黒幕発見
魔物をせっせと斬り殺して、ある地点まで辿り着いた。
「コア、この先には冒険者や兵士達はいないんだよね。」
『そうだ。主の従魔達もこちらの方向にはいないぞ』
「よし。ジャンヌ少し試したいことがあるから、自分の周りに魔物を寄せ付けないようにしてくれる?」
「心得ました。お任せ下さい」
そう言うと、ジャンヌは周りの魔物をまたたく間に斬り殺していく。
あ、このままじゃ自分が試す前にジャンヌが魔物を全部倒してしまいそうなので、急いで試そう。
まずは、全体に身体強化をまとわせて、その魔力を剣にもまとわせる。
剣等の武器に魔力をまとわせて、一撃の攻撃力を増大させる武器強化は身体強化の先にある派生スキルである。
この武器強化から、さらに2つの派生スキルがある。
一つは、連斬という、剣を振り下ろす時に、剣にまとわせた魔力でもう一つの仮の剣を作り出し、一振りで2連撃を与えることが出来るスキル。
もう一つは、飛剣という、同じく剣にまとわせた魔力を飛ばして、遠距離攻撃ができるスキル。
この2つのスキルを複合させることで
「ジャンヌ、避けて。いけ、”二連飛剣”」
一振りで2連撃の飛剣が飛んでいき、直線上の魔物がドンドン切られていった。
腕などが切られて、まだ死んでない魔物もそこそこいたが、かなり先の方の魔物まで二連飛剣は届いたようだ。
「うん、一振りで結構、先の方まで届くみたいだから、ちょっと連発するか」
とりあえず、この二連飛剣で十分そうなので、連発していく。
これで、目の前の魔物は一掃することが出来たな。
しかし、二連飛剣は確かに強力だけど、耐えきる魔物がいてもおかしくはないと思ったんだけどな。
「コア。今、大丈夫?」
『うむ、どうした主よ』
「皆の様子はどうかな?」
『今はそれぞれのスケルトンに対して、スライムを10匹ずつセットにして、合計3チームで行動している。
戦線よりも少し奥の方で魔物を片付けて、戦線に向かう魔物をだいぶ減らしているので、戦線はだいぶ余裕が出来たところだろう。
皆、やる気もあり、怪我も全く無いので、まだまだ活躍してくれるだろう』
「それは、良かった。」
『ただ、今回のダンジョンから溢れ出した魔物達だが、少々おかしいところがある。
例えば、これだけ多くのゴブリンがいれば、上位種のゴブリンナイトやゴブリンメイジ、統率することのできるゴブリンリーダーやゴブリンジェネラルに加えて、ゴブリンの数だけで考えれば、ゴブリンキングが数十体はいてもおかしくはないのに、それら全ての上位種を確認することが出来なかった。
コボルトやオーク、オーガに至っても上位種を確認することができなかった。
特に、ウルフは狩りも必ずウルフリーダーを頂点にして複数でおこなうはずなのに、ウルフリーダーを1体も見つけることができなかった。
もし、私のダンジョンでやるなら、低階層の少数ならば可能だが、これだけの大規模だとまず無理だ。』
「ということは、やっぱりダンジョンから自然と溢れ出たのではなくて、誰かが作為的におこなった可能性が高いと」
『私はその可能性が高いと思う。
今、溢れ出したと言われるダンジョンを調査中だが、ある程度分かり次第、主に報告をする』
「よろしく頼むよ。
それじゃ、ジャンヌ。自分達はもっと奥まで行って、魔物の数を減らしていこう」
「はい。主に何処までもついていきます」
そんなに気合入れなくても、弱い魔物ばかりだから一人でも大丈夫なくらいだけどな。
それから、時折コアから魔物が密集している場所の報告をうけ魔物を片付けていく。
特に戦線に近いところは、スケルトンとスライム達が頑張っているので、自分達は戦線から離れた奥の方で、魔物を片付けることにした
コアの言う通りに、殆どがゴブリンとコボルトで、あとは順にオーク、オーガ、ウルフとなっている。
まぁ、全体の数が多いので、オーガもウルフもかなりの数を倒してはいるのだが・・・
その上で、上位種と呼ばれる魔物が本当にいないか鑑定をたまにおこなったが、やはり上位種は全く見当たらなかった。
そんなこんなで、終わりが見えてきた頃に、コアから連絡が来た。
『主よ。ダンジョンの状況が把握出来たので、報告よろしいだろうか?』
「あぁ、コア頼むよ」
『魔物が溢れ出したダンジョンだが、その全てのダンジョンコアから魔力が全てなくなり、ダンジョンコアは機能停止、実質的に死亡していた。
』
「それって、ダンジョンコアが抜かれたり、破壊されたのとは違うの」
『どちらかと言えば、破壊されたのが近いかもしれない。
事実、ダンジョン内も機能をを停止しており、魔物の死骸が消えずに残っている状況だった
他のダンジョンコアに私のような意思があったかは不明だが、ダンジョン自体が機能停止になるまで魔力を放出することはありえない。
誰かが意図的に魔力を抜き取ったか、放出させたかが考えられる』
「コアの予想を聞かせてくれ」
『私の予想では、誰かがダンジョンコアを使って無理矢理魔物を作り出して溢れさせたのではないかと思っている。』
「そんなことが可能なのだろうか?」
『あくまでも、今回の異常な魔物の溢れ出し、ダンジョンコアが機能停止をするまで魔力がなくなったこと。
それから、予想したまでだ』
「分かった。コアが優秀なのは間違いないから、その可能性が高いのだろう
ということは、今回の黒幕が何処かにいるってことかな?」
『ダンジョン内には該当する者はいなかったので、周辺を探索しているが・・・
ん?主よ。今、周辺を探索していた魔物が、怪しい者を発見した』
おぉ、なんともタイミングよく見つかったな。
「分かった。自分も様子を伺うから、コア案内を頼む」
『心得た』
森の間にぽつんとある草原にマントを付けた男が座り込んでいた。
両手には四角い箱のようなものを抱えていた。
そして、特徴的なのが青い肌の色と少し長めの耳だった。
「ジャンヌ。こっちの世界に来てから、色々な人種を見かけたけど、青い肌の人は初めてみたよ。
耳が長いからエルフに近い種族なのかな?」
ある程度距離を取って様子を伺っているが、念の為、コソコソと小声でジャンヌに話しかけた。
「私も実物を見たことはないのだが、あれは多分魔族という種族だと思います。
魔力が通常の人族よりも多く、戦闘力も高く耐久性もあり、青い肌と長めの耳が特徴だが、他の特徴を持つものがいたり、人族と変わらない者もいるらしい。
ただ、全ての魔族がその体内に魔石を持つということで、魔石を持つ種族で魔族と呼ばれているらしい。
人族や他の種族と色々あって、その大半が別の大陸に移り住んだと言われているが、私の死後に変わってしまったかもしれない」
へぇ、そんな魔族って異世界にいたのか、じゃあ魔王もいるのかね。
転生者が魔王と戦うって定番だけど、別に魔王倒せとは神様に言われて無いんだよね。
そんな風にジャンヌに魔族のことを教わっていると
「いやぁ、実験は半分成功と言ったところだったな。
ダンジョンコアから魔物を出現させることには成功したが、ほとんどが雑魚魔物だったな。
出現させる魔物の数を減らしてでも、もっと強い魔物を出現させることが出来るようにした方が良いだろう」
はい、ビンゴ!
こいつが黒幕なのは間違いないな。
じゃあ、さっそくこいつを取り押さえるとしましょう。
無双できると思ったら、戦闘シーンがやっぱり難しいorz
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