身体強化
ギルドの初訓練と同じ構成になってしまった・・・
Side:アキト
身体の魔力を動かす・・・
お、意識したことはなかったが、魔力を動かすだけなら意外と簡単に出来るぞ。
今まで鑑定やら物品創造で魔力を使っていたからだな。
しかし、動かすことは出来たけど、魔力を維持するってのは案外難しいな。
今は、魔力を右手のこぶしに集めているんだけど、集まった魔力がどんどん霧散していっちゃうんだよね。
魔力をこぶしに集めるには、身体中の魔力をこぶしに向かって流す感じにすればいける。
でも、流れて集まった魔力は、そのこぶしから流れのままに霧散していく。
うーむ。難しいな。
Side:デニス
まぁ、こんなもんだよな。
Gランク冒険者達は身体強化の練習を初めて少し経った頃から、魔力を動かす側の魔術師連中が段々と脱落していく。
魔術が使えるやつが全体の1/3しかいなかったから、あぶれた奴もいるだろうが、次回までお預けか、パーティで自主練してもらうしかないな。
俺自身も慣れない火の魔術なんか使っちまったから魔力が足りないわ。
「あぁ、もう無理。ケイトの魔力を動かそうとすると、魔術を使う以上に魔力を消費するよ。どうしてケイトは魔力を動かせないの?」
「そんなこと言ったって、なんとなくアンナから伝わって来るのが魔力ってのがわかるくらいで、これを僕が動かすのなんか無理だよ」
猫耳・犬耳コンビのアンナとケイトが文句を言い合っているな。
まぁ、2人の言ってることは概ね間違いじゃない。
そもそも、他人の魔力を動かすには相手よりも魔力の密度を濃くしなければいけないので、必然的に動かす方の魔力の消費は大きくなる。
実はこれは魔術師として、より威力の高い魔術を使うための訓練にもなってるから、訓練方法としてはWin-Winなんだけどな。
一方、魔力を動かして貰う側は、今まで体内の魔力を感じたことがなかった奴がほとんどだろう。
まずは、自分の魔力を動かす以前に自分の魔力を感じるところからスタートになる。
実際に、近接戦闘をするもので、身体の一部に身体強化ができる目安はEランクくらいなので、こいつらはGランクを卒業する頃までに出来ていれば上出来な部類だ。
ちなみに、Dランクで身体の複数の場所、Cランクで全身への身体強化が目安となっている。
魔術師タイプはどんなにランクが高くても出来ないやつもいるがな。
さて、魔術師連中がほとんどリタイアしてるし、自分の限界を把握せずに魔力欠乏症の症状の奴もいるから、今日の身体強化の訓練はここまでにするか。
と思ったら、一人まだ練習してるのがいたわ。
アキトだ。
あいつは確か、パーティを組まずにソロでギルドに登録をしたし、知り合いもアンナ達のパーティくらいって情報があった。
アンナ達は2:2で練習してたから、一人で練習しているのか。
しかし、あいつは魔術が使える時に手を挙げていなかったが、魔力を動かせるのか?
右手に握りこぶしを作って、じっと見つめているが、そこに魔力を集めているのだろうか?
あぁ、こういう時にあの爺さんがいたらな。
あの爺さんは変な爺さんではあったが、変わったスキルを持った魔術師だった。
その中に相手が身体強化をしている部分がわかる、つまり身体のどの部分に魔力が集まっているかわかるスキルがあった。
ちなみに、普通は目に魔力を集めても視力が多少良くなるだけだ。
既に、魔術師連中が全員リタイアしているのに、いつまで訓練しているつもりだ?
確かに、他人の魔力を動かそうとしていた魔術師達も魔力の消費は大きいが、身体強化で魔力を動かして集めようとすると、最初の頃は集めた魔力がその部分から霧散してしまうから、こちらも負けないくらい魔力を消費していくはず。
仮にずっとあのこぶしに魔力を集め霧散を続けているならば、多分アキトの魔力量は他のどのGランク冒険者よりも高いはずだぞ。
そんなことを考えていると、
「あ、出来た!」
アキトがそんなことを言い出した。
Side:アキト
こぶしから、どんどん魔力が霧散していくってことは、このこぶしに蓋をしてやれば良いんだろうが、魔力に蓋をするってどうすれば出来るんだ?
あ、魔力それ自体で蓋をすればいけるんじゃないか?
身体全体の魔力はこぶしに向かわせつつ、こぶしの周りの魔力は霧散していく前に、こぶしの中心方向へ魔力を向かわせる。
魔力と魔力の流れがぶつかるが、自分の魔力なのでそこで一緒に止まるようにしていくと、
「あ、出来た!」
おぉ、こぶしに魔力が維持しているのがわかる。これが身体強化なんだろう。
ただ、これ維持するのにめっちゃ集中力を使うぞ。
こぶしに向かわせる魔力が多ければ霧散するし、こぶしの中心に向かわせる魔力を強くすると魔力が集まらなくなる。
これはかなり難しいバランスだ。
「おい、本当に出来たのか?」
デニスさんが、驚いたように声をかけてきた。
「はい。今、自分のこぶしに魔力を維持させています」
「そうか。よし、ちょっと待ってろ」
デニスさんはそう言って、訓練場の端っこに置いてある木製で出来た盾を持ってきた。
「よし、こぶしに魔力を集めているならば丁度良い、この盾をそのこぶしで殴ってみろ」
「は、はい。やってみます」
あれか、空手家が木の板を殴ったり、蹴ったりして割るみたいな感じだな。
空手はやったことがないから、型なんかわからないが、思いっきり殴ればいいかな?
こぶしへの魔力を集めたまま、デニスさんが持っている盾を殴ってみた。
そうすると、盾が割れるのではなく、殴った部分に穴が空いてしまった。
「よし、ぶっ倒れているやつもいるが、顔だけでもいいから、これを見ろ。
いいか、これが身体強化の威力だ。どんなに力に自信がある奴でも、一撃で割るんじゃなくて、穴を空けられるやつはいないと思う。
使うべきところを間違えれば一緒に戦っているパーティにも被害を及ぼす。
他の魔術やスキルにも言えることだが、冒険者はこれだけの力を持っているって自覚を持つように。
アキトはその身体強化を色んな部分で出来るようにしつつ、必要な時に素早く安定した身体強化が出来るように訓練しておけ。
それじゃ、今日の身体強化の訓練は終わりにして、昨日の続きで剣術の訓練をするぞ」
そう言って、デニスさんが木剣を持ち出して、剣術の訓練が始まった。
今日の訓練を終えて、夕飯前に部屋で一息ついたところだ。
手元には、ペットボトルに入った白い乳酸菌飲料の濃い味を持っていた。
今日の訓練は中身が充実していたから、甘さの濃い乳酸菌飲料が飲みたくなった。
まだまだ不安定だが身体強化の魔術が使えるようになったし、剣術も素振りだけから型を教えて貰って、その型に沿った動きを訓練してきた。
何でも、この型はデニスさんが現役時代に習った、剣術道場の流派のものを自分流にアレンジしたものらしい。
さて、じゃあスキル創造の確認をしてみよう。
まずは、剣術系のスキルだけど、だいぶ必要魔力が減って来たけど、まだ自分の魔力上限では足りないな。
あとは、今日出来るようになった、身体強化のスキルはどうかな?
お、実際に使えるようになったからか、身体強化のスキルは取得が可能なまでに必要魔力が減っているぞ。
よし、じゃあクリックしてスキル創造だ。
うん、タブレット上の身体強化の欄は取得済みになってるけど、物品創造みたいに物が現れるわけじゃないしな。
よし、ステータスなら確認できるだろ。
――――――――――
名前:アキト・ナカムラ
年齢:12歳
スキル
スキル創造、地球WEB、物品創造、ステータス
アイテムボックス、鑑定、転移
身体強化
加護
創造神ブラマーの加護
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おぉ、しっかりと身体強化が表記されている。
よし、初めてのスキル創造でのスキルGETだぜ!
やっと、スキル創造を使えました!
主人公の魔力も少しずつ増えているので、もっと活躍出来るはず・・・
多分、きっと・・・
そういえば、10話まで毎日更新出来てますね。
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