私の1日:前編
こんにちは、ハーティアです。
母のお腹の中にいるときは、心臓のおとが聞こえ、心地よいリズムですごい安心感がありました。
……それにしても、わたしを取り出した産婆さんは、とっても特徴的な方でした。
まぁ、いいでしょう。それで今回は、私の日常をお伝えしようかと思っています。
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私の朝は早いです。朝、ワイバーンのわめき声で目が覚めます。ええ、ワニみたいな鳥みたいな変な竜です。
そして、起きたら頭を覚醒させるために、鼻唄を口ずさみます!!
「〜〜〜〜♪〜〜〜♪」
いい調子です。今日も音楽は素晴らしい♪
「あらあら♪元気ねぇ、ハーティア?」
いつの間にかお母さんが部屋に入って来ていました。
「あ〜〜う〜〜〜〜♪」
私は歌いながらお母さんに手を振ります。いつもなら歌を中断するのですが、今日はもうちょっとで終わるので、私のこの迸るパトスを止めることが出来ませんでした。
「うわぁ、お歌が上手なのね!!さすが私たちの娘だわ♪」
なかなか好評ですね〜、これは、もう一曲歌うしかありません!!
「ラス〜〜、ハーティア〜〜〜〜、飯だぞ〜〜〜〜〜〜」
私のご飯はお母さんの母乳ですが、お母さんがご飯を食べてからです。
「じゃあ行きましょうか」
そういって、私を抱き上げるお母さん。女性らしい柔らかな体は、触れていてとても気持ちよく、体に吸い付くようです。
「では、食べようか。命に感謝を」
「命に感謝を」「あうあうあ〜」
私もとりあえず合わせます。
「まぁ、ハーティアったら」
「物覚えも早いようだな」
「ええ、今朝なんて自作の歌を歌っていたのよ?」
「ほぅ?ハーティア、俺にも聞かせてくれないか?」
「あいあいあ〜!!」
なんと、お父さんにも歌の披露の場が巡って来たようです。
「〜〜〜〜♪〜〜〜〜〜♪」
「……………」
お父さんは、ご飯を食べながら嬉しそうにしています。だって、顔が蕩けてるんですよ?
「ふふふっ♪」
お母さんはご機嫌です。ああ、私も歌を歌えて幸せです………♪
「では、命に感謝を」
「命に感謝を」「あううあうあ〜」
すると、お父さんとお母さんがお互いに顔を見合せ、笑い出しました。
ああ、この家族の奏でる温もりのメロディも、とても素晴らしいです♪
ご飯を食べ終わり、私は今、お母さんに抱っこされながら、郷のなかをお散歩中です。
「ハーティア、ここがジェームスさんのお家で、お隣さんが………」
お母さんは、お散歩中に見える建物一つ一つの説明を私に説明しています。
これは毎日行われているので、私も流石にだいたいの内容は覚えました。
この体の記憶力は、なかなかのもののようです。
「……で、あそこが戦闘訓練施設。あそこが魔法訓練施設。そして、ハーティアちゃんお待ちかね〜、あそこが音楽施設よ♪」
「ふおぉぉぉぉぉおッッ!!」
そうなんです!!まさか、音楽施設があるなんて思いませんでした!!
結界というものが、音を遮断しているらしく、外には音が一切漏れませんが、中に入れば、いろんな楽器の音色や歌が聞こえてきます♪
「まぁ!ハーティアはここに来るといつも目を輝かせちゃって♪」
楽しそうにこちらを見ているお母さんは、私のほっぺに唇を落としました。
「さぁ、それじゃあ今日も見学しましょうね〜」
「あ〜〜い♪」
さあ、いざいかん!!
中に入ると、途端に音の嵐がお出迎えです。
この、入った瞬間は音に馴れてないためか耳鳴りが酷く、何も聞こえなくなりますが、少しすれば、色んな音が聞こえてきて、私の心は踊り出しそうです!
「うあぁぁぁあう!!」
私はお母さんに、早く行こうと急かします。
「はいはい、じゃあ音楽教室に行きましょうか?」
「あ〜〜い♪」
そうなんです、この郷は、音楽の郷らしく、美人美女や、イケメンか否かも完璧に音楽の腕で決まるそうです。
そ、し、て♪なんと、音楽教室は、生まれて半年ほどたてば参加可能で、毎朝歌っていた私を音楽教室に入れてあげようと、お母さんが登録してくれてたのです!!
そして、今日は初めての音楽教室。私、ワクワクが止まりません♪
「ようこそ、音楽教室へ。私はここで音楽教師をしている、フラン・ハートだ」
「これはどうもご丁寧に♪私は登録したハーティアの母の、ラストメア・クリスタルと申します」
「あ〜いあえふ!!」
私はしっかり挨拶をしました。だって、挨拶って大切ですからね♪
「ほぅ?その年で挨拶が出来るか」
「ええ、…フラン先生、実は、この子を私からとりあげて下さったのは、クラリス・ハートさんなんです」
あの特徴的な方のことですね…
「なんだと!?……あの人は、あの人は元気にしていたか?」
「ええ、老婆の姿に変装していましたが、とってもお茶目な方でした♪」
お母さんは出産の時のことを思い出したのか、クスクスと笑っています。
「そうか……あの人がわざわざこの郷に足を運んだということは、あの人は運命に……いやでも…いや、答えはあの人だけが知ればいいことだ。クラリス・ハートの情報提供、感謝する」
「いえいえ、私も、クラリスさんのことは貴女に伝えるべきだと思っていましたし、クラリスさんのことを、誰かに聞いて欲しかったですしね♪」
「まぁいずれにしろ、クラリスさんが来たということは、相当危ない出産だったんだな…」
「ええ、火山口で出産しました」
いつまで続くのでしょうか?私は音楽をお預けにされて、空気を読んで黙ってはいますが、ソロソロ爆発しちゃうぞ☆
「はぁ!?バカじゃないの!?ってことは、カーラを火山へよんだということか!?」
「旦那様がいましたから♪」
お母さんは、お父さんを思い出したのか一人で蕩けそうな顔をしています。
「ったく、ガイルがいなければ、あそこからここまで1日はかかるんだぞ?」
「ええ、その点では、この子には平謝りしました」
そうなんです。私たちが家に着いたとき、いきなりお父さんとお母さんが、ものすごい勢いで泣きながら謝ってきてビックリしました。
「ま、まぁそれはおいといて、ゴホンッ!!それでは、ハーティアの好きな楽器を選ばせようか」
そう言うとフラン先生は、やっと、やっと楽器を空中から出してきました。
「さぁハーティア、好きな楽器を選ぶといい」
私の前にはたくさんの楽器が!!その中には、ヴァイオリンはやっぱりありません。しかーし!!ヴィオラの様なものがありました!!
私が即行でヴィオラのようなものを手にするとフラン先生は、
「……君も、クラリスさんと同じものを…」
ぶつぶつ言ってないで、話を進めて欲しいです。
「…じゃあ、ハーティア君はまだ持てないので、ここでの授業は、私がこのトライルをひくから、しっかりと聞いておくこと。よろしいか?」
「あいッ!!」
「よーしいい返事だ。それではラストメアさん、四時間程ですが、娘さんをお預かりします」
「よろしくお願いしますね」
どうやらここは、保育所もかねているらしい。
「あっ、あと、ラストメアではなく、ラスと呼んでください♪」
そう言われ、どうしたものかと戸惑っているフラン先生を見て、お母さんはクスクスと笑い、私の前に来て、私を抱えあげました。
「じゃあ私は行くけど、あとで迎えに来るから大人しくてるのよ?」
「あいッ!」
私が元気よく返事をすると、お母さんはまたクスクス笑いながら、私の頭をなで、ほっぺにキスをすると、陽気に手を振りながら、フラン先生に軽く会釈して去っていきました。
「君のお母さんは、クラリスさんよりお茶目だな」
正直話私はクラリスさんより楽器の方に興味があるので、早くひいて欲しいです。
そう私の思いを伝えるべく、私はトライルを指差し、目で訴えかけました。
「ああ、分かった分かった。今からひくよ。コホン、では、今から聞いて頂きます曲は、トライルの基本的な曲で、『ユルストの落日』」
「ハーティア、迎えに来たわよ〜………あれ?」
お母さんが迎えに来てくれましたが、私はそれどころではありませんでした。
フラン先生、いえ、フラン大先生の奏でた『ユルストの落日』は、とても、とても悲しい曲でした。
ユルストが、ユルストが〜〜〜〜!!うわぁ〜〜〜〜〜〜ん!!
「ああ、来ましたか、ラスさん」
フラン大先生は、泣きじゃくる私にひきつった顔をすぐに直し、お母さんに会釈しました。
「え?ああ、それよりこれは………」
お母さんがとっても戸惑っています。当たり前ですね。ただ曲を聞いているだけの授業で泣きじゃくる娘を見て、困惑しない人は多分いないでしょう。
「私はただ、『ユルストの落日』を聞かせただけなのだが、なぜだかだんだん目に涙をためだして、最後にはこの通り……」
だって!!この曲もさることながら、フラン大先生のあの情緒溢れる気持ちの乗ったそれは、私の心を強く、強く揺さぶってくるんですよ?
ああ、これだから音楽は、素晴らしいんです。
「なるほど、つまりハーティアは、とても感受性が強いんですね?『ユルストの落日』は確かに基本的な曲ですが、同時にとても悲しい曲ですものね?」
「ええ、そうなんだろうな。ただ、少々強すぎる気がするがな…」
そういってフラン大先生は、私の頭をなでます。
だんだん私も落ち着いてきたところで、お母さんは私を抱えあげ、帰宅することになりました。
「それではフランさん、また明日」
「ああ、明日は明るい曲にしよう」
「あうあうあ〜!!」
私は、フラン大先生が見えなくなるまで手を振り続けました。
後編へ続く
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