第9話 思わぬ邂逅
ユウ達が遺跡の中で魔力の気配に気づいた時。サーヤもユウ達の気配を感じ取っていた。
「フローズンドール、下がって。何者かの気配がしますわ」
「はい、サーヤ様。」
フローズンドールは言われた通り従順にサーヤの言うことを聞く。
「この辺りのはずだが。しかし大森林から今まで何も気配が無かったのに。」
「そうですね。この遺跡には何か特殊な仕掛けがあるんでしょうか?」
「もしかして昔の戦場跡かもしれないな。ここで死んだ者が高位の死霊になってる可能性がありそうだ。慎重に進もう。」
昔の戦場で死んだ者が死霊に成って人々を襲うって事が報告される事案を聞いた事がある。
そういった場所は大体の場合こういう遺跡や廃墟に多い。
そう考えながらユウとレファナが歩いていると目の前に2人の人影が見えた。
「何者ですの。」
サーヤは手持ちのツインダガーのうち一本を目の前のユウたちに向ける。
魔族でない香りがする。外部からやってきた人間か?
「待て!俺達は君達に危害を加える事は無いから武器を収めてくれ!」
そう言うとユウとレファナはその2人組に歩み寄り顔を見せる。
サーヤが深く被ったフードの隙間からふと視線を合わせてみると、驚きのあまりダガーを落とした。
そう。そこに立っていた相手は、以前人間のいる街へと出向いた時に転びそうになり、助けてくれた男だった。
何故たったそれだけの事を今でも覚えているのかというと、ユウが一目惚れした相手だったからだ。
「ん?俺の事を知ってるのか?」
「貴方様は…!!いつかまた会えると信じていましたわ〜!!!!♡」
歓喜の声をあげながら勢い余って抱きつこうとして結構な力でタックルしそうになるが、避けられてすっ転ぶ。そして勢いでフードも脱げた。サーヤのアホ毛がぴょんぴょんと揺れ動く。
フローズンドールは何のことやらわからず不思議そうに見ている。
「おっと!いきなりなんなんだ?とりあえずお互い冷静になろう。」
急に抱きつこうとしてきた相手をヒラリとかわした後で、ユウはそう提案する。すると相手の方から自己紹介してきた。
「私はサーヤ・ステラリア。貴方のお名前はなんと仰いますの?」
「ユウ・クレストだ。」
「ユウ様!よろしくお願いしますわ!!」
キラキラと目を輝かせながらユウの手を握り、ぶんぶんと振る。
「そちらのお方は?」
「レファナ・レンスです。ユウとは少し前から一緒に旅をしています。」
「ユウ様と出会った時はこのような女性は隣に居なかったはずですけれども、先を越されましたわね…」
「ところで後ろにいる人は誰だ?不思議そうにこっちを見ているが?」
ユウが問いかけるとフローズンドールは前の方に出てきた。
「私はフローズンドール。サーヤ様に仕える人形です。サーヤ様と貴方たちはお知り合いなのでしょうか。」
「いや。俺は知らないな。色々な場所を旅してきたけどサーヤと言う名前は覚えがないんだ。」
「私も分かりません。知り合いにもサーヤと言う名前はいませんし。」
フローズンドールの質問にユウ達はそれぞれ答える。
ユウはどこかで会ったかなぁと必死に思い出そうとする。
「いいえ!レファナとは初対面ですけれど、ユウ様とは一度お会いしたことがありますわ。あれはエリオス街に行った時のこと…走って転びそうになった私をユウ様が優しく抱擁してくれたのです♡あの時から私はユウ様の虜ですわ〜♡」
サーヤの言葉にユウは思い出した。確かにエリオス街で転びそうになった人を助けた事があった。まさかその時の人とは思わなかった。
少し驚いたがいい機会だから魔族の里について聞いてみる事にした。こんな所にいるのだから何か知ってるかもしれない。
「なぁ。少し聞きたいんだが、この大森林に魔族の里があると文献に載っているが何か知らないか?」
「魔族の里?あぁ!それなら私が住んでいる場所だと思いますわ。でも…」
フードは脱げてこの姿を知られてしまった。だけどユウに素性を知られるならそれはそれで別にいいかもしれない。自分の初恋の人なのだから。そう決心して、言葉を紡ぎ出す。
「もし魔族の里に行くのであれば、くれぐれも私の事を他の魔族に喋らないでほしいのです。私は…魔王の娘なのですから。」
「住んでる場所だって!じゃあサーヤは魔族なんだな!しかも魔王の娘なんて!」
ユウは内心びっくりした。まさか本当に魔族の里があるなんて思わなかった。そして魔王の子供がいるとは思わなかった。
「まぁ魔王の娘の事は秘密しよう。それは約束するよ。あと魔族の里まで道案内をお願いしたいが頼めるか?」
「ええ、ユウ様のためならなんなりと♡」
「よろしく頼む。」
ユウのためになら何でもしそうな言い方をする。正式に出会ったのは今が初めてだというのにすっかりメロメロだ。
「ではユウ。フローズンドールも魔族なんですか?さっき人形と言っていましたが?」
「いや。多分だが、機械人形なんだと思う。古い文献に魔王が機械人形を作り兵器として使用したとある。」
レファナが問いかける。もしフローズンドールが本当に機械人形だとしたら、この遺跡は魔王が作った機械人形の生産場だったのだろう。しかし魔王が倒された時に機械人形は全て停止したとあったが何故今動いているのだろうか?
疑問に思って聞いてみる事にした。
「フローズンドールは何故今動いているんだ?魔王の魔力はもう無いよな?」
「魔王様でなくともサーヤ様は魔王様の娘です。その魔力を感知して私は動き出しました」
「長い間眠ってたそうですわ。私が来るまでずっと一人ぼっちで、この遺跡で…うう、可哀想ですわ…」
「なるほど。確かに魔王でなくてもその娘でもいいのか。ありがとう、疑問が解消されたよ。」
そうこうしながら俺達は魔族の里に歩いて行くが、朝から動きっぱなしだから休憩を挟む事にした。
「少し休憩しようか?お腹も空いたし何か食べよう。」
「そうですね。ではササッと作っちゃいますね。」
「すまない、レファナ。頼んだよ。」
そう言うとレファナはBOXから調理器具や食材を出し料理を始める。
ポーク肉のソテーを焼いて作りながら、キャベチュやレタチュ、トマトゥを使って簡単なサラダを作る。
俺はサーヤとフローズンドールに話しかける。
「お腹空いてるか?今レファナが料理してるが一緒に食べるか?」
「食べますわ!フローズンドールにも美味しいご飯を食べさせてあげたいですわ!」
「サーヤ様がそう仰るのであれば、私もいただきます。」
そしてあっという間に人数分の食事が完成だ!
「レファナと言いましたわね!貴女なかなかやりますわね!まぁ私の手料理には敵いませんでしょうけど!」
ライバル心があるのか、そんな事を言いつつももぐもぐと食べ進めている。
「動物の肉は初めて食べます。葉っぱも初めてです。きっと人間にとって良い食事なのでしょう」
焼き菓子などはサーヤから貰って食べていたが、サーヤがフローズンドールに対してちゃんとした料理を振る舞ったことはなかった。フローズンドールにとっては初めてのまともな食事だ。
「ふぅ、お腹いっぱいになったな。」
そうして空腹を満たしたユウ達はサーヤの案内で魔族の里に向かって行く。魔族の現状を調べるために。




