二夢話
スコープに目を通せば真ん中に十字線が見える。
照準を合わせて、指を引けば銃弾が的を抜く。空薬莢が排出され新たな弾を装填して次の的へ。
そんな簡略された動作を脳内でトレースすることしかできない。
実戦経験もなければ実際に撃つところを見たことがあるわけでもない俺にはそれが限界だ。
自宅から暗雲立ち込める外の景色を眺めながら何度も繰り返す。
そのうち共闘者に呼ばれ、自宅を後にする。
「今からあそこに向かう」
「ああ」
男の話を聞きながら、郊外を走る車内からまたしても景色を眺める。そこには黒と赤で塗りつぶされた都市部が不気味に浮かんで見えた。
「この辺りはあいつらは少ない。今はこぞって人の多い場所へと向かっているからな」
男が言う「あいつら」は車が通る道路脇にも何体かいた。
黒くて、粘つきがあるような。例えるなら腐敗した死体。ゾンビとかだろうか。
走行音に気づき、伏していた何体かが蠢くが緩慢な動作な奴らではさすがに今は追いつけない。
「おい、聞いているのか?」
「ああ」
「ちゃんと返事しろよな?じゃないと早々に撃っちまうぞ」
「その時は迷いなく、な」
「冗談はやめてくれ」
お互い世界の終焉のような空模様を映した乾いた笑いを漏らす。
突如現れた世界の終焉。それが始まってすでに四日を過ぎるところだった。