002 ブルードラゴン
『コントロールセンター(CC)から哨戒中の各機に告ぐ。E19ポイントに魔力の増大を確認。即刻向かわれたし』
哨戒任務に出ていた俺達の元へ通信が送られてきた。
「リロード隊了解。その地点はナロック隊が出払っていたはずだが交戦中か?」
『現時点ではナロック隊との通信は途絶。生存を含め確認を求む』
「了解、これよりE19中域へ向か。聞いた通りだ。骨拾いにならなきゃいいがな」
『先行するわ。シルトと隊長はごゆっくり』
「ああ、頼む」
『フォルの機体は速くていいよね』
フォルシオンの機体[MMAS―2sc リベリオンライトアーマー ]は、近接戦闘に主眼を置いたカスタム機となっており、スラスターの大型化と出力増しに加えて軽量化も図られている為、コマンダーカスタムより速い速度が出せる。
武装も軽くなった新型のブレード2振りにMバルカンを裏面に装着した小型シールドとなっているので徹底された軽量化が成されている。
「まぁ、それを乗りこなせるフォルも流石と言うべきだな」
『ム、私だってあのくらい』
「いつもフォルは傷だらけにするが、シルトの機体はいつも新品同様じゃないか」
『そぉ?エヘヘ、そうかなぉー?』
「二人は得意分野でそれぞれ敵を蹴散らしてくれればいいさ」
『うん、わかった』
二人は素直なんだが、度々衝突し合うは言うこと聞かない時も多いしで苦労するのだ。
そんな事を思っていると、先行したフォルから無線が入った。
『隊長聞こえるかしら?』
「ああ、良好だ」
『ナロック隊は確認出来ず、代わりにブルードラゴン6体の反応を確認したわ』
「了解。こちらリロード隊、CC応答願う」
『こちらCC、リロード隊どうした』
「ナロック隊は全機シグナルロスト、敵ブルードラゴン6体を確認」
『了解した。交戦されたし、後300でビリーム隊が到着予定』
「了解、これよりエンゲージに移る。CCは索敵に着手されたし、オーバー」
『幸運を祈る』
俺とシルトが到着した時には既に交戦していたフォルだが、6体の群れを相手に一歩も引かずにドラゴンブレスを回避しつつブレードを振るっていた。
俺も負けじとEライフルで1体の翼を撃ち抜くと、それに続いてシルトもEライフルを構えて別の1体を撃つ。
翼を撃たれて飛行能力が低下したドラゴン目掛けてブレードを振るい下ろして胴体を切り裂くフォルは、即座に転回して4体のドラゴンブレスを避けながら被弾したもう1体を切り払い、あっという間に2体のブルードラゴンを沈黙させた。
ドラゴンは息の根を止めると、空中で粒子となって消えていくのだ。
切られたら出血もするし、熱源、魔力も探知出来ることから生物であることには化わりないが、何故粒子となって消えていくのかは解明されていない。
『隊長、来るよ』
「ああ、シルトはヘイトを稼いでくれ」
『了解』
シルトの機体は[MMAS―2fg リベリオンガードスタイル]であり、その名の通り守りに特化した機体だ。
大型のシールド(スクトゥム)と取り回しの良いバックラーを装備し、火器はEライフルと背部の6連装魔力弾頭ミサイルポット、バックラー裏面から推進剤を利用して射出される4本のスパイク状の徹甲槍弾となっている。
その為、ドラゴンを引き付けたり攻撃を防ぐことを身を呈して行ってくれるシルトはヘイト役に向いていた。一方で危険を伴う行為に、部下に任せてしまっている不甲斐なさを感じる俺なのだ。
「俺は自分が情けないな」
『何か言った?』
「なんでもない。すまんが任せたぞ」
『はーい』
シルトは俺の前に出て2体のドラゴンの攻撃を防ぎきっている。
その隙に、1体に向かってエネルギー弾を撃ち、怯ませてから魔法でライフルを浮かせて左手に持ち替えると、腰サイドアーマーに装備しているロングソードを引き抜きドラゴンの胴体を切り裂く。
残り1体と振り向くも、シルトの徹甲槍弾で内部まで貫かれたようで2体共々片付いた。
「こちらは片付いた。フォル、援護はいるか?」
『無用だわ。こっちも後1体』
300もたなかったな、残る1体は首を切り落とされて沈黙した。
6体のブルードラゴンを倒し終わった所で、ビリーム隊隊長から通信が入る。
『こちらビリーム隊、遅ればせながら加戦する』
「あぁ、こっちは既に終了している。ナロック隊の捜索を願いたい」
『なんと!了解した。捜索は我が隊が引き受ける。貴官等は帰投されたし』
「了解。CC応答乞う、ブルードラゴンの討伐完了。ナロック隊の捜索はビリーム隊に委任、リロード隊は帰投する」
『CC了解。リロード隊の哨戒任務はマゼラ隊に引き継ぐ、ちょっと代われ。あ、報告を。後にしろ!えー…』ヴァレル、ごくろうさん』
「シキガミか。どうした?」
『いや労おうと思ってな』
「嘘つけ、どうせ新型ブレードの話だろ?」
『よく分かってるじゃねぇか!フォルちゃん、打刀はどうだった!?』
『こんな良いもの早く作って欲しかったわ』
『気に入ってくれたか、喜んでもらっ、おい、何をする、やめろー。いい加減にしてくださいシキガミ主任!』
「怒られてやんの」
『…えー、主任がうるさいので速やかな帰投を乞う。オーバー』
『待ってられなかったのかしらね』
「だろうな。司令も主任には勝てんようだな」
『アハハ、暑苦しいのが苦手なんだよ。あ…』
「『どうした?』」
『これ、全チャンネルになってた…』
『聞こえていたよ。シルト君、帰ったらコントロールルームへ来なさい』
『ご、ごめんなーい!』
「全くシルトは」
『ほんと馬鹿だわ』
帰投した俺達いや、シルトを待ち受けていたのはノックス司令のお説教だった。
フォルは開発主任であるジド・シキガミに捕まって打刀についてあれやこれやと聞かされていた。
俺はこっそりその場を離れてブルードラゴンとの交戦についてレポートを提出して隊長室へ戻ると。
「「隊長、お疲れ様」」
「はい、お疲れ様。じゃなくて、なんでお前達はロッカーで着替えないんだ!?」
「だってここの方が涼しいんだもん」
「ロッカールームの冷房効かないのよ」
「後で管理人に言っとくから早く着替えなさい」
「「はーい」」
「あ、そういえばナロック隊は戦没認定が出た。機体に残ったブラックボックスにはブルードラゴンとは違うもう1体のドラゴンが確認出来たようだ」
「そのドラゴンはどうしたのかしら?」
「他と交戦した形跡はなかったことから俺達が到着するまでの間に立ち去ったと見られている。結局の所何も掴んでないが、ナロック隊は通信も出来ぬ間にそのドラゴンに沈められたんではないかという話だ」
「一瞬にして3機を落とすなんて普通のドラゴンじゃないよね」
「そうよね。多分知性があるドラゴン…」
「考え中悪いんだが、早く着替えろよ」
「「自分から話振っといて」」
「あ、はい」
[UD03C ブルードラゴン]
3番目に確認されたドラゴンであり、30m級の巨体と青い鱗が特徴。
通常、四段階で脅威度を表し、ブルードラゴンは下から2番目のCに位置付けられており他と同様知性はなく、ただ人類や都市を襲うだけの行為を繰り返す。
攻撃手段はドラゴンブレス、爪撃等の格闘戦。