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第7話 魔王の娘

私は人里に降りるんじゃなかったと激しく後悔していた。自分が魔王の娘だとバレてしまうのではないかと気が気でなかった。

外の世界を見て、人間たちと触れ合ってみたかった。それが本音だったが、結局接触した人間は一人のみだった。だって、関われば身分がバレてしまうかもしれないから。

その唯一接触した人間の顔が忘れられない。妙に頭に残るのだ。


「一目惚れ、なのでしょうか…」


でもきっともう二度と会えないだろう。私は外界と接触することなく、穏健派の魔族が集まる隠れ里でずっと生き続けるのだ。

そして街から離れ、隠れ里に戻る途中、たまたま遺跡のような洞穴を見つけた。興味本位で入ってみる事にした。

中は薄暗く、ランタンが無いとよく周りが見えない。BOX(ボックス)からランタンを取り出して中に入っていく。


随分と廃れている遺跡だ。他の誰かが入った痕跡もない。

奥へ奥へと進んでいくと、座り込んでいる幼い子…いや、違う。

『機械人形』を見つけた。

服も着せてない状態だったから球体関節ですぐに人形だとわかった。

私はこの子の事が妙に気になった。額にそっと手で触れてみる。

すると私の微小な魔力が機械人形に流れ込む感覚を覚えた。

機械人形はゆっくりと目を開けて、お互いの視線が交わる。


「マスター、起こしてくれてありがとうございます」

「ます…たー?(わたくし)の事ですの?」

「はい、そうです。」


なるほど、この子は初めに起動させた人物をマスターとして認識しているのかもしれない。

私がマスターであるということは、この子は誰にも出会う事なくずっと動く事なく、この遺跡に放置されていたのだろうか。


「マスター、まずは私に名前をください」

「名前…ですの?うーん…そうですわねぇ…」


名前をつけてほしいと要求され、深々と考える。

機械人形、ドール。そして機械人形らしい、感情のない氷のように冷たい視線。


「決まりましたわ!今日から貴女の名前はフローズンドールですわ!!」

「ありがとうございます。フローズンドール。それが、私の名前」

フローズンドールは礼を述べてお辞儀をする。

「マスターの名前、知りたいです。」

「サーヤ・ステラリアですわ。私は魔王の娘なのです、これは他の誰にも言っちゃいけませんわよ」

「魔王の娘ですね。わかりました」

「魔王の娘って聞くとみんな驚くはずなんですけれども…やっぱり動じないのですね、機械人形は。」

「はい。私には感情がありません。」

「感情がない…うーん、こーやって口角を上げることはできませんの?」


指で自身の口角を上げて、にこっと笑ってみせる。


「すみません、笑顔を作ることは出来ません。」

「そうなのですね…でもいいですわ。今日からフローズンドールと(わたくし)はお友達ですわ!」

「お友達、わかりました。サーヤ様」

「サーヤ様なんて堅苦しいですわ!サーヤでいいですわ、サーヤで!」

「それではマスターを呼ぶのにふさわしくありません。」

「むむ…じゃあ仕方ないですわね。これからよろしくお願いしますわ!」


手を差し伸べたがその意図がわからなかったようで、『握手ですわ』と言うと手を握り返してくれた。その手はフローズンドールの名にふさわしいほど冷たく、冷えていた。


「それにしても女の子がそんな格好でいてはいけませんわ。(わたくし)が貴女のために可愛くて綺麗なお洋服を買ってきてあげますわ!」

「サーヤ様、ありがとうございます。」

「この遺跡は里から結構離れているから今日中には無理ですけれども…また明日、服を持ってここにやって来ますわ。だからここで待っていてくださる?」

「わかりました、お待ちしております。」


そうして私は遺跡を後にした。

とびきり可愛い服を買ってあげよう。私に仕えるドールだからメイド風の服装なんてのもいいかもしれない。


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