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私は我輩である

くっ殺から始まる異世界奇譚

作者: 星 茶仁予

微妙なエロ描写があります。苦手な方はご注意ください。

「くっ、殺せ!」


 そう言い放つ女騎士っぽいやつが、何故か目の前にいた。

 何を言っているかわからないと思うが、俺にも何が起こっているかわからない。俺はついさっきまで自宅でゲームをしていたと思う。その証拠に俺の服装はTシャツにトランクスだ。何度自分を見返してもその部屋着は変わらない。本来なら初対面の女の前に出るような服装ではないが、気づいたら目の前で女騎士っぽいやつが前述の言葉を叫んでいたのだ。不可抗力を主張したい。いや、しよう。


「あの」

「くっ、殺せ!」

「いや」

「さっさと殺せ!」

「だから」

「四の五の言わず、殺せ!」

「……」


 どうしよう。話が通じない。

 俺は、女騎士っぽい奴に話しかけようとしたが、ことごとく「殺せ!」で帰ってくる返事に辟易とした。対話を諦め、彼女をじっとりと見つめてみる。

 長めの黒髪をポニーテールにして、意志の強そうな目。要所を覆う露出度高めのビキニ鎧。そして、意外とでかい乳とむっちりとした尻。「殺せ!」としか言わないが、低めではスキーな声。鎖で繋がれているせいで丸見えな脇。

 こんな洞窟っぽいところに繋がれている割には小綺麗な女がそこにいた。

 その事に気づいた時、俺に悪魔がささやいた。


ん?コイツ結構かわいいんじゃね?殺すとか俺には無理くさいけど、動けないみたいだしエロいことなら、ヤリ放題じゃね?なんでかわからんけど人生の大チャンスじゃね?と。


 そうと決まれば即行動だ!


「おい、俺の名はゼンジだ!お前の名前は?」

「くっ、こ」

「お・ま・え・の・名・は?」

「くっ、リスティーヌ」


 奴のお馴染みになりつつあったセリフを食い気味に、一言一言力を込めて潰してやったら、存外素直に名前を吐いた。


「リスティーヌね。長いから二文字の名前にして」

「何だと!騎士の位をミエ子国騎士団から賜ったこの私の名を何故貴様が」

「いいから!変えろ」


 彼女の名前が存外長かったので呼びやすいよう短くしてもらおうと提案したら、なんか長々と自分語りしそうだったので、早々に話をぶった斬り命令してみる。


「うぅ、なんでこんなことに」

「さっさと」

「わかっている!ティーだ!ティーと呼べ!」

「うむ。ティーだな。よろしく」

「よろしくって」


 なんかティーが涙目で考え込んでいるが、俺としてはこれからエロいことをする奴の名前を知らないとかありえないと思っていたので、名前を確定させることができて満足だ。


さて、それでは早速……


「おい!待て!何を露出させているんだ!」

「…えっ?ああ悪い悪い。流石にこの状況ではな。ティーの体を触っていれば元気になr」

「聞いとらんわ!貴様、私にナニをしようとしている!?」

「ん?聞きたいのか?」

「言わなくていい!言わなく」

「まず、おっぱいを揉む!」

「言わなくていいと」

「次に、尻をこね回す!」

「おいぃぃぃ!」

「言葉が崩れてるぞ。そして」

「わかった!わかったから」

「最後にはティーを」

「貴様のような奴に純k」

「ここから連れ出して助ける」


「は?」


 途中まで世を儚んだような風情だったのに、何故かティーは鳩が豆鉄砲を食らったような顔になって固まった。









 そもそもの話、唐突に身の回りの環境が変化したせいか、そこまでのエロい気持ちはない。せっかくなので、この眼の前の乳と尻は楽しませてもらうが、このシチュエーションではヤる気が失せる。恩を売るついでに色々教えてもらうには、この何処かわからん所から脱出しなければ始まらないだろう。


ということを、都合のいい部分だけ抜き出して告げたところ、


「それなら何故脱いだ?」

「いや、あまりにも息子に反応がなくて、心配になってな。復活したらお相手願おうと思って」

「アホか!というかさっさと脱いだものを着けろ!そんなモノを乙女の前でブラブラ揺らすな!」

「ナニを揺らしていると?」

「このゲスがぁ!いいからさっさとパンツを」

「まぁ、そう急ぐな。まだティーにエロいことをしていない。パンツを穿くのはそれからでも遅くはないだろう?」

「まだ諦めてなかったのか!?」


ガチャガチャ


 当然だろうと思いつつ無視して、ティーの鎧を外していく。


「何故私まで脱がす!?」

「俺だけ裸なのは恥ずかしいだろう」

「だったら貴様が着ろぉぉ、、、もういやぁ、ぅぅ」


 なんか涙目に涙声が混じりだしたので、だんだん楽しくなってきた。

そして鎧を脱がす時、最初の方は抵抗(まぁ、鎖に繋がれている者の抵抗など無いに等しいが)していたが、最後の一枚を脱がす頃には弱々しく鎖を揺らすのみになっていた事を、ここに記しておこう。



「なあ、どうすればいいんだ?」

「ぅぅぅ、う?あ、ああ、確か隣室に鍵が保管されていると思う。壁に掛かったB7という鍵だ」

「何を言っている?どういうエロいことをして欲しいのか聞いたのに、何故鍵がどうとか言い出すんだ。全くもって空気を読めん騎士様だな、おい」

「貴様に言われたくないわ!」

「…裸で偉ぶっても説得力ないぞ?」

「貴様が脱がしたんだろうが!」

「うむ。脱がせた礼を言いたいなら、代わりに『ゼンジ様、私のおっぱい吸ってください』と言ってくれ」

「!!!……だ、誰が言うか!」

「さて、隣の部屋のB7か。誰も居ないと助かるな。まぁ、これだけ騒いで誰も来ないなら、近くに人はおらんと思うが」

「唐突にシリアスに戻るな!」


 全くうるさいことだ。命が懸かっている場面で、全裸のままツッコんでばかり、、、

 少しはしとやかさが欲しいものだな。


「おいィィィ!なんかものすごい失礼な事を考えてるだろう!」

「いきなり何だ?言いがかりを」

「言いがかりじゃねぇぇぇ!おもいっきり小声で口に出しとったわ!」

「おいおい、ヤ○ザみたいな口調になってるぞ?」

「誰のせいだ!っていうかヤ○ザって何なんだ!?」

「山にある草だよ」

「適当言ってんじゃねぇ!草がしゃべるか!おい、どこ行くんだ!?」


 なんかだんだん口調がおかしくなってきてる気がするティーはほっといて、脱出に必要な鍵、それにできたらティーが使うだろう武器も欲しい。女騎士なのだから戦えるだろう。ティーには出来る限り、おそらくいるだろうこの場所の主や衛兵を引きつけて貰わないと俺が逃げられない。未だ状況は分からないが、少なくともティーを捕まえた奴に見つかったら、俺が死ぬ可能性は高い。


……無理ゲーじゃね?


 うるさいのがいるのですぐに戻らず、少し隣室で考えていく。

牢屋は地下にあるイメージだから、仮にここを城の地下と推測する。そして鍵は見つかったが、武器はなかった。素手の上に全裸な男女が、武器も持たずに牢破り。かなり難しい条件だ。もはや、ティーにエロいことして『その間になんとかなるさ計画』を実施しようか迷うほど、無理ゲーの匂いがしてくる。既にそう考えてエロい事を色々シミュレーションし始めていた俺の目に、希望が飛び込んできた。


それは、俺の脱ぎ捨てたパンツだった。ソレを見た時に先ほど脱がしたティーの鎧、下着、俺のTシャツ・パンツ、脱獄(仮)、鎖、おっぱい、尻、と様々なモノが頭を流れていき、ついに具体的な作戦へと昇華した。


イヤ!武器は作ればいい!

そうだよ。俺が着てた服にパーツに分けた鎧を包んで持ち歩き、敵に投げつければいい。強そうな奴が来たら、パンツ(俺・ティーの二人分)で天国と地獄を味あわせてやる。


俺はパンツ(自分用)を拾い上げながら、ニヤリを笑いティーの元へ戻ることにした。











「うぐぅ、えぐ……ひっく」


ティーの前に戻ってくると、彼女は何故か泣いていた。手で拭えないため、ボロ泣きのせいで涙が溢れっぱなしである。泣いている女が最強と聞いたことがあるが、如何な美人だろうと号泣レベルまで行くとそこはかとなくブサイクだな。おそらく落涙までが最強の称号を得る泣きレベルだと個人的には思う。ともかくコレでは話にならないと思った俺はそんな彼女の頭に


そっと、持っていた自分のパンツをかぶせた。


「!!!!???」


 ソレを着て昨日から寝てたから、さぞや臭いのだろう。声も出せずに鎖をガチャガチャいわせて暴れるティー。俺はその光景を眺めて満足気に頷いていた。


「って、何をする!ブハッ、、、ゴホッ…臭いぃ!」


言葉を出したことで呼吸器が働き、空気と匂いを吸い込んでしまったのだろう。咳き込みながら悲鳴を上げるティーに俺は言い放った。


「騒々しいぞ。人が来たらどうするつもりだ」

「コホ、誰のせい…ゲホォ」

「何がいいたいかわからん。きちんと人語を話せ」

「…まず、ゴフ…これ、取って」


消え入りそうなティーの嘆願があったので、仕方なくパンツ(自分用)を剥ぎとった。


「自分から脱がせて欲しいとか、ひょっとしてティーは露出狂か?」

「あああああああ!!!……ゼヒュー、ゼェゼェ」


ちょっとしたジョークを言ったら、ティーはせっかくパンツ(自分用)を取ってやったのに、いきなり雄叫びを上げたかと思うと息切れしだした。


「何をやっているんだ、お前は?」


騎士とは思えないその姿に流石に呆れて、背中をさすってやるとこちらを見ながら無表情に聞いてきた。


「貴様は本当に人か?」

「は?人以外の何者でもないだろうよ。見ての通り」

「では聞くが、泣いている女にクサイパンツをかぶせるとか、何を考えてそんなことを?」

「脱出方法を思いついたから、実行の第一歩を踏み出そうと」

「その第一歩が私にパンツをかぶせることだと?」

「その通りだ」

「…ふ」

「ふ?」

「ふっざけぇるなあァァァァァァ!!」


またもや、今度は巻き舌風味に叫びだしたティーに困惑する。この美人さんは、話が通じなくなることが時にあるのが残念だ。仕方なく俺は、なだめることにした。


「まぁまぁ、俺のパンツの威力を試したかっただけなんだよ。いざとなった時の最終兵器その1(予定)だからな」

「だからって私で威力を試すな!しかも、パンツを剥ぎ取られて最初に目の前にあったモノが貴様のアレだぞ!」

「戦闘態勢に入ってないコレを見ても怖くはないだろう?」

「そういう問題ではない!乙女にそんなモノを見せるな!」

「フッ、何を言っている。お前など全裸の上に、男用のトランクスを顔にかぶっていたじゃないか。この変態女仮面が!」

「そr↑sgkwぃv!!!」


あまりにもおかしな事を言い出すので、思わず鼻で笑って、変態女仮面呼ばわりしてしまったのがまずかったのか、またしてもヒートアップしてしまった。時間がないかもしれないので早く脱出準備をしたいのだが、人語を話せる状態でないと打開策が打ち出せない。全く困った女騎士だ。俺は仕方なく一人で適当に放り投げていたティーの鎧パーツを、服で作った袋に詰めていった。











俺は縛った服を組み合わせて、リュックのように背負えるようにしていた頃には、ようやくティーも落ち着いてきていた。集めてきた鎧のパーツを、投げやすい順番に考えながら作った即席リュックに詰めていく。いつからかその作業をティーが見ていたが、覚悟を決めたように狂乱状態が嘘のようにおずおずと尋ねてきた。


「そ、それで、ぜ、ぜ、ゼンジは私を助けてくれるのか?」

「何故どもる?」

「うるさい。それでどうなんだ?」


うるさいと言いながらも、不安そうに聞いてくるのが楽しくて仕方がない。おちょくりたくて仕方がない。だが、ここでおちょくるとまた話が進まなくなるかもしれない。時間がどれだけあるのかもわからない中で、遊びすぎるのはまずいかもしれない。でも、鍵があった部屋で見つけた筆ペンで、ティーの腹に顔とか書いてみたい。ゼン○ーウーマンを創出したぞー!と雄叫びを上げて、ティーの反応を見てみたい。いかんいかん!誘惑に駆られるところだった。ここは、脱出に全力を尽くす場面だ。俺は考えなおした。


…でも……ちょっとくらいの寄り道はいいよね?


その直後に、これくらいならいいんじゃね?と、もう一度考えなおしたが……


「ぜぇぇんんんんんんじぃぃぃぃぃぃ!!!!」

「すまん。魔が差した」


 つい誘惑に駆られて、腹から胸にかけて各部位を使った顔を描いてしまった。ティーは俺と違って怒りに駆られているようだが、描いている最中は涙を流すほどに笑っていた。「や、やめてくれ!死ぬ!」といいながら、脇を耳に見立てる絵を書いている俺に懇願したほどだ。余程楽しかったのか、顔を描き終わり余韻を楽しむ俺が満足するまで荒い呼吸をしていたティーは、復活と同時に何気に初めて俺の名を呼(叫)んだ。




「よし!それでは助けを呼んでくる!」


 人体水墨画の文句が出そうな雰囲気だったので、急遽ゼ○ラーウーマンの雄叫びは取りやめにして、改めて脱出への第一歩を踏み出した。ティーには色々協力してもらったので、内心で感謝を捧げ、別れをハンドサインで示す(親指と人差し指、中指を立てるアレだ)。


「待て待て!私を解放してから行ってぇ!」


 というように軽く別れの真似事をすると、予想通りのいいリアクションが来た。イヤ、予想以上だ。思った以上に、この女騎士の縋る声は俺の中のナニカを刺激してくる。






《リスティーヌ視点》


「ん?一緒に来るの?」

「何故不思議そうに聞く!?鎖の鍵を貴様が持っているのに、私を置いていくのはどういう了見だ!」

「いやぁ、さっきも楽しそうだったし、鎖に繋がれていることに執着と快感を覚えてきたように見えたから」

「そんなわけ無かろう!貴様も男なら……曲がりなりにも一応男なら、一度助けるといった女ぐらい助けてみろ」

「男の前に色々修飾語をつけたのは」

「おしゃれだ!言葉の!私も女だからな!」

「………しかたない。鎖から解放したら、俺に絶対服従を誓うか?」

(コイツは何故解放に納得したのだ?コイツに関しては理解しないほうが無難かもしれん。口先だけで誓っておけば、後で反故にしてもコイツ以外誰も文句は言わないだろう)

「…わかった。ミエ子国の騎士リスティーヌが誓おう。今後、ゼンジを主と認め絶対服従を約束しよう」


その場の流れで、反古にする予定の誓いをしてしまったのは軽率だった。私の言葉が終わると同時に、体に描かれた屈辱の証の一部が光り出し、この世とは違う世界の住人が召喚された。


そう、契約の番人『天使』だ。


「「え?」」


奴は、落書きで辱めるふりをして契約の魔法陣を描いていたのだ。魔法など知らないと思い油断した。殆どが意味のない落書きだったからこそ、騎士たる私が『意味ある』陣を見落としてしまった。奴も動揺しているように見えるが、演技の線が濃厚だ。天使がどういう契約法をするかは知らないが、なんとか打開策を見つけられないものか…。

そんなことを考えていると、光が徐々に収まり天使から言葉が聞こえ出した。


『その主従契約は我が承認しよう』

『我が名はフェリポテウス、騎士の神ジャスティネスの属神なり』

『さあ、名乗り給え。それで契約は完了である』


何?まだ挽回のチャンスはあった。ここで名乗らなければ奴を主と認めなくていいということか!?しかし、名乗らないためにはどういう理由がある?…まずい、焦ってしまって理由が思い浮かばない。単純に名乗らなければ、契約はしなくていいかもしれないが鎖からの解放もないかもしれない。いや、コイツの性格の悪さから考えて、十中八九解放はなくなるだろう。


「わかった。俺の名はタチバナ ゼンジ。コイツの主だ」


天使召喚の直後は焦っているように見えたが、あれも演技だったらしい。一瞬偶然に召喚陣に対応してしまったかと思ったが、今名乗りを上げたこの男は、焦りのかけらすら見えず堂々としている。私を指差す指先にも震えのようなものは見受けられない。


ヤバイヤバイヤバイ!!!


思いつかない!理由!このままでは私はコイツの肉奴隷に!?


イヤダイヤダイヤダ!!!


『従者たる者の名を』


 ああああああああああああああ!!


「従者も俺だ。タチバナ ゼンジ」

『主従契約で主と従者が同一のものとは前例がない』


ああああああああああああああ、あ???


「前例がないだけで、できるんだろ?もしかしてできないのか?」


奴の言葉が理解できない。

黙っていれば、私を隷属できるのはコイツの頭の回転なら理解しているだろう。短い付き合いだが、コイツに何度も苦渋を味あわされた私だからこそ、その理解力があることは知っている。それなのに、あっさり気負いなく拒否した。


『できることはできる』

『だが、その意味は何もない』

『貴重な機会をただ捨てることになるだけだ』


この契約が、コイツにとってどういう意味を持つのかはわからない。迷う素振りすらなく断ったのが、何を意味するのかもわからない。


しかし、これでいいのか?悪魔のようであれ、助けてもらう相手におんぶに抱っこ。鎖を外すのも、ここからの脱出準備まで全てコイツが解決。その上、女としてそれなりに見れる(と思う)私を隷属できるチャンスをフイにして、契約天使と無駄契約にしてしまおうとしている。


私にはコイツが惜しいと思う程度の魅力すらないと?

私を裸に剥いても、コイツのシンボルが垂れ下がっていたのを思い出す。目の前で泣いている私に、男用のパンツをかぶせてきたのを思い出す。私の胴体に筆ペンで落書きして笑死寸前に追い込み、それを見て笑いに笑ったコイツを思い出す。


思い出す思い出す思い出す……


私の中に沸々としたものが湧き出してくる。

コレほどバカにされて?その上で女とはいえ騎士なのに散々助けられて?私をモノにする機会をあっさり投げ捨てて?このまま助けられて鼻で笑われる?


あっ、ダメ!リスティーヌ!それは抑えなくては……


内なる声が制止してくるが、感情の波がそれを許さない。この悪魔のような男に、一泡吹かせなくては気がすまない。今、横で天使との問答をしている男にズタズタにされた女のプライドを回復するにはどうすればいい?…コイツは私を隷属するのを嫌がっている?じゃあもしかして、私を隷属させたらコイツにダメージを与えられる?確か名前は、タチバナ ゼンジ?


私は次々に流れる思考で、ただコイツにダメージを与える方法を考え続け、その答えにたどり着いた時感極まって、問答している天使と男の間に割り込み宣言した!


「我が名はミエ子国の騎士リスティーヌ、タチバナ ゼンジを主とし絶対服従を誓う!」

『承認しよう』


唖然としているゼンジを置き去りに契約が承認され、天使が光の中に帰っていく。それと同時に、私とゼンジの頭に色違いの光が吸い込まれ、締め付けられるような感覚の後にゼンジが私の主になった事を実感した。










………ついカッとなってやった。今は後悔している。
















《エピローグ》


その後、ゼンジとリスティーヌの二人は、とある貴族の城だった出会いの場所を、全裸のまま脱出し、何故か手元に残っていた靴下のみを履いてリスティーヌの先導で王城に急行した。王都内から王城まで、堂々と全裸(靴下付き)で闊歩する二人は、王への謁見時すら服を着ることを拒んだ勇者として後の世に語り草となった。



ただ、王城到着後の二人を見たものはいない。わいせつ物陳列罪で二人して逮捕されたとも、牢獄プレイにハマってしまったとも、王城の総員を動員してすら誰もが手こずる逃走力で王城内を逃げ続けたとも言われるが、当時の王城関係者は頑として「そんなヤツラ、見たことがない」と判で押したように口にしていたという。ただミエ子国のカヴァー始末記で、王都内を凱旋中リスティーヌが「こんな姿で登城することになろうとは……くっ、殺せ」とつぶやいた記述が残るのみである。


お読み下さりありがとうございました。

……その、本当にお読み下さりました?

…………なんか、すいませんでしたm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[一言] なんか、すごいモノ見たって感じ。すごいしょうもないモノを……!変態が出てくる作品は数あれど、真正の変態を主人公に据える作品って初めて見た気がする。だって、主人公に恥じらいがかけらも感じられな…
[一言] な…なんてゲスな主人公 そして チョロインも驚く 自ら地雷元につっこみ わざわざ地雷を踏みつけるヒロイン
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