0に還元され、そして1になる
テーマ【結】
始まりは一つの言葉から。
水面に落ちた一滴の滴のように、どこまでも広がっていった。
それは次第に二つになり、三つになり。
波紋は重なり、新たな波を作った。
気が付くとそこは、無数の言葉で溢れていた。
ある者は、喜びを。
ある者は、悲しみを。
ある者は、狂気を。
ある者は、絶望を。
ある者は、感謝を。
同じものを見ているのに、同じものを考えられないのは、人の個が成せる業なのだろう。
故に、人は他に惹かれ。
故に、人は他を妬み。
故に、人は他と争い。
故に、人は他と未来を紡ぐのだろう。
いくつもの言葉は波紋となって、心を揺らす。
けれど、波紋は無限には広がれない。
拡散するにつれて、その勢いは弱まり、そして無に還る。
無数の波で賑わっていたここも、次第に静かに、元の平面へと戻っていく。
終わりはいずれやってくる。
誰にでも、なんにでも。
平等に。
けれど、それは悲しいことではない。
終わりがあるのだから、始まりがある。
我ながら安っぽいが言葉だが、
終わりのない物語なんて、つまらないだろう。
だから、これは必要な儀式。
次を始めるための、第一歩。
無となった水面を、僕の一言で最後に揺らす。
――ありがとう。そして、さようなら。
例え、この一幕が“結末”を迎えたとしても、ここで出会った縁は、この先も“結び”続けているのだから。
――だから、これからもよろしくお願いいたします。
【読了後に関して】
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