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訓練の終わり

剣と槍のスケルトンの次は、槍とナイフ、ナイフと剣の全部のパターンでの戦闘を経験した。

今までが基礎編だと思ったら、ここからが応用編のような感じだった。

スキルも、一つのスキル単体で使うよりも、スキルを複数使うことでより高度な戦闘を求められるような訓練だった。


何とか、2対1の戦闘にも慣れてきて、五分五分に持ってこれた頃に、とうとう始まってしまった。

3対1での訓練、つまり剣と槍とナイフのスケルトン3体と自分1人での戦闘だ。

これが、正直一番驚いた。

それぞれが、かなり強いと思っていたが、この3体のスケルトンが一緒に戦うと、今まで以上の脅威に感じるのだ。

2+1が3になるのではなく、5にも10にも感じられる。

最初に3対1の戦闘をした時は、正直1体増えただけなので、五分に持っていけないまでも、もう少し粘れると思っていたが、速攻で中々の一撃を貰ってしまった。

それぞれが今まで手を抜いていたように感じられるほど、3体の連携は凄まじいものだった。

今まで以上にボコボコにされるようになったが、それ以上に実力を引き上げて貰っているのも実感した。

新たなスキル、そしてそのスキルを使いこなせるようになり、そして手持ちの他のスキルと組み合わせる。

スキルも今まで以上に大量に増えていき、さらにより高度な戦闘が出来るようになった。


スライム達も、スケルトンが連携して自分を攻めてくるのを見学することで、連携の仕方を学んでいたみたいだ。

未だに、スケルトン1体に対して、スライムは3~4体で訓練をしている。

元々、スライム達は攻撃防御を上手く分けて連携が出来ていた。

それがスケルトン達の連携を学ぶことで、攻撃と防御を上手く切り替えたり、自分が与えたスキルも上手に使うようになって、スケルトンとより濃い訓練をするようになっていた。

あんなに強くなっちゃって、元々スライム達は癒やしだけで十分だと思っていたから複雑だよ。



そんなこんなで、3対1もなんとか戦える様になってきた。

3人に負けないようになれば、流石に十分だろうと思った。

自分でも、ここまで強くなれるのかってくらい強くなった自覚がある。

この3体のスケルトンのおかげで、自分はここまで強くなった。

散々、ボコボコにされたが感謝である。

でも、もう十分だろう。スライム達はまだまだって感じで楽しんでいるだろうけどさ。


3体のスケルトン達と戦闘が続いている。

一方的にボコボコにされている最中はキツイだけだったが、拮抗してくると戦闘も結構楽しく感じて来ている。

元々、自分に降りかかる火の粉を振り払えるくらいに強くなれればとか思っていたのに、なんか戦闘狂にでもなっていたら、嫌だな。


そんな心の余裕があるくらいの戦闘の最中に、急激に膨れ上がった強者の気配を感じた。

驚いてそちらを見ると、壁にはめられている赤い宝石が見えた。

違う。あの宝石じゃない。気配はその横から感じた。


そう、最後の1体のスケルトンがいることを全く忘れていた。

豪華な鎧のスケルトンが今までにはない気配を漂わせていた。


3体のスケルトン達もその異様な雰囲気に武器を収めて下がっていきました。

まるで、調子に乗ってどんちゃん騒ぎをしていた部下たちが、上司に一喝されてしょぼんとしているようだった。

そんな3体のスケルトン達を気にする風でもなく、豪華な鎧のスケルトンは自分の方にゆっくりと歩いてくる


今まではあえて気配を弱めていたのか。

漂う雰囲気が今までのスケルトン達とは段違いなのだが。

もう、まるでラスボスだよ。ラスボス。

スライム達もビビって下がっていっちゃったじゃないか。可哀想に。


しかし、これだけ強大な気配を感じている割に自分は落ち着いているな。

これもあの3体のスケルトンとの訓練のおかげだ。

もしかしたら、自分があの豪華な鎧のスケルトンと戦えるだけの実力がつくように訓練をしてくれていたのかもしれない。

ということは、もしかして、ここからが本番なのか?


豪華な鎧のスケルトンが自分の目の前に立っている。

そして、腰に下げていた剣を構えた。

仕方ない。自分も覚悟を決めて剣を構えた。


豪華な鎧のスケルトンは不敵な笑いを浮かべたように見えた。

直後にものすごい速さで接近して来て、剣を振り下ろしてきた。

振りの速度も速すぎる。ギリギリで受けたが、一撃が重い。

さらに、楽しそうに連撃を加えて来た。

一撃一撃が重い連撃を軽々と振ってくる。

正直、一撃でも返そうとする余裕なんかない。

受けているだけで、精一杯だ。

何とか、距離を取ろうとするも、そんな余裕なんか全く無い。

あぁ、なるほど、間違いなく3体のスケルトンが連携するよりも、この豪華な鎧のスケルトン1体の方が強いわ。


もう、色んなことを考える余裕はない、何とかこの剣を受け切るだけに集中しよう。


気がつくと、こちらから一撃入れていた。

勿論、スケルトンに受け止められてしまったが、間違いなく自分から一撃を入れていた。

しかし、一撃入れたのが嘘のように、またスケルトンからの連撃が続いている。

もしかしたら、本当に幻だったのかもな。

そう割り切って、またスケルトンからの連撃を受け続けた。


また、一撃をいれていた。今度は間違いない。

スケルトンに簡単そうに受け止められてはいるが、この連撃の合間をぬって、一撃入れることが出来た。

そうやって、連撃を受け続けている合間に時たま、こちらも一撃を入れることが、少しずつ、少しずつだが多くなって来ていた。

ちょっとだけ、分かった気がする。

自分は戦闘中も、どうすれば良いのか考えすぎていたのかもしれない。

しかし、追い詰められた結果、何も考えずにただ剣に集中することで、今まで学んで来た剣が、学んだ技術が身体に染み付いていったような気がする。

実際に、今そんな考えをしている最中は、剣を受けるだけで精一杯で、こちらからは一撃も入れられない。

もっと深く、もっと深く集中しよう。全てをただ剣の一振り一振りだけに・・・






気がついたら、自分は剣を構えて、立っていた。

ちょっと離れた場所には、豪華な鎧のスケルトンも同じように剣を構えて立っている。


そうか、あのスケルトンはこれから最強の一撃を放とうとしている。

自分にその全てを伝えるために、あえて自分を確実に殺せる一撃を放つ。


ならば、自分もその剣に応えるしかない。

感謝とともに剣を構えた。自分があのスケルトンを殺す一撃を。


スケルトンとの連撃の間は全く記憶にない。ただ楽しかったという感情だけが残っている。

そして、3体のスケルトンはこのスケルトンと戦う力を備える為に、あれだけ鍛えてくれた。

本当に感謝である、ありがとう。そして、楽しかった。


間違いなく、次で全てが終わる。

自分が死ぬか、スケルトンを殺すか。

全てはこの一撃の為に。




先に動き出したのはスケルトンだった。


そして、剣を落とし、首に剣を寸止めされているのもスケルトンだった。


「貴方は不服かもしれませんが、自分の勝ちです。貴方には、まだこの世にいて貰います」


自分にはこのスケルトンを殺すことは出来ない。

ならば、超えるしかなかった。

辛勝ではなく圧勝を。

強者が持つ特権として、あえて殺さずに生かす。


ただ、その一念だけで壁を超えたようだった。




すると、豪華な鎧のスケルトンは、片膝をつき、胸に手を当てて、頭をたれた。

そして、その後ろに、剣、槍、ナイフのスケルトン達も同じ体勢で並んでいた。


最後のシーンはずっと書きたいと思っていたシーンでした。

今の自分の精一杯です。

そこに繋がるまでの、この回が今までで一番難産でした。


読んでくださる人がいるのに、作者が自分の作品を拙著と呼ぶのは失礼だと思っていますが。

もっと、良い作品をかけるように頑張ります。


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