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第五章

   * 六年前 *



 太平洋を望むのどかな港湾都市、真鷹市。市域は海岸部とその後背の山地からなり、全般に起伏が多く平地が少ない。海岸部は海水浴に適した砂浜と、切り立った溶岩台地からなる入り組んだ半島状の岸壁部に別れ、人口は砂浜のあるほうの地域に集中していた。

 そんな港町の砂浜で、九月のある日、小学五年生の三人組――少年二人と少女一人――がサッカーボールで遊んでいた。

 この年頃特有のことだが、いちばん体格のいいのは少女であり、名前は真島菜々子(まじまななこ=ナナコ)。三人の中では中肉中背の少年が時任純平、そしていちばん小柄な少年が斉藤剛太郎(さいとうごうたろう=ゴータロー)である。

 三人は小学校入学以来の親友だったが、最近はナナコが髪を伸ばし始め、その髪が長くなるに連れて次第に三人での遊びの約束をすっぽかすようになっていた。第二次性徴を迎えようとするこの年頃、それまでは意識する必要のなかった性別の違いが表面化するにつれて、次第に男二人と女一人の幼なじみの関係も変化しつつあった。

 その日も純平とゴータローの二人のみで遊んでいたのだが、途中からナナコがやってきてそれに加わった。彼女は髪が肩に届くくらいになってからは中々彼らの仲間に加わろうとはしなかったのだが、その日は真っ赤なリボンで髪を後ろに束ね、かつてのような快活さでボールを追い回していた。

 そのリボンは彼女の髪が伸びたことに気づいた彼女の祖母がプレゼントしてくれたもので、その祖母が少女だった頃に愛用していたという歴史のあるものだった。そしてナナコ自身もそのリボンをとても気に入っていた。

 その日は天気予報で台風の接近による様々な警報が発表されていたのだが、久しぶりに三人で遊んだ時間はあっという間に過ぎていき、気づいたら周囲は雨雲の接近で薄暗くなっており、風も強くなってきていた。

「なあそろそろやばそうじゃね?」

 ゴータローが心配そうな声で言う。

「へーきへーき」

 久しぶりに三人になったため、純平は日が暮れるまで遊んでいたかった。

「でもそろそろ帰らないと親に怒られるかも」

 ナナコも心配しはじめる。

「なんだよ~、いつも約束すっぽかしてんだから今日くらいいいじゃんかよ~」

「そりゃ俺たちは男だからいいけどさ~ナナコはい・ち・お・う女なんだから」

 笑いながらゴータローが言う。

「ちぇ~、なんだよ最近急に男だの女だの言い出してさ。てかなんだよこのリボン」

 純平はナナコのリボンを取ろうとして、その端っこを握る。

「ああ、触んないでよ! 砂つくじゃん。ああ、汚れちゃった!」

 ナナコは怒って純平の手を払いのけるとリボンを外し、砂を落とそうとする。

「砂なんてついてねーじゃん」

 純平は再びそのリボンに手をかけようとする。

「やめてってば!」

 ナナコはリボンを持った手を純平の手から弾くように引き離す。

 するとリボンはナナコの手から滑り落ち、山間部から吹き降ろす強風で海のほうに飛ばされてしまった。このあたりの海岸は地形の影響で風の向きが不安定になりやすいのだった。 

「あ……」

 ナナコは呆然とリボンの行方を見つめる。

 純平はナナコの落ち込みように驚いた。

「なんだよあんなリボン、また買ってもらえばいいじゃん」

「あれおばあちゃんからもらった大切なリボンなんだよ!」

 ナナコは今にも泣き出しそうな顔で怒り始める。

「え……」

純平はやっと自分のしでかしたことを理解した。

 リボンはどんどん飛ばされていき、ついには見えなくなってしまった。

「あ~あ、この台風じゃ泳いで取りにもいけないねこりゃ」

 ゴータローが言う。

 泣きそうな顔でリボンが消えていった方向を見つめるナナコ。

 純平はかけるべき言葉が見つからずに呆然と立ち尽くした。

 やがてナナコは純平のほうに向きなおし、怒鳴った。

「大っ嫌い。もう絶交! 二度と遊ばない!」

 そして泣きながら自宅の方向に走り去っていった。

「俺し~らね」

ゴータローも帰り始める。

 あとには純平とサッカーボールだけが取り残された。


 それから三十分ほど経った頃、純平は複雑に入り組んで切り立った岸壁地帯の中でも比較的見渡しのいい岸壁の上に立ち、海面を見つめていた。空模様はいよいよ怪しくなり、雨はすでにザーザーと降っていた。この様子だとすぐに嵐になるだろう。そうしたらあのリボンはもう二度と探すことができなくなるかもしれない。

「あ――」

 目の良かった純平は波間に漂うリボンらしき赤い糸状の浮遊物を発見した。岸壁から100メートルほど行ったところだろうか。まだ小学五年生になったばかりの純平は学校の体育では連続で100メートル泳いだ経験しかなかったが、無理をすれば泳いで往復できない距離ではないように思えた。

 問題は嵐だった。こうしている間にもどんどんと風足は強くなり、雨も今にも土砂降りになりそうな勢いで降っていた。純平は覚悟を決めた。悩んでいたら嵐はもっとひどくなる。行くなら早いほうがいい。

 彼は岸壁を注意深く降り、砂浜のある海水浴場とは正反対でごつごつした、海岸から1メートルも行けば足が立たなくなるような急な深さの海に泳ぎだした。

 70メートルほど泳いだ頃、純平は早くも後悔で泣きそうになった。すでに雨は完全に土砂降りになっており、空は暗く、風は強く、荒れた波に何度も息継ぎを殺された。どうしよう、戻ろうか。でももう少しで届くはずなんだ。さっき波で海面が上がったとき、30メートルくらい先に赤いリボンが見えた。

 覚悟して、純平はさらに前に進んだ。そしてなんとかリボンに手が届いた頃には雨はすでに集中豪雨のような勢いで降っており、もはや100メートル先の視界もないような状態になっていた。純平はとりあえずリボンを落とさないように自分の首にしっかりと巻きつけると、急いでUターンして陸地に戻ろうとして、気づいた。

 暗い空と雨のせいで陸地がよく見えない。Uターンしたものの、本当にそちらの方向が帰り道なのかわからない。純平は絶望した。わずか十歳の少年にとってその恐怖がどれほどのものか、筆舌には尽くしがたい。

 絶望は急速に彼の体力を奪っていった。彼は恐怖のあまり声を出して泣いた。泣きながらも、適当に見当をつけた方向に泳ぎだした。しかし次第に手足に力が入らなくなり、波に飲まれることが多くなってきた。そして完全に抵抗する体力も気力もなくなり死を覚悟した頃――


 彼はそこで一晩を明かした。酸素もない海中で一晩を過ごすのは不思議な体験だった。寝ている間、彼はそれまでの短い人生の総集編のような夢をみた。夢の中では彼は360度無数の鏡に囲まれて海中に漂っていて、それぞれの鏡には彼が今まで経験してきた人生の記録映像が映し出されていた。そしてぐっすりと寝て起きたかのような錯覚をし目を覚ましたとき、彼はまだ海の中にいた。彼の記憶はそこで途絶えた。あとでわかったことなのだが、それは走馬灯体験と呼ばれるものだった。


 再び意識が戻った頃、目を開けるとそこには十五歳ほどの美しい少女の顔があった。なぜか彼女は全裸で、ペンダントのようなものしか身に着けていなかった。彼女は純平の顔を覗き込むと、ほっとしたようにため息をつき、無言のまま立ち去っていった。彼女が自分を助けてくれたらしいことは小学生の純平にもわかった。

 純平はゆっくりと体を起こした。途端にひどい吐き気がして、ゲホゲホと咳き込んだ。とても息苦しかったが、しばらく咳を繰り返して海水らしきものを口から吐き出してると少しずつ楽になってきた。そこは薄暗い砂浜だった。嵐はまだ続いており、初秋でなければ凍えてしまいそうな勢いで風も吹いていた。

 純平は思い出したように首に手をやる。よかった、リボンは無事だ。それにしてもあの女の人――十歳の純平から見たらそれは少女ではなく女の人だった――は誰だったんだろう? とても綺麗な人だったけどなんで裸だったんだろう? そしてどこに消えていったんだろう? まるで物語に出てくる女神様とか天使のようだった……。

 疑問はつきなかったがとりあえず砂浜から避難しないとまた気絶してしまいそうだった。純平はふらふらと立ち上がると、自宅の方向に歩き始めた。

 

 翌日から三日間ほど純平は熱を出して寝込んだ。見舞いにはまずゴータローが来た。そしてゴータローは純平の部屋にナナコのリボンを見つけると、それをどうしたのか聞いてきた。

 そして翌日にはナナコが見舞いにやってきた。彼女は純平の顔を見ると安心したように目を潤ませ、ベットの脇に膝を落として布団に顔を伏せるとわんわん泣いた。そして部屋の隅においてあったリボンを見つけるとそれを大事そうに手に取り、涙ながらに言った。

「ゴータローから聞いた。ありがとう。そしてごめんなさい」

「謝るなよ。もともとは俺が悪かったんだから」

「でもこんなことになるなんて……。『絶交』なんて言い過ぎた。ごめんなさい」

「いいよもう。でも、これで仲直りってことでいい?」

「うん……」

 そう言ってナナコは笑顔で涙を拭った。


 寝込んでいる間、純平の頭の中では不思議な鏡が何枚も浮かんでは消えていった。それは溺れそうなときに見た鏡と同じだった。しかしそれ以上に、自分を助けてくれた美しい女の人の顔が頭から離れなかった。彼女の夢を何度も見た。看病してくれている親や、見舞いに来てくれた友人に何度もその話をして、彼女は誰なのかを尋ねたが、誰も満足のいく答えを返してはくれなかった。親にしてもその日純平の捜索願を出したわけでもなく、いつの間にか彼が自宅の玄関でびしょ濡れになって倒れていただけなのだ。

 海難救助隊に電話で問い合わせてみてもその日彼の家の近くで救助活動をした記録はなく、そもそも十五歳くらいの全裸の美少女の海難救助隊なんて話は誰も聞いたことがなかった。

 電話を受けた事務員(三十代男性・匿名)は語った。

「もしそんな救助隊がいたら海難事故が減るどころか、自発的な男性の遭難者が増えそうで明らかに逆効果だ。画像や映像が流出したらなんちゃらポルノ法にだって引っかかりかねない。実にハレンチで、実にけしからん。ふぅ……ちょっと遭難してくる」


 ベッドから起き上がれるようになったとき、彼はいてもたってもいられずに彼女に出会った海岸まで走っていった。しかし残念ながらそこには何の手がかりもなく、ほかに探そうにも小学五年生にはその手段も限られていた。


 そしてその日から彼は暇を見つけては海岸を探索するようになった。


 秋も深まったある日、彼は入り組んで切り立った岸壁の海岸の岩場で不思議な岩を見つけた。その岩には大きな刃物で切り込みをいれたかのような傷跡があり、その傷の部分はまるで線香花火が燃えているかのようにジーッ、ジジ、ジーッ、ジジ、と不思議な音と光を放っていた。

 そこは非常に足場が悪く、彼はそこに近づいていくまでに何度も海にすべり落ちそうになった。岸壁なだけに海面下の勾配も急らしく、一度足を踏み外したら首まで海水に浸かってしまいそうだった。普段ならまず彼もそんなところには近づかなかっただろう。しかし今の彼はあの女の人に会いたい一心で、少しでも異常を感じた場所は調べずにはいられなかったのだ。

 その岩は近づけば近づくほど異様な雰囲気を醸し出していた。まるで虫眼鏡ごしに見ているかのようにその形が歪んだりゆらゆら揺れたりしていた。

 そしてその光を放っている部分が手に届きそうなくらいの距離まで近づいたとき、彼は足場に注意しながら思いっきり手を伸ばしてそれに触ろうとした。しかしバランスを崩してしまい、滑って体を岩に打ち付けそうになったので、ならばいっそ、と思って彼は海面に向かってジャンプした。岩の上で滑って転倒するよりは、海に飛び込んだほうが安全だからだ。そして――

 彼は「海の上に」倒れこんだ。

 海面に触れる寸前に足が何か見えない障害物に当たり、そのままバランスを崩してぐにゃりと倒れこんだのだ。その瞬間彼の視界から海が消え、硬い鉄の床が現れた。

 彼は今自分がどこにいるのかわからなかった。呆然と周囲を見渡すと、そこは何かの船の甲板の上のような感じだった。いや、まさに船の甲板の上だった。彼は混乱した。彼が岩からジャンプしたとき、視界には船なんてなかった。しかし今、彼は船の上にいる。一体どうなっているんだ?

 あ、ありのまま、今起こったことを……などと考えていると、視界の隅にキャビンの扉のようなものが見えた。疑問はつきなかったが、とりあえず彼はその中に入ってみようと思った。普段だったら絶対逃げ帰っていただろう。しかし今彼の頭にあるのはあの女の人に会いたいという思いだけだった。彼は扉を開けると、虎穴に入る思いで中に入っていった。

 中は真っ暗だった。そして扉を閉めると、それが勝手にロックされた。彼は驚いてまた扉を開けようとしたが、扉はびくともしなかった。そして急にパッと照明がつき、様々な機械の低い起動音が聞こえてきた。その室内はモニターらしきもので埋め尽くされていた。

 彼がびっくりして呆然と立ち尽くしていると、「警告。生体認証エラー。所属とID番号を入力してください」という事務的な人口音声が聞こえてきて、同じセリフを繰り返し始めた。

 彼がわけがわからず立ち尽くしていると、次には耳障りな警告音とともに目の前のモニターに『Warning! Security Breach!』という赤字が踊り始めた。やがて「警戒レベル3。隔壁をオールロックします」という言葉とともに、彼が入ってきた扉の上に更に分厚い扉が現れて閉じられた。

 彼はパニックになった。小学生の彼にも自分の置かれている状況が危険なものであることが理解できた。彼は無駄とは思いながらも入り口の扉をドンドンと叩き、叫び始めた。

「出して~!」

 すると一つのモニターの画面に能面のような人間の顔が現れ、唐突に聞いてきた。

「こんにちは、あなたは誰ですか?」

 純平は驚きつつも少しだけ落ち着きを取り戻し、答えた。

「時任純平。真鷹小の五年生です」

「ここで何をしているのですか?」

「何もしてません。気づいたらこの乗り物に乗ってたんです」

「『この乗り物』とは何のことですか?」

「ここのことです。何なんですか?」

「しばらくお待ちください」

「……」

「ネガティヴ。回答する権限がありません」

 純平は意味がわからなかった。会話が成立していない。なんだか怖くなってきたので、

「とりあえず帰ります。ドアを開けてください」

「ネガティヴ。ドアを開ける権限がありません」

「え?」

「管理者の判断をお待ちください」

「なんだよ管理者って?」

「管理者に接続中です。地球時間一五六九〇日一六時間三三分お待ちください」

「何だよ一万五千日って? 何わけわかんねーこと言ってんだよ?」

 純平は取り乱した。

「ネガティヴ。回答する権限がありません」

「うあ~! 何なんだよ~!」

 純平はわけがわからず絶叫した。そしてドアを再びドンドンと叩き始めた。

 すると突然、慌てふためくような少女の声が聞こえてきた。

「ごめんなさ~い! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

 純平はドアを叩くのを止めて、聞き耳を立てながら振り返った。するとモニターの画面には、彼がずっと追い求めていたあの女の人の顔が浮かんでいた。

「ごめんなさいごめんなさい、ちょっと留守にしてたの! まさか誰かが来るなんて思わなくて」

 純平は混乱した。ずっと探していたあの女の人が画面の中にいてしゃべっている。初めて声を聞いた。その声もその姿と同様に美しく、まるで鈴の音のような心地よさをもって耳に響いてきた。



   * 現在 *



「……と、それが俺とアイの出会い、というか再会かな」

 純平のアパートの一室、今は女子部屋になっている部屋の布団の上で、寝巻き姿になったアイとマリ、純平の三人は車座になって話をしていた。

「あのときは用事があってマザーコンピューターを留守にしていたの」

 アイは笑った。

 マリはおとなしく話を聞いていたが、単刀直入に聞いた。

「要するにアイちゃんは人間じゃないの?」

「うん」

 アイは一転して寂しそうな顔になり答えた。

「人間だよ」

 純平が答える。

「どっち?」

「少なくともこの体は人間の体じゃないの」

 純平は黙り込んだ。それは事実だったからだ。

「この体は特殊なバイオロイドなの」

「特殊な?」

「うん。マリちゃんなら知ってると思うけど、軍用・作業用・医療用・伴侶用、そういう一般的に知られているバイオロイドには属さない軍事機密に属する特殊なバイオロイド」

 バイオロイドとはA世界の未来での有機的人造人間のことだった。

「ということはアイちゃんはAI、つまり人工知能なの?」

「そう」

「違うよ」

「だからどっちなのよ?」

「元々は人間なんだ」

 今度はアイが黙り込んだ。それも事実だったからだ。

「どういうこと?」

「自律型万能AI、通称トリプルAI……マリちゃんは聞いたことある?」

「え……」

 マリの表情が見る見る強張っていく。

「あの、人間をAIにするって言う? まさか、あれは条約で禁止されてたはず」

「うん。でも、実際には条約が想定しない形で極秘に研究されていたの。条約の規定は技術の進歩に全く追いついていなかったから……」


 存在が極秘扱いの自律型万能AI。

"Autonomous, All-around, and Artificial Intelligence" 通称 AAAI 又は トリプルAI。

 それがアイの正体だった。そしてマリと目的こそ違うものの、彼女もマリとほぼ同じ世界、同じ時代からのタイムトラベラーだったのだ。

 

 A世界では二〇三〇年代以降、遺伝子操作技術とともに人工知能に対する研究も進んだが、AIはどれだけ完璧なものでも「人間としての人生経験」が少ない、あるいは皆無なため、感情移入能力、共感能力等に致命的な問題があり、そのような存在に人間と同様の自己保存・自己防衛本能を持たせることは暴走の可能性を考慮すると非常に危険だった。

 そのため条約でAIに自己保存・自己防衛本能を持たせることは厳格に禁止されており、AIは常に人間の指揮下で運用されることが絶対条件とされていた。しかし人間による指揮や遠隔操作の及ばない状況での作業において、ある程度自律的に判断・指揮できる上位のAIの必要性も否定できず、各国は水面下でその研究を進めていた。

 そしてその問題を解決するために、人間の人格をそっくりそのままコンピューターに移植するという方法が生み出された。人間の記憶や性格といった人格をベースにしてAIを構築することで、AIが人間的価値観から乖離し暴走する危険性を減らそうとしたのだ。

 そしてその機能を担保するため、AIとして機能しているときはベースとなった人間の体は凍結、逆に人間の体に戻るときにはAIは停止することになった。なぜなら両者の同時運用は高確率でその自我崩壊をもたらしたからだ。

 これはたとえれば今日いきなり自分が二人になったらあなたはどうなるか? という問題である。今まで一人だったのに、今日いきなり二人の人間の意識になった場合、あなたの視点はどちらの意識に継続するのか? そしてさらにまた一人に戻った場合、あなたの記憶はどちらの記憶を引きつぐのか? そもそも同時に二つ以上の意識が存在する自分は何者なのか?

『人間としての意識』と『AIとしての意識』の並存は技術的には可能だったが、このような理由から禁止された。実際にこれをやられた人間、そしてそのAIは狂ってしまって「ウッキー!」とか「ムッキー!」とか言いながら暴走を始めたらしい。

 そして多くの犠牲と厳密に整備された条件の上に一つの完成形として生まれたのがトリプルAIだった。トリプルAIは必ず元となる人間の存在を前提とし、必要な場合は人間の体に戻れるということを必須条件とした。

 またトリプルAIの生死は必ず人間の体の生死とリンクされた。人間の肉体という存在根拠、アイデンティティを失ったAIは人間的な価値観から乖離し暴走してしまう危険性が高かったためだ。そしてこれを担保するために人間の体が死を迎えたとき、無条件で自動的にAIのプログラムも停止・消去される仕組みになっていた。

 簡単に言えばトリプルAIとは、人間にルーツを持ち、常に「自分は人間である」というアイデンティティを維持しているAIのことだ。ただしそうは言ってももちろん情報処理能力はコンピューターのそれであり、人間などは遥かに及ばない。要するに人間とコンピューターのいいとこ取りな存在なわけだ。

 とは言え一度AIの道を選んで機密にアクセスしたら、簡単に元の人間に戻ることは許されない。少なくとも一身上の都合、などどいうものは認められない。ただしこれはあくまで社会的な制約であり、理論上・技術上は比較的簡単にAIの状態と人間の状態を切り替えられた。そしてそれらはそれぞれAI状態、ヒューマノイド状態と呼ばれた。そのまんまだが。


 純平がアイの船を初めて訪れたときにアイが「留守にしていた」と言ったのはこういうことだ。人間の体を起動している間はその意識は人間の体のみにあるからだ。その間、船のマザーコンピューターを管理していたのは通常のAIの一種であるただの管理プログラムだったというわけだ。小学生の純平を監禁した融通の利かないAIの正体は要するに『留守番電話』だったのだ。

 ちなみに「地球時間一五六九〇日一六時間三三分待て」と言うのは、管理者としてアイがマザーコンピューターに登録されたのが二〇〇九年から見て四三年後の二〇五二年だったかららしい。そんなもん待てるか。


 また、トリプルAIのベースとなる人間は、「遺伝子操作されていないナチュラルチャイルドかつ優秀な人材」が理想とされ、エリート意識が高く、しかも若年世代にしか存在しないために社会的な評価もまだ安定していないデザイナーチャイルドは敬遠された。要するにマリみたいなタイプはやめとこうって話である。世界制服を企みかねない。

 そして自ら志願してトリプルAIとなったのがアイだった。アイは遺伝子操作されていないナチュラルチャイルドでかつ十四歳で大学を卒業した天然の天才少女だった。

 A世界の未来ではアイが十歳のときに奇病が蔓延し、アイも十四歳でそれに感染、発症し、隔離医療施設の外では一時間ともたない体になっていた。それは従来は風邪ウィルスのように比較的害の小さかったウィルスが突如強烈なアレルギー症状を引き起こすようになりその宿主に死をもたらすというものだった。アレルギーの原因は未来の宇宙から宇宙船とタイムマシン経由でもたらされたと推測されている新種の微生物だった。未来からもたらされた微生物が原因なためか、その微生物の流入によって分岐した世界の未来においても、その治療法は確立されていなかった。

 また、A世界では二一〇〇年以降の未来へのタイムトラベルが成功しておらず、その原因究明及び限界突破のためにもアキラやユウジの能力が必要とされていた。それはこの病気の治療という意味でも重要なことだった。

 十五歳になっても相変わらず隔離施設で生活していたアイは将来に絶望し、少しでも自分が生まれてきたことに意味を見出そうと、トリプルAIになることを決意した。ただし病気に感染した人間の体では外部活動ができないため、人間の体の変わりに特殊なバイオロイドが特別に用意された。さらに自我保全のためのトリプルAIの規定により、その生死の基準となる外部活動用ボディは一つしか持てないため、病魔に侵された生来の肉体は廃棄されることになった。

 つまり彼女は人間の体の代わりにバイオロイドの体を持ち、それとマザーコンピューターの間を行き来するトリプルAIという特殊な存在になったのだ。これは非常に特例的なケースだが、実はこの計画の技術責任者が彼女の実父だったために可能になった。彼女の人間の体は両親により丁重に葬られたという話だが、アイの自我崩壊の危険を避けるため葬儀等は一切行われず、またアイ自身もどのように埋葬されたか等は全く知らされていなかった。

 通常トリプルAIは、その人間の体が健在でありいつでも人間に戻れる限り周囲の人間からはかろうじて人間として扱われた。しかしアイの場合はその意味でも特殊だった。彼女の場合は人間の体は廃棄され、生死の基準となる外部活動用ボディもバイオロイドで代用していたからだ。

 バイオロイドの体には性交渉能力はあっても生殖能力はないため、それは少なくとも子孫を望む男性からは女性として扱われない可能性があることを示唆していた。そして実際アイを人間として扱う仲間は一人もいなかった。しかし、これは仲間だけに責任があるわけではない。そもそもAIになり、さらに人間の体をも捨てるということはそういう覚悟が必要なことだったのだ。


 このようにアイの体はトリプルAI用に作られた特殊なバイオロイドである。

 バイオロイドは完全な機械であるアンドロイドとは違い、機械と人間の融合体であるサイボーグに近い。ベースは人間の遺伝子を元に創造された有機体で、活動エネルギーも通常の人間と同様の食事から摂取されるが、頭脳はマザーコンピューターと迅速にデータ通信が行えるよう生体頭脳と電子頭脳の複合体となっていた。

 また通常はその外見はゼロからデザインされたバイオロイド独自のもので、能力も軍用・医療用・看護用・特殊作業用・伴侶用、といったように細かく分類・限定されており、その頭脳は通常のAIであり擬似感情以外の自律的な感情は全く持たない。

 しかし、アイのボディはあくまで彼女の生来の肉体の代替物であるため、外見に限っては人間時のアイの完全なコピーでありクローンに近かった。頭脳もトリプルAIであるため人間と同様の感情や自律判断能力を持つとされ、さらにその身体能力は軍用バイオロイドのそれだった。それは万能AI用のバイオロイドという意味で単に万能バイオロイドと呼ばれた。


「なるほどね~」

 アイの正体を聞かされたマリは、しばらく考え込んでいた。

「でも『トリプルAIのベースとなる人間は遺伝子操作されていないナチュラルチャイルドかつ優秀な人材』って言ってたけど、アイちゃんて十四歳で大学卒業したんでしょ? あたしより一年早いけどまさかナチュラルなの?」

「うん」

 アイは答える。

「今の外見も、声とかも、全部人間のときの完全なコピーなんでしょ?」

 マリは続けざまに質問を浴びせる。

「うん。このホクロとかも全部そっくりそのままのコピー」

 アイは首筋の小さなホクロを見せる。

「どんな親よそれ」

「え?」

「遺伝子操作もしないであんたみたいな子供が生まれる親って?」

「う~ん、私にとっては普通の優しいパパとママよ? パパは軍のトリプルAI計画の技術責任者で、時空観測艦プロジェクトでは総合指揮官を務めてたの。ママは大学院時代には陸上のオリンピック選手だったけど、院を卒業すると同時に競技を引退し女優になったらしいわ。そして私を生んでからは大学に戻り教授かな」

 マリは圧倒されたように黙り込んだ。

「マリちゃんのご両親は?」

 逆にアイが質問した。

「あっはっは、てか飛び級って、勉強だけやってれば誰でもある程度は可能だから、結局は本人の意志次第よね。早く卒業したい人もいれば、ゆっくり色々経験しながら卒業したい人もいるし~。成績がすべてじゃないよね」

「なんか話題逸らしてね?」

 純平が突っ込んだ。

「うるさいわねこのオール5少年!」

 デザイナーチャイルドとしてのマリのプライドが音を立てて崩れた瞬間だった。

「でもアイちゃんはその二〇〇九年のとき、そんなとこでなにやってたの?」

 ふと思い出したようにマリは質問した。

「途方に暮れてたの」

 苦笑するアイ。

「初代時空観測艦、私はその艦長だったの。艦長と言っても乗組員は私だけだけど」

「初代って、あの行方不明になった?」

「そう。出航のときに基地が識別不能の部隊反応を持つ武装集団に襲撃されて、見切り発車でタイムトラベルしたら一九九〇年に着くはずが二〇〇五年に着いちゃって、しかも故障で大気圏脱出はもちろん、帰還用のタイムトラベルも時空間通信もできなくなっちゃったの」

「あらら……というか二〇〇五年て!?」

「うん、A世界からこの世界が分岐したと推測されてる年。分岐はたぶんそれが原因だと思う。タイムワープアウトしたのは四国地方の太平洋側の海上約50メートルの場所だったんだけど、陸地に近すぎてかなり目撃者がいたみたいでUFO騒ぎになっちゃって。結局海上に不時着して、光学迷彩機能も故障しちゃってたから修理するまで数日間は姿を晒したままその近海をうろうろするハメになっちゃって……」

「あっちゃ~、世界が分岐するわけだわ」

「なんとか迷彩装置だけは修理できて、それから緊急時の代替作戦プランに従ってこの町の入り江に流れ着いたの。でもある日子供が溺れかけてるのに気づいて、それが純平君との出会いかな」

「そう言えばA世界には俺は存在してないんだよね?」

 純平は思い出して言った。

「うん。二〇〇五年までは歴史は共通だからそれまでは生きてたんだろうけど、それ以降何らかの記録が残るようになる前に死んだ可能性が高いわね」

「じゃあA世界では俺そのとき溺れ死んでたのかな?」

 マリはしばらく考えこんでから言った。

「う~ん、そのためにはまず前提として、A世界でもB世界でも純平が同じ水難事故に巻き込まれる必要があるわね。四国というとここから500キロくらい離れてるから、世界が分岐したとは言ってもこの町の小学生の周辺には影響がなかった、と考えれば、それもあり得るわね」

「少なくとも四国のUFO騒ぎの話なんて知らなかったよ、小学生のときは」

「でもバタフライ効果って馬鹿に出来ないから、たぶん死因は違うと思う。ただ、もちろんAでもBでも同じ人間である以上『冒険好きな性格』とかだったらどっちの世界でも死にやすいってことは言えるわね」

「う……」

 純平は否定できなかった。無茶しやがって……。純平は心の中でA世界の自分自身に敬礼した。

「どちらにしてもこの世界では純平はもうA世界と同じ死に方はしないはずよ。ここまであたしやアイちゃんにかかわってる以上、純平の人生もA世界とは完全に変わってるはずだから」

 それを聞いて純平は少し安心した。でももっとひどい死に方したりして。

「ちなみになんで全裸だったの?」

 純平はずっと気になっていたことをアイに質問した。

「え? だって子供が溺れかけてるのに気づいてからこのボディを起動させてすぐ海に飛び込んだのよ? 使ってないときは裸でカプセルに保存されてるし。逆にあんな切羽詰った状況でわざわざ何か着込んでから海に飛び込む方が不自然じゃない?」

「まあそれもそうか」

 純平は納得した。確かにあの状況で裸じゃなかったらかえって不自然だ。うん不自然。

「でもペンダントみたいなのはしてたよね?」

「……これのこと?」

 そう言ってアイは上着の襟首を引っ張ってペンダントを取り出した。

「それそれ。それっていつもしてるよね?」

「うん。変でしょ? このボディに最初からついてて、カプセルで保存するときもつけたままで大丈夫なの」

「てことは人間のときはそれはしてなかったの?」

「うん」

「今でも俺にとっては人間だよ」

「何なのそれ?」

 マリは純平の感動発言をナチュラルにスルーした。

「わかんない。私がAIになったとき、計画の技術責任者だった父が『これはお前のためのものではなくて、お前を愛してくれる人のためのものだから、死ぬまで外さないようにしなさい』って言ってたの。今まで何かの役にたったこともないし、きっと俯瞰カメラかなんかで私の人生の記録でも撮ってるんじゃないかしら」

 そう言ってアイは笑った。

「『死ぬまで外すな』ってなんかドッグタグみたいでイヤだね」

 ドッグタグとは軍隊において兵士の固体識別に使用される認識票だ。要するに死んだときに誰だかわかるように付けられた名札だ。戦争ゲームのCoBでも敵を倒すと、そのプレイヤーのアカウントネームの入ったドッグタグを獲得、収集できるようになっていた。

「不吉なこと言わないの」

 マリは純平を睨んだ。

「でもドッグタグと考えておけば間違いはないと思う。そういうことだから、私にもしものことがあったとき、純平君、これ貰ってくれる?」

「そんなときのこと考えたくもない」

 それは純平の本心だった。

「あれ、でもそのときもうアイちゃん十五歳くらいだったんでしょ? バイオロイドも年取るよね?」

 思い出したようにマリがアイに質問した。

「うん。私の場合はトリプルAIの存在根拠としての人間の体の代用品だから、成長のペースや寿命に関しては人間とほぼ同様になるようデザインされてるの。でもそれ以外の部分は無理に人間には合わせてないから、老けるのは遅いけど寿命が来たらぽっくりと逝っちゃう、みたいな違いはあるらしいわ」

 そう言ってアイは笑った。

「まあ全部人間に合わせてたらあんな動きができるわけないか」

「でも純平君が小学六年生のときにまた船の存在がバレちゃって、ほとぼりが冷めるまで三年ちょっと、純平君が中学生の間はずっと太平洋をうろうろしてたの。純平君もその頃にはコンピューターを使えるようになってたから連絡手段には困らなくて、寂しくもなかったし。その間この体は凍結してたから純平君が高校に入る頃には肉体的にほとんど同い年になってたの」

「なるほど……」

 マリは納得した。


 アイは初代時空観測艦の艦長だった。AIが艦長になるのは歴史上初だったらしいが、それだけ元となる人格への信頼が篤かったということだろう。十五歳の少女の人格に対する信頼と言われても現代の感覚ではあまりピンとこないかもしれないが、人格というよりは持って生まれた性質への信頼と言ったほうが正確かもしれない。高校教育を終えれば成人資格を得られる時代に、アイは十一歳で成人を済ませていたという事情もあった。

 そしてもう一つ大きな理由もあった。それはそもそも時空観測艦というのは「過去から未来に渡る地球の歴史の分岐を、地球に影響を与えずに宇宙から観測する」ことが任務であるため、長期間磨耗せずに運用できる仕組みが必要であり、そもそも無人であることが理想だったのだ。

 しかし無人あるいは単なるAIでは不測の事態に対応できないため、「人間と同様の臨機応変な対応能力を持ち、さらに観測対象の世界が出発時(アイの場合は二〇五二年)と同レベルの科学技術水準に達するまで磨耗・老化せずに観測し続けられる存在」であるトリプルAIが適任だったのだ。トリプルAIなら人間のボディさえコールドスリープ状態にしておけば半永久的に活動ができるからだ。


 ちなみにアイの名前は本名ではなかった。本名を純平は知らない。佐伯と言うのはこのB世界で彼女を養子として迎え入れてくれた夫妻の名字だ。

 佐伯さん夫妻は純平も今では顔なじみだが、彼らにはアイお得意の直球ストレート勝負で事情を説明し養子に迎え入れてもらったらしい。とは言え、平凡で人の良さそうな佐伯さん夫妻が彼女のおとぎ話じみた複雑な事情を完全に理解できたとはとても思えない。結局のところ、彼らはよく事情も理解できないままに彼女の笑顔にコロリとやられてしまった可能性が高い。球速200キロの直球ストレートのようなものだ。

 そして今では孤児でありながら帰国子女であり、さらに国民的美少女という謎の存在の『栗毛のアイ』の養親、日本版マリラとマシュウとして有名になっている。

 なお、彼女が栗毛なのは母方の祖父が金髪のドイツ人だったからだ。つまり彼女はクウォーターなのだ。

 彼女の出生証明書や養子縁組に伴う住民票等の偽造はすべて彼女が政府のコンピューターにハッキングしてデータを書き換えて行った。未来のコンピューターのボスとも言うべき彼女には朝飯前のことだったが、もちろんその能力を必要以外の目的で濫用することはなかった。その気高い人格も彼女がトリプルAIに選ばれたゆえんだった。

 ではなぜ名前がアイなのかというと、それは結構、というかかなりベタな理由だ。アイの船に遊びに行くようになった小学生の純平はある日、それまでいつもお姉ちゃんと呼んでいた彼女に尋ねた。

「そういえば、今更だけどお姉ちゃんの名前は?」

「私? 私は今はただのAIエーアイだから……」

 アイは何故か寂しそうに名乗るのをためらっていた。どうして本名を名乗る気にならなかったのか、その心境はのほほんと平凡な人生を生きてきた純平少年には全く想像もできなかった。

「えーあい? あ、俺知ってるよ、え~と、『A』は『あ』、『I』は『い』だから、『あい』、アイだね」

「ふふ、そうね」

 そう言ってアイは笑った。

 それがこの世界での彼女の名前になった。

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