対オーガ戦
2階~4階はサクサクと攻略出来た。
出てくる魔物も森で出てきた魔物と同じだったので、苦戦をすることはなかった。
ただ、ダンジョン内の狭い通路に敵が現れたこともあったので、その時は注意を必要とした。
例えば4階層に出現したオーク。身体が肥大しており豚のような顔をしているのだが、力は強く大きな身体に中々剣が通らないこともある。ただ、動きは遅いので通常は素早く背後の死角に回って首筋等の急所に剣を叩き込んだりしている。
ダンジョン内で、狭い通路にオークでは、背後に回ることが出来ない。
そういう場合は、オークが手に持ったこん棒を振り下ろした直後に、一撃を加えて素早く下がる、ヒットアンドアウェイ方式で対応している。
正面から対戦しているので、急所である首筋に一撃でってのはオークも警戒して中々命中できないが、振り下ろしきった腕に身体強化を上手くまとわせた一撃をヒットさせれば、腕を落とすことができる。
そうなれば、あとは一方的なワンサイドゲームである。
流石、異世界の魔術の一種だわ。
「さて、ここ5階層からは少し強めの魔物が複数体で現れます。
油断をしていると怪我だけでは済まないので気をつけていきましょう。
6階層への階段まで行ったら、今日はお終いですので頑張りましょう」
そう言って、ジョルシュさんは先を歩き始めた。
しかし、少し強めの魔物が複数体も出て来て、Gランク冒険者が対応出来るのだろうか?
そんなことを考えながら、ジョルシュさんのあとを歩く。
しばらく、5階層を歩いているが、魔物が1匹も出くわさない。
「ジョルシュさん。魔物に遭遇しませんね」
「えぇ、僕も何度もこのダンジョンに足を運んでいますが、こんなことは初めてです」
ジョルシュさんが少し緊張した様子で歩いていた。
けれども、少し歩くと1匹の魔物がゆっくりとこちらを見据えながら、歩いてきた。
自分は出会ったことのない魔物である。
背丈はオークと同じ2m以上あるが、身体つきは筋肉で覆われてボディビルダーをより凄くした感じだ。頭には角のようなものも生えて、こちらを鋭い目で睨んでいる。
「オーガですか。通常はこのダンジョンの5階層で出てくる魔物じゃありません。
どうしますか?アキト君だけでも倒せるでしょうが、僕も手伝いましょうか?」
ジョルシュさんが珍しく、そんなことを言い始めた。
予定外ってことなのだろう。
「いえ、自分で倒せるのでしたら、挑戦してみたいです」
別に自分だって、強くなりたくないわけではない。
ただ、ジョルシュさんの普段のやり方が精神的に来るだけだ。
ジョルシュさんが倒せると言うなら、戦っておきたい。
「そうですか。なら、ここはアキト君に任せます。
ただし、このオーガを倒したら、今日はダンジョンを脱出しましょう」
そう言って、今まで通り、ジョルシュさんは後ろに下がります。
オーガと正面から向き合う。
この場所は通路よりは多少広い空間ではあるが、簡単には背後に回り込むのは難しいかもしれない。
ここは、オークにも使った、ヒットアンドアウェイで攻めてみるか。
オーガが手に持ったこん棒を振り下ろして来たが、それを後ろに下がって避けて、身体強化をしてオーガの腕を落とすつもりで、剣を振り下ろした。
しかし、オーガの腕にちょっとした切り傷を作ることしか出来なかった。
オーガはこちらの攻撃を警戒するように、一歩後ろに下がってしまった。
「アキト君、気をつけて下さい。オーガはオークと同じ戦法で勝つのは厳しいですよ。
攻撃力・防御力はオークを凌駕し、その上で素早い動きも可能です。戦術を考える頭もあります」
ジョルシュさんが後ろから、そんなことを言ってくれた。
一歩下がったオーガが今度は自分の番だと、一気に自分に迫って来た。
先程よりも小さな振りかぶりで、何度も何度もこん棒をふり続けて来た。
自分は避けたり剣で弾いたりして、その攻撃をしのいでいる。
オーガの連撃は小さな振りかぶりなのに、一撃一撃がオークの思いっきり振りかぶった一撃と同じくらいの威力に感じる。
それに、よっぽど体力に自信があるのだろう、自分がしのぎ切れずに弱ったところを狙って来るはずだ。
ならば、この勝負、俺の勝ちだ。無限体力の威力みせてやるさ。
オーガの連撃をさばきつつ、距離が取れたら、ヒットアンドアウェイで一撃。
オーガは鬱陶しそうに距離を詰めて、連撃を続ける。それでも小さな傷は与えられる。
それを繰り返すこと、たぶん数十分。正直、正確な時間は自分でもわからない。
とうとう、オーガは疲れ切ったのか、腕が上がらなくなった。
そのタイミングでオーガに急接近、オーガの攻撃をさばく為に全身にまとっていた身体強化の全魔力を、腕に集めた。
オーガの首めがけて、剣を振り下ろし、オーガの首はボトッと落ちた。
「ははは。いやぁ、流石アキト君ですね。こちらの予想外の動きでした。
普通、オーガに対しては相手の動きを読んでスキをついて一撃入れるのが鉄板ですが、オーガがバテるまで戦い続けるとは。
ただ、今の戦い方だと1対1なら問題ありませんが、敵が複数の時には難しいので、その点は改善していきましょう」
なんか、ジョルシュさんとの訓練が一層厳しくなりそうな予感がするのだが、気のせいじゃないんだろうな。
「さて、オーガは魔石以外にも角や胆嚢等々、色々な部位が素材として高く売れます。
ここで解体している時間はないので、アキト君のアイテムボックスにしまって、ダンジョンから脱出してしまいましょう」
そう言われたので、自分はしゃがみこんで、オーガの頭と身体をアイテムボックスに締まった。
その時、
『条件に該当する者発見。該当者は指定の場所へ強制転移をおこないます』
酷く機械的な声が聞こえて来た。
「ジョルシュさん、何か聞こえませんでしたか?」
「僕には何も聞こえませんでしたが・・・
そ、それよりも、アキト君!足元が光っていますよ!」
ジョルシュさんが慌てた様子で言ってきた。
自分の足元を見てみると、魔法陣が形成されていて光っていた。
これって、神様たちのところから、神域へ飛ばされた転移の魔法陣に似ているな。
「アキト君、すぐにその場所から離れて!」
「ん、何か固定されている感じで、魔法陣から足が離れません!」
何度も、足を動かそうとしているのに、全然動かないぞ。
足に身体強化を集中してみても、びくともしない。
段々と足元の魔法陣の光が強くなっていく。
「こっち側からも魔法陣のまわりに結界が張ってあるので、そちらに行くことが出来ません。
ならば、この結界を切り裂きます。」
魔法陣のまわりには結界が張ってあるらしい、なんとしても自分を出さない気だな。
ジョルシュさんが剣を構えると、その剣はどんどん光りだしていった。
「”我が剣よ、結界を切り裂け”」
剣を振り下ろすと、パリンと結界が裂けた。
と、同時に足元の魔法陣の光も限界を超えて、地面が消えたような浮遊感を感じた。
あ、間違いなく転移される。
次の瞬間、目の前は知らない場所だった。
Side:ジョルシュ
全魔力を集中して、結界を切り裂いた目の前には既にアキト君はいなくなっていた。
まさか、5階層で転移トラップが発動するとは、あのオーガがトリガーになっていたのか。
いや、そんな原因を考えている暇はない。急いでアキト君を救出に向かわないと。
ソロで僕の今の実力だったら、20階層、いや30階層までならなんとかいけるか。
しかし、もしそれよりも下の階層にいるとしたら。しかも、それぞれの階層全部を回れるわけじゃない。
それに、結界を切り裂くのにほとんどの魔力を使用してしまった。
仕方がない、まずはダンジョンから脱出して応援を呼びましょう。
無理をせずに、待っていてくださいよ。アキト君。
ダンジョンといえば、転移トラップだと思っています。
はっきり言って、どこに転移されるか不明の転移ってめっちゃ怖いと思う。
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