第17話 リヒト と 愉快な仲間達
清らかなる処女を、アヒンアヒン言わせる快楽洗脳魔眼ックスをお届けできなくて非常に残念です。
&誤字報告感謝です!
そして次の日は、幸いにして休日であった。
リヒトとしては、学院生活など長期休暇そのものではあったが、ともあれ復讐という道のりの途中。
折角の休みを利用して、部屋でする事とは。
「じゃあ始めるわ二人ともッ! 第一回、アタシと頼れる仲間達大会議開始!」
「じゃあじゃないですっ!? 会議ってなんですかっ!? というか、わたしを犯した翌日に、よくいけしゃあしゃあと仲間とか言えますよねっ!?」
「――――私一人で十分なのに」
うがー、と怒るルクレツィア。
然もあらん、魔王の子だとか、兄への復讐だとか、魔族は人と何が違うんだろう? などと疑問や後悔の念。
シーツを破棄しないといけない程、憎悪と愛に身も心も焦がされ。
なんかこのままでも、良いのでは? と流される女の本性を発揮しつつ、あー、これから憂鬱と淫靡で裏切りの日々が始まってしまうのね。
と諦観混じりの決心も束の間。
休日であるし、さぞ残酷な快楽に……、と覚悟した矢先がこれ。
拍子抜けという訳ではないが、今までの抑圧が大爆発である。
「――気にくわない事だけど、諦めなさいル某。リヒト……おほんっ、リヒターテ様はこういうお方よ」
「ル某って……せめてルクと呼んでくれませんか、カラードちゃん」
「ぶっ殺された「はい、カラード様! せめてルクでお願いしますっ!」
「………………なぁ、オマエ逞しくなってないか?」
どこかで見た光景、というより今は無き実家。
魔王城で兵達と、わいわいやってるのと同じ雰囲気。
首を傾げるリヒトに、ルクレツィアは答えた。
「……リヒターテの境遇や目的は理解しました」
「あ、とうとう様すら無くしたぞコイツ」
「魔族が人と同じというなら、戦争の意味も、兄への復讐も理解します」
「自棄になっている――、というより切り替えたっぽいですね、人間の貴族令嬢は外見より強かの様で」
「――聞いてください二人ともっ!?」
可愛い顔で怒鳴っても怖いはずが無いが、何故か昨日より増した女としての凄みに、リヒトとしては黙るしかない。
本当に何故、迫力が増したのか。
リヒトには解けない謎である。
「まったく……続けますよ。――ともかくです、わたしが謝罪しても何にもならない事は理解しました」
「それはけっこう、で? 何でそんな感じに?」
「リヒターテが悪いのです。貴男の理屈ならわたしは歴とした被害者。そして貴男が語ったように、わたしは流されて生きてきた女ですっ! ――――なら今も流されて何が悪いのでしょうっ!!」
「ちなみに聞きますが、人間達を裏切る事への罪悪感は?」
「無いといったら嘘になりますが。……そもそも、幾ら半分しか血が繋がっていないからって、肉親で結婚するとかっ!! 嫌に決まってますよ! 常識が無いんですよウチの一族はっ!! 各国の王族だって見て見ぬフリするしっ!!」
むきー、と叫ぶ(昨夜は)可愛らしい少女に、リヒトとカラードは、あ、うん、と頷くしか出来ない。
「お兄様への愛は家族愛! あくまで兄への愛ですっ! ならば――単身乗り込んで来て、強引に奪った美しい殿方に従っても良いのではないでしょうかっ!」
熱が籠もって地団駄まで、兄との結婚を悩む可愛そうな少女は何処に。
「というかっ! 何かとお兄様と比べられて鬱陶しかったですしっ! 昨晩はかなり気持ちよかったですし! ほら、わたし洗脳されてますしっ! リヒト様って格好いいですしっ! 理論武装完了ですっ! ――あ、わたしお妾さんでいいので」
一息で言い切ったのは流石に疲れたのか、ぜーはーぜーはーと、貴族令嬢らしからぬ荒い息のルクレツィア。
リヒトとカラードは顔を見合わせるしかない。
「…………なぁ、流石に予想外だったんだけど?」
「というか、我々の予想が甘かったのかと。代々勇者として最前線で戦う家系の者が、本当に流されるまま生きる弱いご令嬢な訳がなかった、という事ですね」
「はぁ~~、なるほどォ。本性を呼び覚ましちまったかァ……」
こうなればもう、逆に考えるしかない。
勇者と、その仲間達に詳しい者が此方側に付いた。
やけっぱちという気がしないでもないが、裏切る可能性は薄いだろう。
となれば、確かめる事はひとつ。
「ねぇルクレツィア? 俺――いや、アタシはアナタの兄を殺そうとしてるのだけれど? プラミアも毒牙にかけるつもりだし」
「兄が真に勇者であるなら、リヒトの」「――様をつけなさい」「――ゴホン、リヒト様の復讐で死ぬことはないでしょう。死ねばそれまで、哀れなわたしはリヒト王子の妾として気楽に暮らします」
「つまり、復讐に手を貸すと?」
「出来ることはしましょう。しかし、リヒト様が失敗した時に備え、洗脳されていたから、という体でお願いします」
「…………貴女、腐っても勇者の血筋だったようですね。無駄に逞しくて、追いつめれば追いつめられる程強くなる」
女って強い、リヒトはそう心に刻みつけた。
(しかし、これからどーすっかなァ。計画が狂ったぞおい、有利に進んでるのは確かだが)
本来の予定ならば、この会議に参加させて方針を聞かせ。
彼女の反応を見てから更に精神的な追いつめ、プラミア達に彼女の状態をそれとなく知らせて釣る。
(イケるか? コイツに演技を期待していいのか?)
そういう計画であったし、その為にルクレツィアにはリヒトへの攻撃制限をしていなかったのだ。
むむむと唸る女装魔眼使いは、王都で流行の下着とやらに話が脱線している二人に溜息ひとつ。
「……おーう、そろそろ話戻すぞーー」
「失礼しましたリヒト様、下着の色は何が良いでしょうか?」
「カラード様より胸は小さいけれど頑張りますっ!」
「黒のレースにしとけ、胸の大小じゃねぇ形が重要だ。――――じゃッ、なァい!! おら、これからの計画について話すぞッ! カラード! ルクレツィア! 先ずはおさらいしろッ」
リヒトの号令により、二人は背筋を延ばし答える。
何故、そんな急に仲が良くなっているのか。
女って分からねぇと、リヒトはボヤキつつ聞く。
「では、私達は魔王ナハトヴェール様の仇を取るため、憎き勇者への復讐の道を歩んでいる途中です」
「お兄様の弱みを握る、周囲の戦力を削ぐ、人々からの支援を打ち切らせる、悪評を流して孤立させる。そういった目的の第一歩として、わたしがリヒト様の女になりました。洗脳されているので逆らえません、クヤシイデス」
「ちょっとは悔しがって? んで、だ。あの男の事は後でじっくり聞くとして。――プラミアの弱点とかねぇのか?」
その問いに、ルクレツィアは少し困った顔をした。
そして、あれこれ迷ってカラードの用意した紅茶を啜り。
「…………………………知りません」
「知らねぇのかよッ!? その間はなんだったんだッ!?」
「はぁ。……大方、禁断の愛を強要される悲劇の少女でも気取って、流されるままに生きてたのでしょう。きっと性格や趣味嗜好の事以上は知らないのでしょう」
「……えへっ?」
可愛く首を傾げてみる元・哀れ少女に、リヒトとしては冷たい視線を送る他ない。
この分だと、勇者の情報についても詳しい所までは期待できない。
「あふんっ!? そ、その視線……、ちょっとゾクゾクしますぅ」
「良かったですねリヒト様、新たな仲間は新たな性癖にも目覚めた様ですよ」
「喜べるかそんなもんッ!? ルクレツィア! テメェこき使ってやるから、せめて肉体労働で役に立てよっ!!」
「あ、これでもまだお兄様の婚約者なので、実家の権威とか繋がりが使えますので、そちらの方向でお願いします」
「助かるけどさァ! それはマジで助かるんだけどさァ!! ああ、もうッ、次は王女を何とかするから、ペンダントを取り上げるのに動いて貰うからなッ!!」
と、第一回リヒトと頼れる仲間達大会議はぐだぐだに終わった。
ロクな収穫がなかったと、リヒトは気分転換がてら散歩ついでに食堂へ。
料理人を洗脳して、好きなときに間食を食べられるように手配である。
そして残されるは、――竿姉妹。
「ルク。リヒト様が居らっしゃらない良い機会なので、言うべき事を言っておきましょう」
「はい、カラード様」
二人っきりになった途端、冷徹な顔になったカラードにルクレツィアは警戒した。
彼女の勘では、この美しく妖しい白銀のメイドは決して逆らってはいけない人物だ。
ともすれば、魔眼を持つリヒト以上に。
「――安心しなさい、現段階では貴女が孕む事は無いでしょう。リヒト様の子種は、全部私が一滴残らず回収しました」
「…………成る程、了解致しました」
特段、感情の籠もらない言葉であったが。
それが故に、ルクレツィアは戦慄した。
目の前の存在には、敵わない、と。
(今後、どれだけ容姿を磨いてもカラード様には敵わないでしょう。聞けばあの魔法もカラード様の……、でも怖いのはそこではありません)
いくら魔法が得意だったからだと言って。
主人の復讐に寄り添う忠実な部下だからと言って。
それがどうして、主人が手込めにした女の腹から子種を取り出すのか。
どうして、――満足そうに己の下腹を撫でているのだろうか。
「そのぉ……カラード様? 質問があるのですが」
「良いでしょう、答えられる事なら答えます」
ルクレツィアは、己の勘を確かめるべく虎穴に入る。
中には危険しかないだろうが、この先を考えると把握していて損はない。
「もし、もしですよ? わたしが誰より先に孕んだり、リヒト様と結婚する事となったら――」「殺します」
即答であった。
「では、好きな人ができ――」「殺します」
またも即答であった。
「じゃあ」「殺します、リヒト様の前で八つ裂きにして、リヒト様の手足を食べて監禁します」
「…………」「…………」
ドロリと、熱く煮えたぎった溶岩が見えた。
底なし沼だったのかもしれない、例えるなら全てを飲み込む夜空の暗黒。
ルクレツィアは、即座に両手を上げて宣言した。
「わたしはカラード義姉様の忠実なる配下ですっ!」
「よろしい。しかるべき未来に辿り着いた暁には、魔王の妾としてそれなりに裕福な暮らしと、子を許しましょう」
「はいっ! あの馬の糞みたいな兄を殺すべく、全身全霊を尽くします!!」
もしかして決断を早まったのでは? そんな疑念をひしひしと抱きつつルクレツィアは。
カラードという女との力関係に全力で流された。
でぇじょうぶだ、シリアスさんはきっと帰ってくる。
あいるびーばっく。




