7-1. 白昼堂々
だれかが大声を上げている。
おれの体がゆすられている。
ああ、朝か。
「あと、じゅっぷん……」
と、寝返りを打った感触が、タタミにしてはやけにざらついていた。寝相が悪すぎて外まで行っちゃったか?なんて
あっほんとに外だ。
訳が分からない。飛び起きたおれの目に入ったのは、おれを取り囲む数人の知らない大人達。その間からのぞく、どこまでも広がる野原、はるか遠くの丸っこい山。全く見覚えの無い景色だ。とりあえず一番近くにいたあんちゃんにたずねてみる。
「すいません。ここ、どこですか?」
無言で手に持ったクワを向けられた。
面食らってまじまじ見つめてしまう。木でできた持ち手に、白いプラスチックみたいな刃。新鮮なにおいのする黒い土がこびりついている。まるで虫歯みたいだ。
それはどうでもいいのだけど、この人達は何がしたいのだろうか。この、やけにオシャレなファッションに日本人ばなれしたルックスの、農家さんっぽい人達は。
そのまま見つめ合うこと、多分二十分ぐらい。こっちからさらに話しかけてみたりしたけど、農家さん?達の間でひそひそ言うだけで返事してくれないし、立ち上がろうとしたらクワだけじゃなくてカマまでせまってきたからどうしようもなかった。
カマの刃も金属ではなく、とんでもなくでかい動物の爪、のような物に、研いだ……石?を差し込んである。ヒグマの爪だってこんなに大きくなかったはずだけど、一体なんの動物だろう。
おれがそうやってひまつぶしのような実はかなり大事なようなことを考えている間に、後ろから大勢の足音が聞こえてきた。そっと体の向きを変える。今度は追加で突きつけられる物は無かった。
この時初めて、さっきまでおれが背にしていた方向に家が建ち並んでいることに気づいて、この人達がどこから来たのかを察した。
今さらだけど腕をつねってみる。痛みまで再現されるなんてよくできた夢だな。
そうだよ、こんなの夢に決まってる。
「*****!***、******!」
さっぱり聞き取れなかった。後から来た人達の先頭にいるじいさんの発言だったけど、なまりがきついのとも違うような。まあ、目覚まし時計の音がするまでは付き合ってやってもいいか。
なんて思っていたら目の前の集団は回れ右して集落の方に帰っていってしまった。おれに農具を向けていた人達も一緒に。
一人になってようやく立ち上がることができた。青いジンベイにはだし、格好は寝た時のままだ。
目が覚めるまで何をしようか。あの集落にはあまり近づきたくない。
しかめた顔の前をふいに銀色に光る何かが横切った。
チョウチョだ。
ひらひらと、こっちへ来いと招く手のような飛び方につられて、自然と足をふみ出した。
ようやく1000字くらいになってきました。




