まじょとおうさま
これは、ショウが住む大陸の西側のとある国のとある城の中での出来事である。
「先日の勝利で、我が国は西の小国家の中では最大の国になったわけですね」
影のある笑みを浮かべながらそう言ったのは、中性的で整ってはいるが、まだ顔にあどけなさが残っているような、そんな少年であった。
「我が国とは、貴様も言うようになったものだ。実の父親を手にかけて手に入れた王座だろう」
それに答えたのは、清楚なたたずまいにも関わらず、どこか妖艶な色香をまとった妙齢の美女であった。
「まだ喜ぶのは早いだろう、貴様の目的はその程度のものなのか?」
美女は、その見た目には似合わない、まるで王者のような口調で少年に尋ねた。
「もちろんです。世界の支配者たるこの僕にこの領土じゃいささか不足です」
「そうだな。その答えが聞けなかったらここで貴様をくびり殺しているところだ」
にやり、と美女は嗤う。まるで刃のように、毒のように。
「それで、あなたの言う要注意人物とやらは、警戒に値するほどのものなのですか?」
少年は少しの気圧された風もなく尋ね返した。
「ああ、我はあやつに後れを取ったこともある。少しの『呪い』をあやつに残してやることはできたのだが、油断はならない」
まるで昨日の不運を嘆くかのような、そんな顔で美女は答えた。
「さすが、『勇者』といったところですか。その名に偽りはなかったのですね。まさか『魔女』に勝つなんて、人間とは到底思えませんね」
暗い、暗い、部屋の中。こんな話がされていたことはこの二人しか、知らない。