大先生は、大先生だから大先生
フラン先生大活躍!?
ハーティアたちは、何処かの集落に寄るべく、とにかく歩いていた。
空に輝くユルストフィヌスの日差しは、足元に広がる砂を黄金のように輝かせている。
そう、ハーティアとフランは、砂漠のど真ん中で、絶賛迷子中なのだ。
「熱いの~、フラン大先生、わたしたちはいつになったらここを出れるの~?」
砂漠では、日差しにやられないよう、厚手のマントを被るのが常識であり、ハーティアたちも例に漏れず、厚手の灰色のマントを被っていた。
「……ああ、幼女が一匹、幼女が二匹、幼女が」
「しっかりするの!!」
フランは、虚ろな目をしながら、幼女の幻覚を見て嗤っていた。
ハーティアはそんなフランに、ドロップキックをお見舞いした。
「ぐぷぉうあ!?……ハッ!!わたしは何を!?」
「やっと正気に戻ったの、それで、これからどうするの?」
「ああ、……お手上げ、かな?」
「はぁ!?それはヤバすぎるの!!食糧ももうあんまりないし、お水だってちょっとピンチなの!!」
「ああ、だから、賭けに出ないか?ハーティア」
そこでフランは、不敵な笑みを浮かべた。
「賭け?なの」
「あ~あ、賭けだ。このままだと、明日で食糧も水も尽きるだろう。
そこでだ、ここで演奏して、遠くで誰かが音を聞いて助けに来てくれるかも知れない。
どうせ明日までの命なら、音楽を楽しんだあと、君とイチャイチャしながら死にたい」
「一番最後以外は同意してもいいの!!
最近音楽を聞いていなくて、欲求不満だったの!!」
「ほう!?なら、その欲求不満を……」
フランの言葉を思いっきり無視して、ハーティアはトライルのケースを開けた。
「な、なんなの?これ」
ケースに入っていたのは、透明なトライルだった。
「これは、弾けるの?」
ハーティアは、おそるおそるその透明なトライルを取りだし、弓を手に持った。
「……なんだか、凄く気持ちが落ち着くの……」
ハーティアは、そのトライルを弾いてみた。
「うわっ!!な、なんて綺麗な音がでるの!!」
フランが夢中で幼女の素晴らしさを語っているなか、ハーティアは、咄嗟に浮かんだ新しい曲を、そのトライルで弾いた。
「曲名は、『この熱い砂漠の中で』」
その曲は、何処までも澄み渡るような音色に、どこか悲壮さを感じさせる、なんだか捨てては置けないような、そんな曲だった。
すると、地面から大きな音が聞こえてきた。
「じ、地震なの!?」
「なに!?この揺れは、わたしのパトスが引き起こしている訳ではないのか!?」
フランの戯れ言は置いておいて、揺れはドンドン大きくなり、ハーティアたちは立っているのがやっとの状態になった。
「ちっ!!巫山戯ている場合では無いようだ。
ハーティア、わたしに捕まりなさい」
フランの本気の顔を見て、ハーティアは直ぐにフランの背中にくっついた。
「では、跳ぶぞ!!口を開けるなよ?しっかり、捕まっていろよ!!」
フランの体から淡い光が発生したかと思うと、フランは一度しゃがみ、勢いよく上に跳ねた。
「な!?あれは、ヴュステヴンダー!!」
フランが高く飛び上がると、下から、巨大な土竜が姿を現した。
「一旦降りるぞ」
フランは、重力に身を任せてそのまま下へと落ちていった。
「ぐももももももも!!」
土竜は、フランたちの落下地点で、フランたちを見つめている。
「ふむ、あれは何をしに来たのか?」
フランは空中を蹴り、土竜のすぐ目の前に着地した。
「わたしの名前は、フラン・ハート!!
2の種族の使いの者と判断するが、いかような用件がおありか!!」
「ぐももももももも!!」
「……なるほど、あなたたちは、今はここに居るのだな」
「ぐも、ぐももももももも!!」
「……いや、わたしたちの旅のリーダーはこの子だ。わたしには決める資格はない」
土竜と話していたフランは、背中にいるハーティアをおろした。
「ハーティア、どうやら2の種族が、お前の演奏を聞きたいそうだが、どうする?」
ハーティアは、フランのジャンプで頭がふらふらしているようだ。
「うぅ、勿論行くの!!…でも、ちょっとだけ待ってな……おろろろろろ!!」
「うわ!!やめろ!!こっちを向いて吐くな!!
あっ、くそ!!少しマントに付いた!!」
吐き終えたハーティアは、とても爽やかな笑みを浮かべ、フランを急かした。
「早く、早く行きましょうなの!!」
元気なハーティアに、げんなりしているフランは、仕方なさそうに土竜のほうを見た。
「是非とも行きたいそうだ」
「ぐももももももも!!」
土竜は、嬉しそうに叫んだあと、しゃがみこんだ。
巨大な土竜がしゃがんだことで、下の砂は舞い上がり、周りがよく見えなくなってしまった。
「ったく、これだから2の種族は……」
「けほ、けほ、フラン大先生!?無事なの!?」
「ああ、少し息を止めてなさい」
フランは、詠唱を始めると、辺りを冷気が支配していった。
「…して、私は命ずる。『消去』」
フランの詠唱が終わると、まるで砂浜に描いた絵が波に呑まれて消えていくように、辺りに立ち込めた砂も目に見えて消えていった。
「……さすが、フラン大先生なの」
ハーティアが誉めるが、フランはあまり嬉しそうじゃなかった。
「いや、こんなものじゃまだまだ、クラリスさんと戦うことが出来ない…」
とても悔しそうにしているフランを見て、
クラリスさんの前ではあんなに巫山戯ていても、本当に、心からクラリスさんを想っているんだ、
とハーティアは感じていた。
「ぐもももも!!」
「…ああ、分かった。ハーティア、背中に乗れ、だそうだ」
「わ、わたし乗り物は、ちょっと……」
戸惑うハーティアに、フランは呆れていた。
「いやいや、2の種族に演奏を聞いてもらうんじゃなかったのか?」
「あ!!そうなの!!もぐらさん、宜しくなの!!」
音楽のこととなると元気になるハーティアに、フランは満足そうに頷いた。
「ああ、待っているお客様が居るのに、演奏者が逃げていては話は始まらないからな」
「うん!!音楽は素晴らしいの!!」
ハーティアを土竜の背中に乗せたフランは、ハーティアの後ろに座り、ハーティアを抱き締めた。
「ハーティア、まだ辛いだろうが、お母さんの為だ。一緒に頑張ろう、な?」
「……うん、なの。……だから、胸を揉むのをやめてほしいの。て言うか、まな板のようなわたしの胸を、逆によくこんなに綺麗に揉めると感心するの……でも、フラン大先生にはお世話になっているから、我慢するの……」
ハーティアが、本当に辛そうにそう告げると、フランも流石にこれ以上揉むのは気が咎めた。
「…すまない。まさか、そんな反応で返されるなんて思わなくて」
「ううん、いいの、わたしは大丈夫なの…」
フランからは、前にいるハーティアの顔を見ることは出来ない。
フランは、ハーティアの震える肩を見て、空気を読み違えたかと後悔した。
ハーティアは、フランに見えないように、悪戯成功とばかりに笑うのを堪えていた。
「じゃあ、2の種族の使い君、出発しようか」
「ぐもももも!!」
そして土竜は、騙してホクホクのハーティアと、騙されて気落ちしたまま気づいていないフランをのせて、出てきた穴の中へと入っていった。




