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今年こそはと勇ましく

作者: 瀬川潮

 元旦は、雪だった。

「おや?」

 大場守だいば・まもるは、届いたばかりの年賀状を見て思わず漏らした。

 何と、天木初音あまき・はつねから年賀状が届いているのだ。しかも、「2020年、新年明けましておめでとう」などと書いてある。

 当然、今年は2010年だ。

 ははは、間違えやがって。相変わらず十年早い奴だなどと思ってお年玉くじの印刷してある年数を見る。

 すると、「2020年」と印刷されている。

「バカな」

 ほかの年賀状を確認すると、いずれも「2010年」。この天木の年賀状だけ、違うのだ。数字だけではない。切手部分の印刷もイノシシの絵だったりする。ほかのはすべて寅のイラストだというのに。

(未来からの手紙? いや、そんなバカな)

 あわてて天木に電話した。が、つながらない。当然だ。高校二年生だった当時は、彼女はPHSを使っていた。今その会社はすでにPHSから撤退して携帯電話のみにしている。番号が生きているはずはない。

 天木初音。

 当時、大場が付き合っていた同級生。結婚を、強く望んでいた。

「十年早い」

 別れた、理由だ。

 大場としては、愛していたし将来的に結婚しても良かった。ただ、彼女の望みはあまりに早かった。

「しかし、一体なぜ今頃になって」

 天木とは、別れて高校を卒業してから会っていない。年賀状を裏返してみると、びっしり文字が書かれていた。

 内容は、大場と天木が結婚して、ようやく子どもが生まれたこと。女の子で、名前は「まもり」と命名したこと。そして天木が妊娠してすぐに急逝した大場に無事の出産を報告するため、過去の大場に年賀状を書いて報せたこと。それらが丁寧な文字で書かれていた。

「守クン、いつも私に『十年早い』って言ってたものね。十年前の守クンに報告しても、いいよね」

 と結んでいた。

 いや、もう一文。

「2010年の有馬記念の当たり馬券は、3-8だから」

 と。

「一体、どういうことだ?」

 思わずつぶやく大場。

 この年賀状は、悪戯ではないのか。

 悪戯にしては手が込みすぎている。

 しかし、容易に信じることができる内容ではない。それよりなにより、未来から過去に手紙が届くのか。

(仮に、未来から過去に届いたとすると、俺は天木と結婚し、子どもができ、その子どもを見ることなく死ぬのか)

 すべては、謎である。

 一応、郵便局に問い合わせても芳しい回答は得られなかった。

 そうなると、判別する手がかりは一つ。

 日本競馬の、その年最後の重賞競争、有馬記念。

「有馬に、懸ける」

 ちなみに大場。競馬好きで毎年有馬記念に賭けている。

 今年は、意気込みが違った。



   おしまい

 ふらっと、瀬川です。


 他サイトに発表したことのある旧作品です。

 たしか、実際に2010年の1月1日にアップしたはず。年賀のごあいさつ代わりに。だもので今回は大晦日でのアップです。

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