過去と未來と
ごめんなさい。
とりあえず三話同時更新です。
お詫びはまたいずれ…
わたしの名前は、ハーティア・クリスタル。
最北の大陸にある、妖精の郷に生まれ育った。
そして、その前。
わたしの前世での名前は、織音詩音。
日本のとある料亭の一人娘だった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※
わたしは、生まれながらに才能に満ち溢れた子どもだった。
授業だけ聞いていればテストでも満点をとることが出来たし、球技や陸上競技でも負けたことはなかった。
ただ、ひとつだけ苦手なモノがあった。
それが、音楽だった。
わたしには音楽の才能はなかった。
いや、音感もなく、音の違いもよくわからない、そう、音楽が出来ないという才能ならあったのかもしれない。
小学校の頃、皆がリコーダーで曲を吹いているなか、わたしはずっと、音階を出せるように努力し続けた。
「詩音、お前本当に音楽出来ないんだな?
逆にどうして吹けないのかがわかんねぇよ」
これは、その時の音楽教師の発言だ。
まってくもってその通り。
なぜ、わたしはリコーダーを吹けないのか、歌の授業でもわたしの音痴ぶりは相当なものだった。
「おい詩音!!音を外すなよ!!お前のせいでいちいち授業が止まって、こっちだって調子狂うんだよ!!」
音楽を楽しみにしていた同級生には、遂には苛められるようになっていった。
「詩音、貴女音楽が苦手なの?」
通知表をみせると、お母さんは驚いたようにそう言った。
「貴女は、音楽が嫌いなの?」
わたしは即座に首を横に振った。
音楽が悪いのではなく、わたしが悪いのだ。
幼心なみに、そう思っていた。
「じゃあ、音楽教室に通ってみる?」
この時わたしは、なんと答えたのだろうか。
そして、音楽教室に通い始めると、衝撃を受けた。
そこには、とても多くの楽器が置いてあり、一人一人が出す音は、何故だかわたしの胸の奥にまで響いてきて、わたしはそこで泣いていた。
お母さんは笑っていたが、音楽教室の先生は困ったようにあたふたしていた。
なぜわたしは泣いたのだろう。
それからだ。
わたしが音楽にハマっていったのは。
わたしは音楽をひたすらし続けた。
学校では、音楽以外の授業中に吹くと怒られるので、休み時間には必ずリコーダーを吹いた。
家に帰るときでも吹いたし、家の中でも吹いた。
そして、それでもわたしはあまり上手くならなかった。
しかし、少しでも上達していくことが、堪らなく嬉しかった。
音楽教室の先生は、自分が教えるのが下手だからだと言うが、これはどう見てもわたしが悪い。
そして、ある日唐突に音楽が出来るようになっていった。
それからは、他のものなんて二の次三の次とばかりに音楽に明け暮れた。
別に学力が低下することもなく、両親共に嬉しそうにわたしの成長を見守ってくれていた。
そんなある日、事件は怒った。
わたしが中学二年生のころ、料亭で、ヤクザの組長同士の話し合いが行われた。
私たちの料亭ならよくあることで、わたしたちはいつも通りに料理を運び、そそくさと退散した。
しかし、そこからはいつも通りではなかった。
組長どうしで、喧嘩が始まったのだ。
そして、遂に発砲音が聞こえてきた。
「詩音、お母さんは止めにいってくるね?たまにあることだし、直ぐに戻るから、いい子で待っててね♪」
待ってよ……行かないでよ、お母さん……
わたしがそう思っても、恐怖で立つことすらままならず、わたしはお母さんの背中を見つめていた。
しばらくして、男の人たちの怒鳴り声があがり、しかし直ぐに発砲音はしなくなった。
お母さんが止めに入ったら、流れ弾がお母さんの脳天に当たり、一瞬で、その人生に幕をおろしたらしい。
その時のことは、あまり覚えていない。
ヤクザがどうなったのかもどうでもよかった。
ただわたしは、死んでいるお母さんの前で涙を流しながら、お母さんの好きだった歌を、静かに歌い続けていた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※
「お、母、さん……」
「……辛くても、時に人は構わず進まなければならない。残酷なものよね?」
クラリスは、寝ているハーティアの頭を、優しく撫でていた。
その顔には、慈愛と悲しみに彩られていた。
「クラリスさんは、ハーティアを連れていくのですか?」
クラリスの後ろに立っていたフランは、少し不安そうにしている。
「いいえ、クラリスを連れていきません。フラン、わたしは少し出ますので、ハーティアを見ていてください」
「クラリスさん!」
何処かに行こうとするクラリスを、フランは悲しそうに呼び止めた。
「また、突然いなくなったりはしないですよね!?」
クラリスは、少し困ったように微笑んだ。
「ええ、もし何処かに行くときは、挨拶くらいはしていくわ。だから、悲しそうな顔をしちゃダメです。貴女はハーティアの先生でしょう?」
「はい!わかりました」
「ならよろしい。直ぐに戻るから、しっかり見ててあげなさい」
そう言い、クラリスは何処かに向かっていった。
「なぜ、貴女がここにいる?
『不幸と絶望の魔女』!!」
男は、両手に魔力を込め、何時でも攻撃出来るように臨戦態勢を整えた。
「そう恐い顔をしないで。
わたしはただ、恩を返しに来ただけです」
話しているのは、クラリスと、ハーティアの父、ガイル・クリスタルだ。
「恩、だと?」
「ええ、ラストメア・クリスタルは、わたしの恩人です。彼女は覚えていないでしょうが、わたしは、彼女に救われました」
ガイルは、苦虫を噛み潰したような顔で思案した。
「……空白の、歴史のことか?」
「その通りです。わたしはラストメアを救おうとここに来ました。しかし彼女は、自身を結界にしようとしていて、流石のわたしも止められなかった」
「当たり前だ。カーラの力があるのにどうにか出来るなど、いくら魔女でも不可能だ」
「わたしは、不可能を可能にしてきました。だから、わたしはまだラストメアを救うつもりでいます」
ガイルは、不可能なことに対して、此方に希望を持たせようとするクラリスに、激しい怒りを帯びた瞳で睨みつけた。
「馬鹿なことを言うな!!結界化した者を元に戻すなど、たとえ神であろうと不可能だ!!」
「わたしは、一度もラストメアが結界化したなどとは言っていません」
「……なに?」
「わたしは、ラストメアの体を結晶に包み込み、ラストメアが結界化するのを阻止することに成功しました。
結晶になったラストメアは、確かに結界と同化しているけど、しかしラストメアの魂も残っている、とても不安定な状態です。
だから、ラストメアはまだ死んではいません」
「待ってくれ、理解が追いつけない。
……ラストメアは、まだ生きているのか?」
「そうなります」
「……しかし、カーラはどうした?
そんなことをすれば、カーラに消されてもおかしくはないはずだ」
「……ここからは、世界の核心に触れることになります。それでも、聞きますか?」
「……いや、やめておこう。
……それで?用件はそれだけじゃあないんだろ?」
「……はい、率直に言います。
ハーティアちゃんを、私たちに預けて貰えないでしょうか?」
「……なぜだ?」
「ハーティアちゃんは、『外側の存在』です。この世界の加護を受けていません。
恐らく、異世界の、それも、上級神の加護を受けているでしょう」
「なに!?……ならば、なぜ、ハーティアはいきている?」
「ハーティアをラストメアから取り上げたのは、私だからです」
「……ああ、得心がいった」
「ですが、カーラがああなった以上、ハーティアはこの郷にいては危険です。
どうか、わたしにハーティアちゃんを、預けて下さい!お願いします!!」
クラリスは、固い地面に、痛烈に頭を叩きつけながら土下座をした。
その様子を見たガイルは、思わず目を瞠った。
「なぜ、なぜそこまでする?
なぜ、俺たちの娘の為にそこまでするのだ?
恩があるからか?」
クラリスは、少し悲しそうに首を横に振った。
「いいえ、わたしは、多くの悲しみを見てきました。でも、もううんざりなんです。
わたしはただ、みんなが笑顔で暮らせる世界を創りたいだけです」
「……とても、魔女の発言だとは思えないな」
「いえいえ、そのために世界に喧嘩を売っているのです。充分に、わたしは魔女でしょう」
「そうだな……それで、ハーティアをこれからどうするつもりだ?」
「基本的には本人の意思に任せるつもりですが、とりあえず、音楽活動をしてもらいたいですね」
「音楽、活、動?」
「ええ、音楽の良さを広めることです」
「……ハハハハハ、それは、ハーティアが適任だな……いいだろう、ハーティアを、よろしくお願いします」
「任されました」
「……しかし、貴女は本当に、不幸と絶望の魔女なのか疑いたくなるな」
「……いえ、これは、わたしの、もうひとつの名称です」
「ただいま、フラン」
「あっ、おかえりなさい、クラリスさん」
フランは、ハーティアの上から素早く退いてクラリスを迎えた。
「……フラン?貴女何をしようとしていたの?」
「え!?い、いえ!別に何も……」
明らかに動揺しているフランに、クラリスは思わずため息をついた。
「貴女、まだ可愛い女の子に興奮する癖、治っていないの?」
「いえいえ!?もうすっかり完治しましたよ!?
可愛いとは思っても、興奮なんてしませんって!!」
「ではなぜ、ハーティアの上に跨がっていたのかしら?」
「こ、この前ハーティアに、虐められて、あのときの興ふ、いえ、屈辱を今こそ晴らそうかと……」
「もういいわ、フラン、貴女ってそんな人だったのね……」
クラリスは、とても残念な者を見る目でフランを見た。
「よくないです!!誤解なんです!!」
「前は十二歳くらいで、今では五歳の子どもにまで……貴女は何処に向かっているのかしら?」
「違います!!わたしはそんな趣味ありません!!って言うか、クラリスさんもハーティアのあれを食らってみれば分かります!!私なんて気絶したくらいなんですから!!」
「ごめんなさい、わたしはいたってノーマルなの。貴女のようなアブノーマルの世界にわたしを誘うのをやめて下さい、不快です」
「辛辣!?クラリスさんいつも話す度に口が悪くなってます!!」
「あら?何か聞こえたかしら?ここにはわたしとハーティアしかいないはずなのに…」
「とうとう存在否定!?もうこの人本当になんなんだ!?」
その時、フランの顔に、クラリスの脚が降り下ろされた。
「ふぎゅ!?」
「あら?結構手応え、いえ、脚応えのある虫も居たものね?一撃で潰れないなんて…」
顔を蹴られ、踏みつけられていながら、フランは不敵に笑っていた。
「……クラリスさん、パンツ見えてます」
「え?きゃぁぁぁあ!?」
クラリスはスカートを履いていたにも関わらず、フランを踏んでいたため、フランからクラリスのパンツは丸見えになっていたのだ。
「クラリスさん、可愛い顔して、パンツは大人ですね~」
「う、うるさい変態!!わ、わたしはこれ以上大きくならないのよ!?下着くらいは大人になってもいいじゃない!!」
「見た目も結構大人ですけどね」
「幼女趣味の痴女からみれば、わたしたちは誰だって大人よ!!」
「し、静かに、ハーティアが目を覚ましそうです」
クラリスは、とても不機嫌そうに、ハーティアが目覚めるのを待った。
「嘘です」
「貴様~!!」
二人が争っている間に、ハーティアは一人目を覚ましていた。
「お、母、さん……?」
フラン先生キャラ崩壊……
こっちが素です。




