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梅雨の終わり、奇跡の始まり  作者: あららったったの
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3:夏希はため息をつき、 【6月29日 朝】

3

まだ誰もいない朝の教室で、うちのため息はつくたびに大きく響き、勉強ははかどらない。だいたい、こんな暑いのに朝から勉強なんてしてたら頭おかしくなっちゃうって。仕方ないよね。机の上のノートに目を移す。随分前にめくったページは、まだ半分も埋まっていない。またため息を響かせ、丁寧にそれを切り取る。両手で持って、くしゃくしゃにしようとして、やめた。紙飛行機。無性に折りたくなってきた。ノートを閉じて机のはじに置き、折り始める。ふと、文字が目に付いたので広げる。「長方形abcdを中点e、fを支点に90度に起こしてできる三角柱の…」しばらく考える。やっぱりわからない。再開。すぐに完成した。飛ばすか。と思ったとき、足音がした。びくっと身体が震えた。隠さなきゃ。とっさにそう思った。今思えばそんな必要はなかったのだけれど、慌てて紙飛行機をノートに挟む。バレないかな。なんだか恥ずかしい。顔が、体が火照る。緊張しながらドアを見つめていると、開いた。なんだ、きせきか。

「おっはよー!」

声がでかいな。機嫌がいい合図だ。

「おはようきせきちゃん、ごきげんですね」

うちが言ったら、きせきはなぜかふきだした。

「え?なんでよ?うち変なこと言った?」

紙飛行機?バレた?

「ちょっとね、デジャブでね。」

「なんの話だか…。きせきちゃんは元気ね。こっちは暑くてしょうがないってのに…」

紙飛行機のことがバレていないようで、なぜか安堵し、椅子に座りながら、机のすみのノート手に持ってで火照った自分の顔を仰ぎ始める。なんでこんな恥ずかしがってんのよ。次の瞬間、ノートから落ちた紙飛行機に気づかなかったのは、みことがきせきの後ろにあらわれたからだ。しかしノートに挟まれていた紙飛行機は空中で開き、綺麗な線を描いて数メートル飛んだ。まだ、誰も気づいていない。うちも、みことも、きせきも。

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