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ダンジョン脱出

立っていた女性は手や足を見て、顔や髪を触ってそこに確かにあることを確認していた。

そして、また改めて片膝をついた。


「主よ。無念であった私の技術を伝えたいという思いを受け止めてくださっただけでなく、スケルトンから後は消滅するだけと思っていた命を救ってくださり、従者として控えさせて頂けて、あまつさえ生前の姿を取り戻すことが出来るとは、感謝のしようがありません。

既に人の身ではなくなっておりますが、最後の最後まで付き従ってお守り致します」


あれ?声まで出せるようになってるぞ。

確か、魔道具としては死体を生前の姿に再現するしかなかったはず。

アンデットだから、再現したら動けるとは思っていたけど、声まで出せるなんて・・・


『予想だが、私が魂を維持したままスケルトンにしたからだろう。

通常のアンデットに、その魔道具を着用させても喋ることは不可能だろう』


ということらしい。

異世界のルールは中々難しい。


「まぁ、喋れるようになったのはいいことだな。

そういえば、まだ名前を聞いてなかったよね、自分の名前はアキトだよ」


「これは失礼しました。私の名前はジャンヌと申します。」


「これからよろしくね、ジャンヌ」


「はい。よろしくお願い致します」


「まぁ、生前の話とか他のスケルトン達の話とか色々聞きたいけど、とりあえず今は脱出を優先しよう。

あ、脱出したらダンジョン内でジャンヌに助けられて、ダンジョンを脱出したってことにして、話を合わせてね」


「それは構いませんが、主の強さを隠すのですか?

他と比べても非常に大きな主の強さは、遅かれ早かれいつかは知れ渡ると思いますが?」


「そうだね。でも、自分は戦闘力以外にも色々な優良なスキルがあるから、出来るだけ目立たず隠せるなら隠しておきたい。

まぁ、バレちゃえば開きなおって飛びかかる火の粉は払うつもりさ」


「私も生前は天下無双と呼ばれて、当時の国の軍隊程度ならば蹴散らす程度の実力はございました。

主はそれを超えているので、油断なさらなければ問題ないでしょう。

もし、何かあっても私達従魔と主の力があれば、国の1つや2つ簡単に落とせましょう」


うん、完全に脳筋の考え方だ。

本当に自分の考えを理解したのか、微妙なところだ。


でも、この異世界で国とかに縛られる生き方をするつもりはないからな。

そのために、最初にギルドで実力を磨く選択をしたのだから。

別に無法に所構わず暴れまわる気もないが、スキルがバレて自分を狙ってくるなら手を抜くつもりはない。

必要ならば、国とも戦う気持ちはあるからな。



さて、それじゃ出発してしまおう。

食事に使った家具をアイテムボックスにしまって、スライム達も収納した。

3体のスケルトン達は喋れるようになったジャンヌを見て、余計羨ましそうにしていたけど、流石にもう今はどうしようもないので、問答無用で収納した。


「それじゃ、コアにジャンヌ。当分はここに戻らないだろうけど準備はいいかい?」


「私は大丈夫です!」

ジャンヌは元気に返事をした。


『コアとは私のことを言っているのか?主よ』

ダンジョンコアがそんな風に訴えてきた。


「いつまでも、ダンジョンコアでは長いからね。

省略してコアって呼ぼうと思うけど、嫌かい?」


『どんな呼び方でも構わないぞ。

そして、私はここにあるダンジョンコアも私自身であるから、いつでも出発して構わない』

あ、そういえば、そんな話をしていたね。

じゃあ、とっとと出発しましょう。


「じゃあ、コア、1階層へ転移してもらえるかい?」


『お安い御用だ。では、行くぞ』


足元に魔法陣が現れて、浮遊感を感じたと思ったら転移をした。




目の前は、通常のダンジョン内だった。

「コア。ここは1階層のどの辺になるの?」


『ここは、1階層最奥の2階層への階段の近くだ。

私は私のダンジョン内でしか様子を把握することが出来ないので、もしダンジョン入口付近に転移した瞬間に、誰かが外からダンジョンに入って来て鉢合わせになったら、主がまずいと思うのではないかと思って、遠くにさせて貰った。

主とジャンヌの身体能力ならば走れば、すぐにダンジョン入口到着すると考慮したうえだ』


そう言われて、後ろを見てみると、確かに下の階に降りる階段が見えた。

しかし、本当にコアは有能だな。

普通、脱出するとなったら入口付近に転移しそうなものだが、こっちの状況を鑑みて独自の判断をしてくれる。

うん、本当に助かるわ。


「それじゃ、ジャンヌ。走ってダンジョン入口まで向かうよ」


「はい、主。何処まででも付いて行きますぞ」

うん、とりあえずダンジョン入口まで走るだけなんだけど。


ダンジョン内を走っていると、分かれ道ではコアが方向を教えてくれて、順調に走っているらしい。

らしいというのは、正直ダンジョン内の構造をあまり把握してないから、本当に正解なのか分からないからだ。

ダンジョンに来た時の1階層はスライムを使役しまくりながら、ジョルシュさんの後を追いかけていただけだったからな。

そういえば、あんなにいたスライム達が一匹も姿を見ないぞ。


「コア。1階層にはスライムが沢山いたはずだけど、一匹もいないんだけど、どうなってるの?」


『主の行動パターンを分析した結果、スライムがいると足を止めてしまうと思ったので、主の進行方向以外の場所に待機するようにしている』


うん、やはり優秀だ。

しかし、それはそれで寂しいじゃないか。

せっかくのスライム天国の場所を・・・


『主よ。スライムならばダンジョン内の魔物の中で一番簡単に発生させられる。

暇な時に、スライムを山程用意しても良いので、今のところは先を急いだ方が良いのではないか?』


うん、流石コア、自分に対するフォローも完璧です。


「そうだな。とりあえず、ダンジョンを脱出してしまおう」


少し速度を上げて走り続けた。


結局、5分ほどでダンジョン入口まで到着した。


さて、それじゃ外に出ますか。

ジャンヌと共に、ダンジョンから脱出をした。


ダンジョンを出た先には、入口を守るように兵士が立っていました。

ちょうど、立っていた兵士は自分がダンジョンに入る時に少し話をした兵士さんでした。


「き、君はもしかして、アキト君じゃないだろうか?」


「はい、アキトです。何とかダンジョンから脱出することが出来ました」


「いやぁ、ジョルシュ様がアキト君は必ず生きているはずですから、もし戻ったら頼むと言われていたが・・・

流石に1ヶ月も経っているから、もう無理だろうと思ったが、本当に脱出することが出来るとは」


「ダンジョン内でこちらの冒険者さんに助けられて無事に脱出することが出来たのですよ」


「これは、ナスカの街の将来有望な冒険者を助けて頂き、ありがとうございました。

しかし、今は全ての冒険者はダンジョンから出るように言われているはずですし、あなたのような冒険者が入っていれば気が付かないはずがないのですが」


あ、ヤバい、深く追求されるとバレちまう。


「そ、それはそうと、ジョルシュさんは街の方に?」


「あ、そうだ。アキト君には伝えておかなければいけないことがあります。

今、街の周りにある、ここ以外のダンジョンから魔物が溢れ出して街を襲おうとしています。

通常ならば、魔物が溢れ出すのは決まった時期があって、稼ぎ時なので冒険者がナスカに数多く集まっているのですが、今はナスカの冒険者の数も少ない時期なのです。

ジョルシュ様もアキト君を探しにダンジョン内に潜っていたのですが、その情報が届いて、急いで街に戻っていかれました」


何だって、どうしてそんなことが起こったんだ?

今は原因を考えている場合じゃない、異世界で最初に訪れた街であり、自分もとても世話になった街だ。

今の自分の実力ならば、足手まといになることはないだろう。

ここは自分の実力を最大限まで発揮してでも、必ず街を守ってみせる。


「わかりました。自分も急いでナスカまで戻って少しでもお手伝いをしてきます」


「よろしくお願いします。

自分はここのダンジョンも魔物が溢れ出す可能性があるので、監視の為に動けません。自分の分まで頼みます。

でも、貴方はGランクでまだ若い、無理はせずに危ない時は逃げて下さいね」


「はい、ありがとうございます。ジャンヌ行くよ!」

今まで以上の速度でナスカへ向けて走り出すのであった。


そろそろです、なろうっぽく無双できます。

いやぁ、作者ももっとサクッと無双できると思っていたのですが、結構時間がかかってしまいました。

多分、無双シーンの前に、1話か2話くらい挟むと思いますが、あとちょいなので、ゆっくりお待ち下さい。


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