始まりは不意に
ハーレムモノではないです、また、ヒロインも登場時期がすごく遅いです。そこのところ、よろしくお願いしますね。
盗賊団『黒蛇』の討伐」
歴戦の猛者であり、「勇者」とまで呼ばれていたショウ・サザールスにとっては大して難しい依頼でもなかった。それでも、ショウのもとへ依頼が来たのは、『黒蛇』による被害があまりに大きくなってしまったからであろう。
軽く、討伐を終わらせて捕縛した首領を尋問する、いまアジトを出払っている者もいたせいか、無力化した盗賊の人数と、首領の言う団員の数が合わない。もっとも、あまり気にとめていないが。
「こんな依頼では肩慣らしにもなりませんね、家で畑を耕していた方がよっぽどいい運動です」
誰にいうでもなくつぶやく。あとは王都に戻って事の次第を報告、首領の身柄を引き渡せば任務完了である。
「一応、アジトにいたものは殲滅、首領と思しきものの身柄はお引き渡しいたしました。ところで、首領の証言した人数と、アジトで仕留めた頭数が合わないので、そこまで心配はしなくてもいいと思われますが、くれぐれもご注意を」
王宮にて国王に直接報告。王都のギルドマスターにも報告はしたが、国王にじかに面会できるところからすると、やはり自分はVIPといったところかなぁ。
「うむ、かの『勇者』が動いたと聞けば、民も安心するだろう。ギルドからは報酬を受け取ったか?」
「はい、いささか多すぎな気もしますが……」
「よい、よい。名前の重さに似合ったものよ。ところで、先日の頼みの方はどうだ?悪い話ではなかろう」
「ご子息様にご教授できるというのはこの上ない名誉でございますが、いかんせん私は剣術に不得手でして……」
やんわりと断ろうとする。いくら相手は人格者であるとわかっていても、国王の頼みを断るのだ、少しでは済まないプレッシャー、まずい、ちびりそう。
「ぬう、しかしこの城の騎士たちは口をそろえてお前にはかなわないと申して居るがな。まあ、お前がそういうのならば仕方ない。気が変わったらいつでも申すがよい」
「はい。では私はこれで」
やっぱり、ああいう雰囲気は苦手だなぁ。だから王都には住みたくないんだな。なんて思いながら、王宮を後にした。
そう、国王の頼みを袖にしたあの時はまだ、僕が弟子をとるなんて思いもしてなかった。