魔道具屋
「今日の午後の訓練ですが、デニスギルド長が別件で用事があり、お休みになりました」
今日もニックさんと下水道の清掃という名目で、魔物使いの訓練を終えて、終了報告を受付にしたところ、そんなことを言われてしまった。
そういえば、Gランクの冒険者になってから、訓練が休みになるって初めてだな。
急に休みって言われても、何をしようかな?
そんなことを考えていると
「アキトいた!ねぇねぇ、今日の訓練が中止になったの聞いた?」
そういうと、アンナが声をかけてきた。
勿論、後ろにはいつもの通りにケイト達が一緒にいた。
「今聞いたところだよ。皆が揃っているってことは、どこかに行こうとしているのか?」
「そうそう。せっかくだから、街に繰り出そうって話になったんだよ」
「まぁ、いつもの通りにアンナが言い出したんだけどね」
ケイトがそんな風にぼやく。
「それじゃ、今日は外で昼食をとって、そのまま街をぶらつく感じかな?」
「そうそう。だから、アキトも行こうよ!」
「たまには良いね。一緒にいこう」
皆で街に繰り出すことになった。
「これは美味しい。肉汁がたっぷり出て、パンとよく合っている。
溢れた肉汁がパンに染み込んだ部分もまた美味い」
フィデスがウインナーをパンで挟んだ、ホットドッグのようなものを食べながら、まるで食レポのようなことをつぶやいている。
まずは、昼食ってことで、ちょうどホットドッグみたいな商品を売っている屋台があり、そこで済ませることにした。
フィデスが食レポしているが、確かにウインナーの味がしっかりしているので、ホットドッグによく合う。
しかし、ここでも思うが、ケチャップとマスタードがあれば完璧なんだろうけど・・・
もう、ケイト達には物品創造を明かして堂々と使ってしまおうかな。
そんな食事を終えて、武器屋や防具屋等々、冒険者として利用するであろうお店を中心に見て回った。
そして、魔道具屋にやってきた。
「ごめんください」
店内は薄暗く、少し涼しい空気が流れていた。
「おや、随分と若いお客さんだね、へへへ」
店内にはローブ姿のお婆さんが店番をしていた。
「はじめまして、自分達はGランクの冒険者でして、これから必要になってくるだろうと思って商品を見たいと思って来ました」
「あぁ、ギルドで訓練をやっているっていう見習い冒険者達だね。
狭い店だが、ゆっくり見ていってちょうだいよ」
お婆さんは、椅子に座りながら、ニコニコしていた。
店には、何に使うのか、変な色をした液体の入った瓶が並んだり、何か不気味な色をした宝石のついた指輪等々、怪しげな商品が並んでいた。
しかし、魔道具って結構いい値段がするって聞いたことあるけど、こんな大ぴらな場所に置いておいて、盗まれたりしないんだろうか?
地球のジュエリーショップだって、基本的に店員の前のショーケースに入っているのに、あまりにも無防備じゃないだろうか?
もしかして・・・、変な色をした液体の瓶を手に持って、
「”鑑定”」
と小さな声でつぶやいた。
――――――――――
着色をした腐った水の入った瓶
――――――――――
やっぱり、魔道具なんかじゃなくて偽物。
ってことは、今アンナが身につけている指輪も多分
「”鑑定”」
――――――――――
着色をした石で作った指輪
――――――――――
やっぱり、魔道具ではない単なる指輪だった。
「あの、お婆さん。
この瓶の中身って、単なる腐った水ですよね。それに今彼女が持ってる指輪もそこらで拾った石を着色したもので、魔道具なんかじゃないですよね」
そう言うと、笑顔だったお婆さんはカッと目を見開いて、僕のことをにらんで来た。
アンナ達も驚いた様子で、声を出せないでいた
自分もお婆さんの目をジッと見ていると、
「ははは。いやぁ、小僧、中々やりおるな。
この店に来て、一瞬で見抜いたGランク冒険者は初めてじゃ。
お主、名前はなんという?」
突然笑い出したお婆さんがそんなことを言い出した。
「自分ですか?アキトといいます」
「アキトか、気に入ったぞ。
わしの名前は、グラシアって言うんじゃ。
もし、必要な魔道具があれば用意してやろう。格安でな」
「ありがとうございます。でも、こんな詐欺みたいなことをして捕まらないんですか?」
「なぁに、そのへんに置いてある商品が欲しいという客がいたら、そんな腐った水をお買い上げですか?って教えてやっておるわい。
まぁ、なぜか顔を真赤にして店を出ていってしまって店に寄り付かない客もおるがな。ケケケ」
うわぁ、この婆さん改めグラシアさん、随分変人だぞ。
しかも、気に入られてしまった、大丈夫か自分。
「まぁ、ポーションやら、冒険者が使うような魔道具の大半はギルドにも卸しておるからな。ギルドで購入すればなにも問題ないのさ。
さて、正解したお前さんには何か褒美をやらないとな。
よし、お前さんと後ろの4人組はまだGランクの冒険者で魔道具のことをよく知らないんだろ?」
そう言われて、全員がうなずいた。
「なら、お前さんとおまけの4人組に、このナスカで一番の魔道具屋のグラシア婆さんが冒険者に必須の魔道具について説明していってやろう。
冒険者は手持ちの魔道具で戦術がガラッと変わっていくからな。
ほら、突っ立ってないで、そのへんの椅子を持って来て座りな」
こうして、グラシア婆さんの魔道具講座が始まってしまった。
まぁ、最初から魔道具の見学に来たから良いんだけどさ。
「さて、まぁ初心者にはこんなもんかね。それじゃ、最後にとっておきをやらせてやろう」
そう言うと、グラシア婆さんは上の部分に丸い穴が空いた四角い箱を持ち出した。
「わしが気に入ったやつしかやらせない特別製のくじ引きじゃ。
中に小さな紙片が入っており、それに魔道具の名前が書いてあるから、それを進呈しよう。
アキトに1回。おまけでそこの4人組にも4人で1回だけ引かせてやる。
ただし、料金は銀貨1枚で、引いても引かなくても今回限りの1回勝負じゃ
景品は必ず銀貨1枚以上の価値のあるものになっておる。
どうじゃ、やるか?やらないか?」
やっぱり変な婆さんだった。
自分は神様たちからの貰ったお金で余裕もあるから挑戦しようと思うが、ケイト達はどうするのだろう?
アンナなんかは好きそうだけど・・・
「せっかくなので、自分は挑戦しようと思いますが・・・」
「はーい。あたしがやる。いいよね、皆」
案の定、アンナが手を挙げて、そんなことを言い出した。
「やっぱりね。アンナはこういうの好きだから、止めても無駄だよね」
「う、うん。アンナがやりたければ、やってもいいと思うんだな」
「別に興味ないから、アンナがするといい」
ケイト達はアンナが挑戦で良いらしい。
「それじゃ、そこの元気なお嬢ちゃんから銀貨1枚渡して、くじを引きな」
アンナは銀貨1枚を払って、箱の中に手を突っ込んだ。
「よし、じゃあこれだ!
えっと。魔術増強の指輪って書いてあるよ」
「ほぉ、一応、紙片を寄越しな。うむ、確かに魔術増強の指輪だな。」
そう言うと、一つの指輪を取り出してきた。
「さて、そこのお嬢ちゃんが当てたのが、この魔術増強の指輪だよ。
はっきり言って、くじの中では一番良い商品と言って良い。
身につけただけで、魔術の効果が増幅され威力が1.2倍になる。
もっと効果が高いものもあるが、初心者冒険者には十分すぎるものじゃよ」
「えへへへ。やった!これ付けて、今度ケイトの魔力を押してあげるよ。
そうすれば、身体強化も覚えられるかもね」
アンナ、強運だな。
しかし、本当に効果のある魔道具をくれるんだな。
俄然、自分も期待できるぞ。
「それじゃ、今度はアキトの番じゃな。ほら、引いてみろ。ケケケ」
そう言われて、銀貨1枚を渡して、くじを引いた。
「えっと、死体復元のネックレスって書いてあります」
「本当かい?見せてごらん。あぁ、本当だね。ちょっと待ちな。」
そう言うと、婆さんはアイテムボックスから、ネックレスを取り出した。
「こいつは、はっきり言って大外れのネタ用だよ。
まぁ、金額は魔術増強の指輪と変わらないがね。
こいつを死体の首にかけてやると死体は生前の姿に戻るんだよ。しかも、そこから死体の腐敗は進まない。勿論、生き返るわけじゃないから、動いたりはしないがな
金持ちの商人が溺愛していた妻を早くに亡くして、それに耐えきれず金に糸目を付けずに危険な魔道具技師に作らせた一品物らしいぞ」
グラシア婆さんはそんな風に説明しながら、ネックレスを渡してくれた
お、おぅ。ってことは、こいつは死体にかけられていたのかよ・・・
なんか、呪われそうだけど・・・
当たったものは仕方ない。アイテムボックスの奥深くでこやしにでもなってもらおう。
あとがきって何をかけば良いんですかね?
毎回、ネタっぽいことを考えられる人って凄い!
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