お誕生日……
三話同時更新です。
お詫びはまたいずれ…
こんにちはみなさん、ハーティアです。
突然ですが、捕捉説明として妖精のお話しをさせて頂きたいと思います。
まず妖精とは、肉体が1割程度、あとは魔力で構成された生き物の総称だそうです。
もともと人間だったエアという少女がいて、その少女の美しさに惚れた風の精霊王がなんちゃらかんちゃらして、妖精が誕生したそうです。
細かくは、時間の都合上省かせてもらいます。
さて、なんでわたしが今いそいそとしているかと言うと、今日はお母さんの誕生日なんです。
わたしは、前にお母さんから貰ったオルゴールのようなものを作りたかったのですが、まだまだ実力不足なため、結界を張ることは出来ますが、箱を開けたら結界が出るように設定なんて高等技術、今のわたしには到底不可能です。
なので、お母さんが出掛けてる間にフラン先生とお家を飾りつけして、誕生日プレゼントには、わたしの前世の曲の一つ、幻想即興曲をトライルで、この世界風にアレンジして聞いてもらおうと思っています。
殆ど魔力で構成されているわたしたちの体は、なんと記憶を魔力に染み込ませ、その魔力を体に馴染ませると、いつでもその記憶を引き出せるのです!
お母さんも大切な記憶を魔力に染み込ませるので、わたしのプレゼントもしっかりと保存してくれると嬉しいですね~。
「フラン大先生、紙をこう丸くして、糊でくっつけるの!で、次の紙をこうするの、すると…ほら、こうなるの!これを繋げて天井に、こんな感じになるように張るの!!」
「ふむふむ、わたしの知っている誕生日とは少し違うんだな」
この世界の誕生日は、おめでとうと告げ、人によってはお祝いの品を渡したりするくらいです。
お誕生会なんてやらないのです!!
「それはそうなの!それより早く会場を作るの!!お母さんが帰ってきちゃうの!!」
「ああ、そうだったな。じゃあわたしはこの紙を輪っかで繋ぎ合わせておく」
「わたしはお料理をするの!!」
自慢ではありませんが、前世でわたしの実家は料亭で、わたしは幼稚園の頃から料理をしてきましたし、わたしの料理をお店で出したことだってあったんですよ?
「君の料理は、なかなかの味だった。まさか五歳児が料理をするなんて、正直吃驚したよ」
「えっへんなの!!じゃああとは頼んだの!!」
「ああ、任された」
わたしは急いでお台所へと向かいました。
「ただいま~♪」
パアーンパアーン!!お母さんが家の扉を開けた瞬間、この日のために作ったクラッカーを放ちました。
クラッカーは、火魔石という、強い衝撃を与えると爆発する石のことで、今回はそれを粉末状にし、魔力で擬似的に衝撃を与えたのです。
「きゃあ!?え?え?」
「お母さん、お誕生日おめでとう!!なの!!」
お母さんはしばらくポカーンとして、はっと気づいたように驚きました。
「まぁ!!ありがとうハーティア、フラン先生も♪お父さんももうすぐ帰って来ますから、夕飯を作らなきゃ」
その言葉を聞き、わたしとフラン大先生はお互いに顔を見合わせ、ニヤリとほくそ笑みました。
「まぁまぁお母さん、とりあえず、ダイニングに行きましょうなの!!」
「そうですよラスさん。とりあえず一旦落ち着いてからにしたらどうですか?」
………フラン大先生、演技へた。
いつものフラン大先生からは考えられないほど笑顔で、とても綺麗なのですが、今は余計です。
「そ~お?じゃあダイニングに行こうかしら~♪」
ほら、お母さんも勘づいています。
スキップまでするなんて、あれは絶対次があると知って楽しみにしている時の行動です。
だからフラン大先生、ドヤ顔でこちらを見ないで下さい。
「うわぁ………なにこれ……」
お母さんは、私たちが飾りつけしたダイニングをみて、なぜかへたりこんでしまいました。
「お、お母さん?なにか、駄目なことを、私たちがしちゃったの?」
お母さんは、涙を流しながら首を横にふりました。
「いいえ、わたしたち妖精は、ここまで盛大に祝うことなんて、ないから、ここまでしゅ、祝福して、もらえるなんて、お、思っても、見なかったから、だから、だから、っ嬉しくって」
「驚くのはまだ早いの!実は、飾りつけはフラン大先生が、お料理はわたしがしたの!!」
「っ!!」
お母さんは泣きすぎて、もう声にもなっていませんでした。
フラン大先生は分かっていたようで、驚きもせずただただ泣いています。
「オーイ、今帰ったぞ~!!」
お父さんが帰ってきた!!
「お帰りなのお父さん!!あのね、実は……」
わたしが、簡単に説明すると、お父さんも泣いてしまいました。
「ハーティア、お母さんはな、生まれてすぐに両親をなくしたんだ」
お父さんは、お母さんの過去について話し出しました。
「それでお母さんは、親戚の家に預けられたのだが、その親戚はあまり家にいることがなく、お母さんは、俺と会うまで誕生日を知らなかったんだ。
それで昔話したんだが、お母さんの夢は、精一杯の祝福って言ってたんだ。
俺が何をしても駄目だったんだが、そうか、貴重なものじゃなくて、お母さんが欲しかったのは、『想い』だったんだな」
そういうことだそうです。
「じゃあお父さんも早くいかないと駄目なの!!」
わたしはお父さんを引き連れて、ダイニングに向かいました。
「お母さん、お父さんもきたの」
お母さんはまだ泣いていました。
「だ、旦那様、見てください、これ」
「………ああ、全て手作りだな。これで、夢は叶ったのか?」
「ええ、ええ、叶いました、叶いましたよ…」
「ほらお父さん、この料理わたしが作ったの!!」
お父さんとお母さんは、自分の世界に入り込んでいました。
「フラン大先生、どうする?なの」
「ああ、じゃああの曲を弾くとしようか?」
「そうするの!」
そしてわたしたちは、フラン大先生の作った結界のステージの上に、トライルを手に持ち、演奏することにしました。
「お母さん!!あのね、お誕生日プレゼントであげられるものは、今はこれしかないの!!
わたしたちの曲を、聞いて下さい、なの。
お母さんに捧げます。曲名は『トライルのための二重奏』なの」
そしてわたしたちは、お母さんのために考えた始めの曲を弾きました。
「お次は、わたしの独奏で、曲名は……曲名は、『大切な記憶』です、なの」
幻想即興曲を弾く予定でしたが、お母さんのあの喜びようを見たら、新しく曲を思いつき、この曲を弾くしかない気がしました。
「う、うぅぅぅう、うぇぇぇん………」
お母さんは、演奏の邪魔をしないように声を抑えて泣いています。
お父さんは、お母さんを慰めつつ、自身も泣いています。
フラン大先生は、しきりに『クラリスさん、クラリスさん……』と、クラリスさんの名前を呟きながら地面にひれ伏して泣いています。
(カオスなの)
そう思いつつも、曲に魔力を、そして想いをのせ、出せる限りの、自分の持てる全てを音にのせ、みんなに届けました。
「………いつまで泣いているの?料理が腐っちゃうの」
曲を弾き終えてみれば、みんなひれ伏して泣いています。
わたしのイメージでは、
ダイニングに入って、
『まぁ、よく頑張ったわね、ハーティア』
『お母さん、お誕生日おめでとうなの!!』
となり、そのあとお父さんが帰ってきたらみんなでご飯を食べて、演奏して終わり、って感じだと思っていたのですが……
「ええ、ええ、食べましょう、ぐすっ、食べましょう」
「ああ、食べよう、ぐすっ、食べよう」
「そうだな、食べよう、ぐすっ、食べよう」
なんでしょう?調子が狂いますね。
「それじゃあ、命に感謝を」
「「「命に感謝を」」」
お食事も終え、喜んで貰えたのは嬉しいのだけれど、このしんみりした空気は、いつまで続くの?
「ねぇ、お母さん?」
「なぁに?ハーティア」
「なんでわたしの部屋で、わたしの布団で寝ているの?」
わたしが寝ようと自室に行くと、お母さんがわたしの布団の中に入っていました。
「だって、こんなに嬉しいことがあったあとなのよ?嬉しいことが起こると、昔からよく不安になって、一人じゃ眠れないのよね~。だから、ハーティアと一緒に寝ようかなって♪」
「まぁ、今日はお母さんのお誕生日だから、特別に許すの」
お母さんは、とても綺麗で、頭もよくて、優しくて、だけどとっても寂しがり家さんで、そして、わたしのお母さんなんです。
「うふふ♪ありがとう、ハーティア」
わたしは頭を撫でられ、気恥ずかしさを隠すようにお母さんに抱きつき、そのまま眠りに落ちました。
「おやすみなさい、ハーティア……」
お母さんの声が遠ざかっていきます。
………そして、これが、お母さんと話す、最後の会話でした。




