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第3話

リアルが忙しく中々更新が出来ませんでした。

今回は短くなってしまいました。


『これがミラン王国が導入した新型戦闘機です。最近ミラン王国は急激な軍備拡張を進めており我が国に重大な影響を与えています』


「全く!! なんたる事だ!!」


細い見た目に似合わず大声を張り上げる男。

マルロー人民共和国の三大軍需企業の一つフィース・アビエーションのトップであるフィース・リーヴィは周囲の人の目も憚らず声を上げた。

彼は自らの企業が売り込む筈だった市場を新しく転移してきたウィルキア連邦なる国の企業に横から掠め取られた事に激怒していた。

マハロー人民共和国に遥かに劣る技術力の国に武器輸出によって稼いでいたのだが彼らが新たに目をつけたミラン王国に戦闘機の販売の話を持ちかけたところ既に購入先が決まっているから要らないと言われたのだ。

当然転移以来今まで自分達より格下と見ていた相手に断られた事など無かった担当者は怒りを覚えたが仮にも営業を任されている人間である。

直ぐに機体の性能で選んだ方が後の為だし低価格で提供出来ることを押し立てて購入を迫ったがミラン王国の担当者は首を縦に振らなかった。

更に追い討ちをかけるように戦闘機以外も艦艇や戦闘車両等もウィルキア連邦の別の企業に取られてしまった。

簡単に言えば、計画通りにならなかった事に腹を立てた。

だが更に腹立たしいのはそのウィルキア製戦闘機がかなりの高性能である事だった。

マハロー人民共和国が輸出しているFiー12Eという機体はノーズエアインテークが特徴的な機体でレーダーライティング誘導式空対空ミサイルを四発搭載出来る。

最高速度は時速1,400kmの高性能機であったがウィルキア製戦闘機はそれを超えていた。

ウィルキア製戦闘機のIEー5は速度は時速1,700kmでマハロー製戦闘機ではノーズエアインテークの為に限定的な性能の物しか搭載出来なかった機上レーダーを搭載し、赤外線誘導式の空対空ミサイルを搭載出来る。

その他の上昇力、旋回性、等でも負けた。

そうして導入予定先に導入中止を打診され、売上が下がり始めている。


「しかも政府は新たな機体の輸出を許可しないと抜かしやがって!!」


危機感を抱いたフィース社はマハロー政府に新たな機体の輸出の許可を要請したが政府は今までの旧式機の輸出による利益を忘れられず、現在輸出している機体の近代化改修にとどめるように通達してきた。

たが近代化改修を続けてきたFiー12Eは既に拡張性の限界に達していた。

現在マハロー軍で採用されている中で最も旧式の機体を輸出する話をしても返事を濁らすだけだった。


「こうなったら政府に圧力をかけるぞ。これ以上話を濁らすなら新型の納入を見送るぞとな」


「しかし、政府からの制裁を受けるかもしれません」


フィースは血走った目を意見した社員へ向けて言い放つ。


「馬鹿か貴様は、誰が我が社単独でやると言った。他の企業にも話を持ちかけるんだ。他の所も市場を取られても何ら対策をしない政府に怒っているはずだ」


その後直ぐに他の企業にも話が回り一斉に政府への圧力をかけた。

政府は大慌てで方針転換をして各企業へ旧式にとどめるならば輸出を許可するとした。

これにより新たな兵器がアルストロ共和国を始めとした親マハロー諸国へ大量に輸出された。


「ウィルキア連邦とかいう新入りにもこの世界のルールを教えてやらねばいかんな」


フィースは細く微笑む。

ウィルキア連邦を囲む情勢は厳しいものとなってきていた。




発:マハロー人民共和国陸軍 参謀本部

宛:マハロー人民共和国陸軍 第24歩兵師団


第24歩兵師団は本命令書の開封をもって師団の全部隊をアシバルへの速やかなる移動を命じる。

尚、アシバルにて新たに砲兵一個連隊を増備し、現地の第3方面軍指揮下に入る事。



第24歩兵師団、師団長バートルミー中将は上級司令部から渡された命令書を見て思わず眉を顰める。

第24歩兵師団は現在の任地に来てからまだ一年しか経っていない。

それなのに今度はマハローの西端に当たる現在地から東端に移動をしなければならない。

現在の第24歩兵師団の編成内容は主力の歩兵(自動車化歩兵)に砲兵、工兵、少数の戦車等を合わせた約17,000人で構成された部隊で標準的な歩兵師団である。

重量物である戦車や重砲、数の多い兵員は列車で移動させるにしてもトラック等は自走するしかなく、早く出発しなければ間に合わないかも知れない。

現在は6月3日なので後27日間で移動完了し現地の第3方面軍ともコンタクトを取らねばならず、やる事は山積みである。


「中々無茶な事を言いますね」


隣に居た第24歩兵師団参謀長のマドック大佐は辛辣な言葉をなんてことのない顔で言い放った。


「他の方面軍でも部隊を抽出して第3方面軍に送っているようです。恐らく、新しく転移して来たウィルキア連邦への対策と思われます」


「分かってるだけでどの位送られている?」


「第1方面軍の第14歩兵師団、第2方面軍の第36、42歩兵師団、第5方面軍の第4機甲師団と我々第24歩兵師団の合計5個師団と現地第3方面軍の第2機甲師団と第25歩兵師団で合計7個師団ですよ。あと空軍の方でも大規模な航空兵力の派遣をするようです。今度はウィルキアと戦争でも始めるつもりなんでしょうかね」


マドック大佐は手に持った書類を見ながら言った。

マドック大佐は余り感情を表に出さない性格の為重大な事でも淡々と言う。

今回もウィルキア国境を管轄する第3方面軍への増援も機甲師団を含めて7個師団もの大兵力が展開されるという事は戦争準備と見ても不思議ではないほどなのだ。


「ある筋の情報ですと、ウィルキア製の兵器が今まで我が国が輸出していた兵器を上回る兵器を輸出している為に我が国の兵器が売れなくなっているとか」


心中で本国の上層部に居座る老害共を罵る。

自分達の利益の為に軍需企業と結託して権力を握り、利益の為に周辺国を侵略した。

今度は自分達の兵器が売れなくなったからその原因の国を潰そうとしているのか。

軍も兵器の供給源を握られ、上層部も賄賂によって当てにならない。

確かに企業の連中は高性能な兵器を量産しているが、戦争の度に人員を損耗し我々第24師団も全回の戦争で最激戦区を戦い抜き、結果師団総兵数の三割を失うという大損害を被った。

元々人口が多く、国民皆兵制を取っているマハローはまだ余裕があるものの広くなった占領地には治安維持、国境防衛の為に大量の兵力を必要とし尚且つ兵士が補充されたばかりの部隊で新たな敵を作る。

政府や企業の連中は兵器が高性能であれば負ける事はないと豪語しているが新兵教練を視察したら強力になった代わりに複雑でデリケートな存在になった兵器に戸惑う新兵が沢山いる事を私は知っている。


「第4機甲師団は既に移動を開始して現在戦車を列車に積み込んでます。我々は明日に出発する事になるでしょう」


「分かった、それで準備しよう。各隊にも連絡をしておいてくれ」


この国の未来に暗雲が立ち込めていくように思えてならなかった。




ウィルキア海軍西部方面艦隊。

ウィルキア海軍にある三個の方面艦隊の内の一つでその名の通りウィルキア連邦の西方の海を活動海域としている。

その西部方面艦隊の司令部が置かれているのがプリモルスクという都市でありこの方面で一番の港である。

元々は大きな湾の奥にあったのだが転移後は湾に接していた隣国が消え去りかなり浅い湾になってしまったもののウィルキアの重要拠点であることは変わりは無い。

現在、そのプリモルスクの港湾に沢山の人が集まっている。

その人達はカメラを手にした親子であったり、テレビ局のスタッフであったりと様々であるが皆一様に海を見つめていた。

その先にはウィルキアのでは無い軍艦が入港中であった。

それは同盟国となったインバーラント海軍の訪問艦隊であり、ウィルキア国民にとって初めて見る機会のある異世界の人間を一目見ようと全国から人が集まっていた。

そんな中、注目の的となっている当のインバーラント艦隊は群衆にも驚いたがプリモルスクに停泊しているウィルキア海軍艦艇に驚いていた。


「おい見ろよ、マハローの見てぇなデケェ空母だ。」


「あっちを見てみろ!! かなりの数の艦が泊まってるぞ!!」


インバーラント艦隊のブリッジクルーは巨大な港に停泊する大量の艦艇を珍しそうに見回している。

インバーラントにも空母はあるがマハローよりも旧式でジェット艦載機の運用経験もまだ浅い。

この艦隊ら同盟国となったウィルキアへの訪問と共にウィルキア海軍との合同演習、更には供与艦艇の選定等様々な任務を帯びて来航してきている。


「先週には正式な経済協定も結ばれて両国で企業の活動が活発化してきているが、軍事的にも結び付きを強くして行けばインバーラントも安泰だ」


訪問艦隊旗艦のランカスター級巡洋艦のケントと16型駆逐艦と言われる駆逐艦3隻と陸軍部隊を輸送している輸送艦が1隻で構成された艦隊である。

そしてその直ぐ後ろに続く艦隊が一際多くの目を引いていた。

全長179.6m、満載排水量7500tと比較的大型のランカスター級巡洋艦よりも更に大きい船体を持つ艦はミラン王国のクルーベ級戦艦、クルーベで、戦艦と名のつくように全長251mに基準排水量45000tという巨艦であり、45口径38cm四連装砲を三基搭載しながら速力30ktの高速戦艦でミラン王国海軍の象徴的戦艦である。

ミラン王国は未だミサイル兵装は理論上でしかなく、主力艦も戦艦や重巡洋艦といった艦であり、航空機も一応ジェット戦闘機を運用しているものの未だジェット戦闘機について未開の部分が多く、性能も圧倒的にインバーラント、マハローに劣る。

その為、周辺国に対して圧倒的不利であると認識したミラン王国は優秀な人材を選りすぐりウィルキア連邦へ留学させ先進技術を学ばせる事で自国の技術力向上を図っている。


「あの戦艦……クルーベだっけ? 戦艦なんて俺の親父の時代の船だと思ってたが、実際間近で見ると頼もしいものだな」


波を切り裂き海上を突き進むその姿はどんなに技術が進歩しても、船乗り達だけでなく何も知らない民間人にも頼もしさを感じさせる。


「確かウィルキアで大規模改修を行ってミサイルや新型レーダーを積み込むんだろ? ミラン王国はまだ戦艦を退役させるつもりは無いようだからまた見る機会はありそうだぞ」


この世界の中で劣勢であることを自覚しているミラン王国はウィルキアの技術による艦艇等の装備の近代化、その後ウィルキアとの共同開発による技術の蓄積から国産化を目指しており、ウィルキア連邦もそれを承知している。

艦艇供与と同時にミラン王国海軍の保有する一部艦艇を近代化してミサイルや高性能レーダーの搭載を急いでいる。


「俺たちの艦も新しくならねぇかなぁ」


「新型艦の建造計画も見直しされてるからもしかしたら最新鋭艦に乗れるかもな」


ブリッジからウィルキア海軍の艦艇眺め、自分もあんな艦に乗れるかも知れないという淡い希望を抱きながら作業に戻った。


誤字等の報告、感想をお待ちしてます。

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