第16話「アイナのいないクエストを!」
「いた! モグラだ!」
季節は秋。場所は壁外。この街には毎年少し早めの雪が降るらしい
その理由はホワイトシュルー。生き物としての形はイズナが見た限りモグラに似ているのだそう。元々ホワイトシュルー以外にもレッドシュルーやグリーンシュルー、それにブラックシュルーと様々な群れが存在し、それぞれの色にあった被害をもたらすらしい。何故色分けシュルーが生まれたのか。どうやら少し離れた場所にに魔法に長けた街があり、そこで野菜などを栽培するにあたり魔法を使用する。その魔法で育った食べ物を食べ、たかが動物なのにも関わらず、人よりも高い魔力値を誇るそうな
「うおー! なんか穴から吹雪みたいなのが吹いてきたぞ!」
「タガヤ! こっちも吹き出したよ! ってぎゃああああああコートが少し凍ってるうう!」
ホワイトシュルーのホワイトとは氷属性魔法を扱うことが由来らしい。彼らは主に土の中を掘り進め、たまに顔を出しこちらを小馬鹿にしたかのように笑みを出す
「けどこんなにいるんだ! 全部退治すれば結構な額になるんじゃないのか!」
報酬は1匹討伐につき600コル、群れを壊滅させられれば討伐の頭数x15倍と跳ね上がる。こいつらのせいで若干早く来る冬を先伸ばせることから群れの壊滅で報酬が跳ね上がるらしい。ちなみに軽く予想だが今の土の中には50匹位で、壊滅させることが出来れば45000コルも報酬を得られることになる。……ってちょっと少なくない?
「こんなのじゃあいつまで経っても借金を返せないじゃないか!」
「今はそれどころじゃないってタガヤ! もうボクのコートが結構凍ってきちゃってるんだけどおおおああああああ」
なんでこいつこんなに狙われてんだよ
そんな疑問もすぐに解決されることになる
「タガヤ! あれを見てください!」
レナが指さす方向を見ると他に比べ少し大きめの風格であり、何故かサングラスを掛けたのホワイトシュルーが腹を抱えてイズナを笑っていた。いや元々声が出せない所からすると笑っていると言うよりもただただバカにしてきてるのかもしれない。
「イズナ! コートをひらひらさせてるからホワイトシュルーが下の穴から凍る風を送るんですよ! 脱ぐべきです!」
「これは脱がない! 今脱いだら中までこおり始めてるから超寒い!」
既に凍ってるコートに暖かさを求めるのもどうかと思うが、それよりもこいつらをどうやって討伐するのか……だ
「くっそ土ん中で動き回りやがって! こんなのどうやって討伐するんだよ。」
「相手はシュルーの中でのホワイトですので火属性魔法を得意としていたアイナがいてくれれっぴゃあああ!」
イズナのひらひらイジリが出来なくなったためかこちらへの攻撃もで始めたみたいだ
くっそ。アイナが必要だった訳はそれか! あの二日酔いめ!少しチョットを禁止にしてやる!
「タガヤ! あのずっと体を出して腹抱えて笑ってるボスみたいなやつなら攻撃できるんじゃっぴょおおおお」
そうだ。取り敢えず中で穴を開けては送風してきてるやつらは置いといて今顔を出してるあのボスみたいなやつをしばくべきか
「うおおおおお!」
全速力でボスに向かったところで初めて聞く声が聞こえた
「えっ何? 魔法使えないわけ? なら剣とかないの? なになに素手で本当にしばきに来るわけ?」
そう言えば俺たちさんにはまだ誰1人武器は……っておい! 今確かにこいつ喋ったぞっきえええええええ! 思ってたより風強くて冷てえ!
「はっは! おまいらのリアクション最高だわまじで!」
くっそ今の風のタイミングで距離をとられた!
攻撃するモノがないのなら今ここで調達するしかない!
「うおりゃあああ! タガヤ! アイツに何か……石でもを投げてぶつけよう!」
石を投げるだけじゃあスペルの効果で俺は当てれるが、当てたところでただ腕の力で当てただけじゃあいつを仕留める威力までは出ないだろう
「うおりゃあああ! タガヤ! そこの木の枝を折って中をつつけば今2体の手応えありましたよ!」
レナもめっちゃ必至だな
あの喋るサングラスより先に中のモグラを仕留めるのも悪くないが非効率的すぎるし狩り切ることは出来ないだろう
木と石? 棒と丸いもの。 なんかそんなスポーツあった気がするぞ! しかも俺ならアイツに当てられるはず!
丁度いい大きさ太さの木の枝と少し大きめのの石を拾い、左足をアイツに向け構える。左手で軽く石……ボールを放り、両手で木の枝……バットを持ち全力を持って打つ! 野球だ!
ゴンッ
「いってぇ! 何すんだコノヤロウ!」
さっきまで笑いこけてたやつにクリーンヒットすると近くの穴という穴から大量にモグラが出てき
「どうした?」
「何があった?」
「おやびんやられた?」
「やられてねえわ! 頭が痛えよ。少し中に入るう。」
続々と頭を出しておやびんの生存を確認次第また穴の中へ戻っていく
これだ!
「二人共! 今からモグラ叩きって言うのを教えてやるから何か今出てきたこいつらを1発で仕留められるような物を持て!」
それぞれ木の枝を拾いこちらによしと合図を送ってくる。俺はさっきおやびんとやらが入ってきた穴に注目をする。いつ出てきてももう一度当てられるはずだ。そしたらまたチビどもが頭を出す。そこをガツン。だ
「あっそれからあああああ!」
それからと何かを言おうと顔を出したのかもしれないが、出てきたところを直ぐにぶつける。すると案の定
「やられた?」
「おやびんがやられた?」
「とうとうやられた?」
出てきた。
「今だ! 出てきたヤツらを順番にどつき回せ!」
「どつき回せ……口が悪いですが今がチャンスというやつですね!」
「ああそうだ!口を動かさず腕を動かせ!いっぱい出てくるとこをどつき回せ! 経験値うめえええ!」
俺とレナがかなり討伐を勧め、かなり数を減らしたと思う
「ほらほらあと数匹とおやびんだけじゃないのかあ?」
俺の煽りにおやびんとやらが乗っかってくる
「おまいらぐへえ。」
どうやら今の一球で討伐出来たみたいだ。それに続き残党も綺麗に討伐をしてやった
クエストはどうにかクリアになったらしい。しゃべるモグラって不気味だな。さすが異世界ってところだ
「タガヤ、少し温度も戻ってきたね」
「おっ、そうだな。俺達が早めの冬を追いやってやったぜった感じだな」
「元々村人は冬は嫌いでも無いみたいですけどね」
「えっそうなの?」
それでこのクエストの報酬は低めの設定だったのか。借金返済のためちまちま頑張るしかないよな。
「お、レベルが9になってる。覚えられるスキルとかは相変わらず無しか。とほほ」
「イズナはレベルいくつになりました?スキルを覚えられるくらい上がったんじゃないですか?」
おっそうだとレナの質問の返事に耳を傾ける。こいつレベル1だったもんな
「討伐してないからレベルあがってないや、ざーんねん」
「なんで!? 折角の経験値うまうまだったのに」
「そうですよ、イズナならいいスキル覚えられそうですし早くレベルを上がってもらわないと」
「やだよ! 棒で殴るとかそんな残酷な事はさせないで!」
一瞬の沈黙が訪れる。こいう実はモンスターを狩るとかそういうのに向いてないのか
「そうは言っても冒険者だからできる限り討伐はしていかないと。」
「ううん。ごめん、討伐はするよ。ただ今回の討伐の仕方は個人的にどうしても。……ごめん」
確かに残酷ではあったよな。
「そうですよ。今回のタガヤは嫌な感じでした」
「そんなに?」
「はい」
キッパリ言うなぁ。
それからの帰り道、レナとイズナがワヤワヤ楽しげに話してる。
「所でヤキュウって何だったんですか」
「ヤキュウって言うのはー、異世界転移前の世界にあったスポーツだよ」
「そう言えばイズナ«は» 異世界転移してきましたもんね」
なんでここの「は」を強調するんだよ。あっさりこいつの異世界転移だけ認められて俺は嘘だと思ってるな。
そう言えば野球? 俺って記憶が無いキャラだったんじゃ?
今まで転移前のことを思い出そうとすると頭が痛くなったりしたが、この時初めて記憶のカケラの存在があることを知った
次話書く前に必ずひとつ前の話を改稿してます。
それからこの小説を書き始めた時期から読んでくださってる方は1話に変更がされてるので、御手数ですが1度目を通して頂けると幸いです