ナスカの街へ
『主よ。走りながらでいいので、よろしいか?』
今、自分とジャンヌはナスカに向けて走っている最中だが、コアが声をかけて来た。
「ん?どうしたんだ、コア」
『外に出てから私の能力を確認していたのだが、どうやら私が外に出たことで、ダンジョン外でも魔物を操り、魔物が得た情報を私が精査できるようなったようだ。
ただ、無制限にとは流石にいかず、ある程度範囲は絞られてしまい、そこから魔物を出してしまえば野生の魔物と変わらないけどな』
「じゃあ、他のダンジョンから溢れ出した魔物もコアがいれば、止められるのか?」
『いや、すまぬ。
操れる魔物は私のダンジョンで生み出した魔物に限られており、他のダンジョンで生まれた魔物は無理だ。
複数のダンジョンから同時に魔物が溢れ出すというのは、非常に低い確率だと思われる。
もしかしたら、誰かの作為的な方法でおこなわれている可能性も考えられる。
調査の為に、私のダンジョンから魔物を出して調べようかと思うが許可を頂けるか?』
「構わないけど、今、ダンジョンから魔物を外に出せば溢れ出すと勘違いされて、大変なことにならない?」
『それは、大丈夫だ。
入口にいる兵士に気が付かれないように、小動物や小鳥のような魔物を発生させる』
「分かった許可する。くれぐれも見つからないようにね。
でも、複数のダンジョンに渡るのを調査って大丈夫なの?」
『まだ確認中ではあるが、おそらく大丈夫だ。
私が魔物を操れる範囲というのは、主の魔力に依存しているようだ。
この腕輪を通じて、余剰魔力がどんどん入ってくるので、今ならば複数のダンジョンをまたがる範囲内くらい、くまなく調査することが出来るだろう』
あ、そういえば魔力回復極大があるから、自分の最大魔力量から余って回復した魔力は垂れ流しなのかもしれない。
それをコアが腕輪をとおして、流れていっているのかも。
「あ、でもこれから溢れ出した魔物と戦闘になるだろうから、余剰魔力なんか出ないかもしれないけど大丈夫?」
『心配ないぞ、主。
元々、私は魔力を溜め込む性質があるから、既にかなりの魔力を溜め込むことができたから安心してくれ。
ダンジョン内で千人の冒険者が死んだ時よりも、主に使役して頂いたこの短時間の方が溜まった魔力が多いだろう』
いや、ダンジョンで死んだ冒険者と比べられても・・・
まぁ、ダンジョンは自己責任らしいので気にしないでおこう。
『あと、ダンジョンから外に出す魔物は、調査を優先させる為に戦闘力は皆無で速度に特化した物にするので、増援としては期待できないぞ。
まぁ、戦闘力の高い魔物はある程度の大きさになってしまうので、兵士に気づかれずに外に出すのが、そもそも難しいだろうが』
「その点は大丈夫だ。
自分も間違いなく強くなったし、ジャンヌも他のスケルトン達もいる。」
「そうだぞ、コア。
主はお強いし、いざとなれば私が盾となって主をお守りするから、安心するがよい。
あの3人も私と一緒に技術を磨き続けた同志だ。そこらの魔物風情に遅れをとることはないぞ。
それに、主にはスライム達もいるからな、彼らなら雑兵をまとめて相手してくれるだろう」
「え、スライム達も戦わせるの?」
「主よ、スライム達も主を守りたいと思って訓練をしていたではありませんか。
それにスライム達の実力はまだまだ未熟ながらも中々の成長具合ですよ。
私の見立てでは、ゴブリン、コボルトなら、スライム1匹で複数を相手しても楽勝でしょう。
オークで1対1、オーガにでも2匹いれば負けることはありません。
どうか、スライム達を信じて、戦闘に出してやってください」
うーむ。スライムは癒やし担当だから、戦闘をする必要はないと思うんだけどなぁ。
でも、ジャンヌがここまで言っているのだから、無下にもできないか。
「分かった。スライム達にも手伝って貰うよ」
「ありがとうございます。主」
ジャンヌが走りながら嬉しそうな顔をする。
スライムに対しても同じ従魔仲間として、何かがあるのかもしれないな。
『主よ。無事に魔物をダンジョンから出して、各地に向かわせることに成功した。
入口の兵士も疲れが見えており意識が散漫だったので、そこそこの数の魔物を出すことが出来た。
ナスカ方面にも魔物達を展開して、情報面で主の戦闘のサポートをするぞ』
そうか、ダンジョン入口の兵士さんも気を張って監視している中で、自分が無事に脱出したことを確認したから、安心して疲れが出たんだろう。
それにしても、コアは流石に有能だな。
コアが情報面でサポートしてくれたら、きっと有利になるだろう。
「ありがとう、コア。それじゃナスカまで急ごう」
ナスカまで、あともう少しだ。
Side:デニス
「おい、負傷した奴らはとっとと下がらせて、ポーションでもぶっかけてやれ!」
状況は最悪と言ってよい。
何とかギリギリで踏ん張っているが、魔物の数が尋常ではない。
なんとか冒険者も兵士も一丸となって戦線を維持しているが、押し返せるだけの一手が足りない。
俺もジョルシュも、もっと前に出られれば一点の穴を空けられるだろうが、俺らが離れてしまった途端に戦線が崩れ去ってしまうだろう。
今は、冒険者は俺が、兵士はジョルシュが時折剣を振りながらも指揮をして何とかって感じだ。
「ポーション類が足りなくなって来ました!」
「グラシア婆さんなら、まだ在庫を残しているはずだ。確認に行ってこい!」
俺らと一緒に戻ったグラシア婆さんは魔道具やポーション類を大盤振る舞いしてくれている。
無事に退けることが出来ても、婆さんに大きな借金を残しそうだな。
ローラの奴も回復魔術で冒険者、兵士を分け隔てなく回復してくれているが、それもそろそろ限界だろう。
まだ、諦めるわけにもいかないが、何とか手はないだろうか・・・
そんな中で、一人のギルド職員が俺の元に慌てて近くに来た。
「ギルド長、大変です!Gランク冒険者のパーティが前に出て魔物に囲まれてしまっています」
「何だって!どうして、Gランクの連中がそんなに前に出ているんだ!
Gランクの連中は後ろで控えさせて、戦えるレベルのものでも、戦線から抜け出した雑魚だけを相手にさせていただろ!」
「どうにも、そのパーティ内に結構な魔術師がいて、その子が使った魔術で一時的に戦線を押し上げることが出来たので、他の冒険者が前に出たところをつられて前に出てしまったようです。
その後、魔物の圧力が強まり、冒険者達は下がって戦線を元に戻したのですが、運悪くそのGランクパーティだけ取り残されて」
「その、周りにいた冒険者たち全員ランク降格だ!
Gランクのガキ共を巻き込んだあげくに、置き去りにするなんてありえないだろ!
ここは、俺が助け出しに行く。冒険者たちの指揮はお前に任せた!」
俺が側近でもある、ギルド幹部に伝えると、
「ギルド長!貴方がここを抜けたら、こちら側の戦線は崩壊します。
ここは、他の冒険者を向かわせましょう!」
「今、そんなことが出来る実力のある冒険者が残っているのかよ!
いれば、既に戦線を張っているだろうが、ここは俺が行くしかないだろ!」
「それでも、今貴方に行かれるわけには行きません!」
「じゃあ、Gランクのガキ共を見殺しにしろっていうのか!」
そんな時に、
「え、、一体何が起こっているんだ!」
戦線を監視している見張り台の上からそんな声が聞こえてきた。
見張り台には元冒険者で魔物使いのニックが庁舎から派遣されている。
今、ニックが持っている魔物は戦闘力の低いスライムしかいないので、後方支援ってわけだが。
「おい、ニック何が起こっている!」
「ギルド長、戦線の一角で魔物の首だけがどんどん落ちていってるんです。」
「はぁ?誰か風の魔術でも使っているんじゃないか?」
「いや、そういう感じじゃなくて・・・
あ、中心に若い冒険者が固まっています。その周りの魔物達の首がどんどん落ちていっているようです」
「おい、あっちの方角って、もしかして・・・」
「はい、さっきの囲まれたGランク達のいる方角です」
Gランク達の情報を伝えに来たギルド職員が答えた。
「ニック、若い冒険者の特徴って分かるか?」
見張り台の上のニックに声をかける。
「ちょっと、待って下さい。
犬耳の少年と猫耳の少女、熊耳の大柄な少年とうさぎ耳の少女ですね」
間違いない、囲まれたGランクはケイトやアンナ達だ。
アンナの火の魔術なら、多少出来すぎだが戦線を押し上げることは可能だろう。
しかし、首がどんどん落ちているってどういうことだ。
ケイト達の剣の腕じゃ、そんな首をどんどん落とすとか、まず無理だろう。
「その周辺の魔物の首のほとんどの首が落ちてしまいました。
あ、急に人が現れました。金髪の女性剣士と黒髪の・・・
あぁ!アキト君です。ギルド長、アキト君がいます!」
「何だと!あいつ無事だったのか!」
もうすぐ、無双できそうと思うと筆が進みますねw
ちょっとストックが出来て来ちゃいました。
どうせ、連休は都民はお外に出ちゃダメーって言われていますので、家でせっせと物書きをしますw
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