第十三章
やあ、鏡の中のキミたち。
ボクは純平。
もうばれてると思うけど、この一人称になってるときはボクは夢の中にいるんだ。
一言で言えばボクはただのバテ太さ。そして一生バテ太だろう。理由はキミならもうわかってくれているはずだ。そして今日も元気に学校で居眠り中さ。ボクが突っ伏している机のそばではアイとマリとナナコ、そして真ケンゴがギャアギャア雑談しててうるさいんだけどね。
真ケンゴは結局偽ケンゴが拠点にしていたタイムマシン船の内部で発見された。復学の手続きはB世界の未来のボクやアイが色々手を回してくれたので(ハッキングや、やむを得ず最小限の記憶操作をしたとも言うが)なんとか問題なく済んだ。偽ケンゴも自分がこの世界に来た痕跡を少しでも減らすために最初からそうするつもりだったらしく、監禁されていたとは言え真ケンゴの健康状態は良好だった。
ボクら、つまりボクやアイ、マリ、アキラ、真ケンゴ、偽ケンゴ、そしてナナコ、ゴータロー、この世界の人々、ボクらはみんな三次元の存在だ。いくら科学技術が発達し、機械の力で時空を飛び越えることができるようになったところで、もって生まれた性質はあくまで三次元なんだ。
そして残念ながら、三次元の存在であるボクたちは他の三次元の世界の存在を認識することはできない。これはボクたちが二次元の漫画やアニメの世界を星の数ほど認識できても、それら二次元の世界の住人たち――エドウィン・アボット・アボット流に言えば「フラットランド」の住人たち――は他の二次元の世界を認識できないのと同じさ。同次元の世界を複数認識することは、少なくとも一つ以上、上の次元の存在にしかできないことなんだ。
ボクらの認識の及ばないところで、本当はもっと色んな世界が存在している。ボクらの世界は無限に分岐した『可能世界』の中で偶然に生まれた一つの世界にすぎないんだ。ある世界では誰かの命が失われ、ある世界ではボクたちは全滅してしまったかもしれない。全滅なんて想像したくもないし、誰も知りたくもないだろう。でも認識できないからと言って、そういう世界も存在していることは忘れないでほしい。だから、たとえ一人でも生き残れた世界はまだ幸せなんだ。
そしてキミもご存知のとおり、このC世界ではみんな元気で生きている。これはとても幸せなことなんだ。それに、もしまた未来から拉致目的の集団がやってきたとしても、今のボクとアイのコンビなら今回みたいな悲劇を招かなくても済むだろう。
それに任務の正体を知った元自称『エリート軍人』、現自称『縛られ役ヘタレ軍人。バックが弱いの(はぁと)』なマリも、気持ちの整理ができるまで無期限でこの世界にとどまることにしたようで、これでアキラがMMVに覚醒したら、ボクたちは少しオーバースペックな集団になるかもしれない。一人完全に自信喪失してネタに走ってる人がいるけどね。でも、この世界のボクたちのことはもう心配してくれなくていいと思う。
じゃあ、そろそろお別れだ。またいつかキミに『バテ太とネコ助の大冒険』(仮)のお話を聞いてもらえる機会があることを祈ってる。