖域に着いてから、一夜明けた。
昨晩は勿論、聖域で一夜を明かしたが、特に問題なく過ごすことが出来た。
温度・湿度も人にとって、過ごしやすく設定されているのか、時期的にそういうものなのか、自分にとってはちょうど良かったので、枕も布団もないのにぐっすり寝られた。
無限体力でも精神的には疲れているだろうし、脳の整理の為にも睡眠は必要らしいから大事だな。
さて、先程の鑑定では哲学的な回答ではなく、少しだけ詳しく鑑定できた。
これは、魔力を多めに使ってみたからだ。
勿論、魔力欠乏の感覚は結構嫌なので、その手前で抑えるようにしている。
何故そんなことをしているのかっていうと、魔力をより多く使用することで、魔力の上限もより多くアップしているようだからだ。
以前に、魔力を筋トレで例えたが、筋トレでより筋肉を鍛えたければ高負荷をかけるように、魔力もより魔力消費を多くすることで、魔力上限がよりアップしているわけですね。
そんなこんなで、無事に物品創造で100円の商品が買えるようになりました。
もう、異世界でボロい商売が仕放題ですね。
しかも、魔力回復極大の効果も凄まじく、魔力上限が100をちょっと超えた自分の魔力で100円の商品を手に入れた瞬間にすぐに回復している模様。
これなら、一度に一個ずつではあるけど、連続して商品を出し続けられるので、仕入れが0円で無限に出せる。
こんなボロい商売はありませんよ。
でも、だからこそ、この能力はバレたらまずいですね。
悪い人間に捕まれば監禁状態で一生、商品を出すだけの道具にされてしまいます。
せっかくの異世界ライフが、そんなことになったら、たまったものじゃありません。
この能力をバラさないようにと、それとバレても追い払うだけの力が必要ですね。
本当はこの場所で、その力まで鍛えることが出来ればいいのですが、教わる師匠もなく動物等々も何もいない聖域では、効率的ではありません。
しかも、スキル創造のリストも見てはいるのですが、こちらは一番低いスキルでも必要な魔力が全然足りないし、戦闘で使えそうなスキルなんてまだまだ先が見えないほどです。
多分、スキル創造は自分が修行をして、必要な魔力を減らした上で取得できるように考えられているのだろうな。
神様たちの徐々に異世界で力を身につけて欲しいという方針にあっているわけだ。
ここは覚悟を決めて、聖域を出るしかありませんね。
まぁ、加護の中に無限体力があるので、敵対するものと遭遇しても、最悪走り続ければなんとか逃げ切れると思いましょう。
「よし、では出発だ!」
聖域に一本だけある道を歩き出した。
本当の異世界での生活がスタートするのだった。
3話まで来ました。
毎日更新できたら、良いなぁ
ただ、筆が遅いので、止まったらこいつ煮詰まってるなと思って下さい。
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