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混乱混戦

 オラクルとザラインの交戦は、早三時間を過ぎようとしていた。


「トレス、フィーロ。左右に回り込め!」

「了解!」

これまで動きを見せなかったザラインが、突然襲ってきた。あまりにも突然だった為、戦況は俺たちオラクルの方が悪い。向こうの情報があまりにも欠けていた。

 黄色の機体はスピリット・カトレリー。鋭い刃物が両足に固定してある。オレンジ色のスピリットは、アイアス。防御力に長けており、左腕には大きな盾が装備してある。そして、最大の攻撃力を持っているのが金色の機体。スピリット・ルーインだ。レーザービームの破壊力は並じゃない。

 ナイトが除名処分となり、今回の戦いから参戦したナイトの後任フィーロには、荷が重すぎる敵だった。俺とトレスでなんとかフィーロの分まで本来ならばカバーしなければならないのだが、あまりにも相手が強かった。

「ルーインの後方射撃に気をつけろ!」

その直後、強烈なビームが後方から放たれる。撃ってきたのはルーインだ。俺は空中でそれを避けると、すぐさま銃口をルーインに向け、発砲した。しかし、それも交わされる。そしてそのまま俺の機体に向けて再びビームを放ってきた。交わした際に体勢を崩していた俺は、銃撃によってその攻撃を打破して直撃を妨げた。

「アヴェンジャー、被弾!」

ブリッジからの通信が入る。アヴェンジャー……フィーロの機体だ。初戦がこんな激戦では無理もない。俺もトレスもそれぞれ少しずつだが被弾を許している。

「フィーロ、大丈夫か!」

「大丈夫だ……先輩」

声には張りがある。まだ行けるだろう。だが、この戦況を覆すことまで出来るだろうか。相手はこちらが思っていたよりもはるかに強い。さらに、これまで動きがなかった分、相手の情報もほとんどないのが痛いところだ。

「くっ……こんなときに、ナイトが居たら!」

最年少パイロットのナイトは、優秀な奴だった。まさか裏切るなんて思いもしなかったが、今さらあのとき強引にでもオラクルに連れて帰ればよかったなんて思ってみても遅い。この場にナイトの存在を探してみるだけ無駄だった。

「先輩!」

そのときだ。今求めていた者の声が聞こえた気がした。だが、そんな訳はない。俺はかぶりを振り、戦いに集中した。


 キィィィン……っ。


 高速エンジン音が響き渡り、突如としてモニターにアラームが鳴り響いた。アンノウン機体がこちらに近づいてきている。それも、一機ではない。七機だ。アライブとデスの機体が現れた。

「先輩、リーゼン先輩! 応答願います!」

「ナイト……本当にナイトなのか!?」

「はい!」

俺に向かって放たれたビームを、打ち返して現れた赤黒い機体。デス・ブラッドを思わせる機体が俺の目の前に現れた。

「ナイト……何故ここにっ!?」

トレスは敵の攻撃を受け止めながらナイトに通信を送った。

「この戦争を終わらせるために来ました。先輩、もう無意味な戦いはやめてください!」

「無意味だと?」

ナイトは敵に背を向け、俺の方へ向き直った。ルーインとナイトの間には、アライブ機が入り込み、交戦しはじめた。シーザスも二機飛んでいる。




 先輩方に戦いを止めるよう呼びかけるのは俺の使命だと思っていた。オラクルで世話になっていた先輩たちを落とすつもりもない。また、ザラインの機体を落としたいとも思わない。双方共に引くよう、呼びかける必要がある。

 レンカの作戦はこうだ。俺が先輩たちを説得し、ザラインを説得するのはスズカの役目だった、スズカはザラインから来たものだからだ。

 そして、他のメンバー。シーアを筆頭に、セーラ、レンカ、ロイド、パレスが誰もが撃ち落とされないよう飛行を続けることになっている。

「先輩、この戦争では平和は築けないんです! この戦争の終わりには、勝者による支配がはじまるだけなんです!」

「ナイト……なぜそんなことを言う。オラクルが統一すればいいじゃないか。それで戦争は終わるんだ」

俺は必死になって呼びかけた。一刻も早く、この無駄な争いを止めさせるために……。

「それではいけないんです! 平等な自由がなくなってしまう! 先輩ならわかってくれるでしょう!?」

この無線はトレス先輩にも、俺の知らないもう一機のデスの機体にも響いている。

「ナイト……」

何かを考えるような声でトレス先輩は口を開いた。

「確かに、そうかもしれない」

「トレス先輩!」

俺は思わず歓喜の声をあげた。少しずつだが、想いは伝わっている。そう、感じることができた。

 俺の後ろはシーアが着いて守ってくれている。だから俺は安心して先輩方の説得に集中することができた。




「セーラ、三時の方向からビーム! 回避!」

「はい!」

僕らはふたりでタッグを組み、スピリット・ルーインの動きを抑えようと必死だった。だが、恐ろしく強い。ふたりがかりで挑んでようやく動きを止めている感じだ。

「全機体に照準を合わせて……」

僕はパネルを取り出すと、すぐさまオラクルとザラインの機体の腕に向けて照準を合わせた。そして、ミサイルを発射する。全機とはいかなかったが、いくつかは機体に命中した。戦闘力を削ぐことは必要だ。

「あまり無理はしないでくださいね、シーアさん」

レンカさんからの通信だった。僕は「はい」と答えると、再び照準を合わせるべく、パネルをたたき始めた。

「皆さん、どうか争いを止めてください。この先にあるものは、真の平和などではありません。何者かに支配される世界が生まれるだけです」

レンカの機体は、全機体、艦隊に呼びかけできるようなシステムが組まれていた。争い重視ではなく、こうして訴えるために造られた機体といっても過言ではないものだ。

「クロエ、ロイド。アイアスの動きを封じるぞ」

クロイ少尉はクロエとロイドさんを率いてスピリット・アイアスというオレンジ色の機体の動きを止める行動に移っていた。

 ザラインはこれまでまるで動きを見せなかったから、どんな機体がどれだけあるのか、僕らは知る由もなかった。そのため、この戦場に来て急遽レンカさんが配置を決めた。

 最も破壊力を持ち、優れた機体は金色に輝く機体、ルーインだと判明すると、すぐに僕とセーラが相対するよう命令がくだされた。そして、防御力重視のオレンジ色の機体、アイアスには、クロイ少尉率いるシーザス二機と、ロイドさんの機体、デス・トリスタンが当てられた。

 そして、チェルさんとパレスさんという方が、鋭い刃を持ったスピリット・カトレリーを相手にすることになった。レンカさんは戦わず、フレイアから停戦を訴えかけ続けていた。

 現在ピースメイルを指揮しているのはイチイ伍長だ。後方から援助に回っている。

「墜ちろ」

ルーインから強烈なビームが発せられた。それに対して僕は回避すると共に、こちらもビームを発動するためにチャージし、ビームを撃ちかえした。そしてすぐさまビームサーベルを取り出し、ルーインに向かって急発進した。すると、それに対応するように、ルーインもビームサーベルを取り出し、僕らの機体の間で火花が散った。

「シーア!」

さらに、回転しながらセーラが飛んできた。その勢いのままつっ込むつもりなのだろう。俺は押し返すと相手との間に距離を置いた……その瞬間に、セーラがビームサーベルで切り込んだ。相手の腕に傷が入る。そして、すぐさまセーラも後退した。僕が次の攻撃に移ろうとしていることを察したんだろう。

 僕は新しい機体の性能を確かめながら、ミサイルを射出した。六発出たミサイルを、ルーインは器用に交わしていく。それだけでも並のパイロットではないことが分かる。

「ナイトたちはまだ説得できないのかな」

「交戦が続いているから……おそらく」

スズカさんもまた説得が続いているんだろう。一筋縄ではいかないようだ。

「誰かを撃って、誰かを撃たれて……それを繰り返した先には、憎しみや悲しみしか残りません。そのことに気づいてください。どうか、争いを止めてください」

レンカさんの必死の呼びかけも続いていた。レンカさんは、放たれる長距離型攻撃を回避しながら通信していた。



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