夜は大人の時間です
「クロ、ベッドとギルドの件、ありがとうございました」
「いいってことよ。それよりあの二人、とんでもねぇ天才じゃねえか、ショウが目を付けたのも分かるな、あの才能だったらどれだけの冒険者になるか。特に小僧の方、ラークとかいったか。あの剣速はすでに一流を名乗ってもいいくらいだぞ」
「才能の件については同感ですが、彼らが冒険者になるかどうかは彼らが決めることですよ、クロ」
多少興奮気味のクロを、たしなめるようにショウは言う。だが、二人の持つ才能については、やはり末恐ろしいものがあるらしい。
「わたしだってあんなに魔力量の多い子たちなんて見たことないわ。クロウの言うことに乗っかるわけじゃないけれど、坊やの方は木剣の扱いも信じられないくらいきれいだったし」
「そうですね、魔力量といい、おそらくそう遠くない将来、かれは『大陸最強の剣士』になるでしょうね」
「おっと、えらく弱気じゃねえか、現『大陸最強』サマがよ」
「そうですね、たとえ僕が最強であったとしても、剣術に関してはもっとうまい人もいますし、魔術に関しても同じくです。僕には僕の戦い方があるんですよ」
「そうよね、何をいまさらクロは勘違いしているのかしら」
「おいおい、よしてくれよ。俺だってそれくらいわかっているさ。」
クロの軽口に過剰反応してしまったような気もするが、それはしょうがない。
「明日、町に出てあの二人に合う武具を買ってくるつもりですが、ついてきますか?」
「いいわ、わたしはああいう人ゴミは好きじゃないの」
「同じく」
大人の夜は、ゆっくりと更けていく。いつもは広すぎるこの家が、なんだか今夜はちょうどよかった。