12:しくじった高田周斗を相棒のユーモアが迎え撃ち、 【6月29日 午後】
12
「はあ、なんだそれは。高田君」
バンの運転席に座る相棒、馬場が言う。
「だから」と俺はもう一度説明する。
馬場は納得していない。
「なんだそれは。そんな、アニメ映画みたいな展開あるか」
「どうゆうことだよ」
「お前は機械技師の少年か。俺は親方か」
「話が読めないんだが」
「そうか、そいつは光るペンダントでもしてたか」
「してなかった、と思うが」
「だってそいつは、例のそいつは無傷だったんだろ」
「少なくともそう見えたな」
「どうゆうことだよ、無傷なわけないだろ」
「だけど、血は出てなかったし、笑顔で、しかも結構な大声で俺にこう言ったぜ?『ごめんなさい、作業員のお兄さん』ってな」
「そのあとどうしたんだ」
「見ての通り、腕を骨折した」
「お前じゃねぇ、その、例のそいつだ」
「ああ、走ってったぜ?」
「ますます意味がわかんねえ。だいたいおかしらにどうやって説明するんだ。そんな冗談みたいなこと言ったら殺されるぞ」
「でも、事実だ」
「しかもお前は腕までポッキリしたんだろ。しかも両方」
「ああ」
「俺はアレは使えないんだぜ?」
「知っている」
「どうするんだよ」
「どうしような」
「とりあえずおかしらのところに行くぞ。だからその作業服早く脱いでスーツに着替えろ。着替えたら車、出すぞ」
「わかった」
俺が彼の後ろの座席で着替え始めると、彼はこう呟いた。
「40秒で支度しろ」
バックミラーを覗くと、彼のにやけた顔が見えた。
[次話:主人公たちは目的地に近づくが、そこは目的地ではなく、]