第3話 閑散としたマデゼア街
「街につきましたぞ」
行商人の声に意識を向ける。マデゼアの街についたようだ。
しかし街に入ってから違和感が拭えない。街は閑散とし、人々の笑い声などがあまり聞こえないのだ。
「街に活気がないな」
「まぁそうでしょうな。疫病のお陰でこの街に来る人も少なくなったと聞いておりますし」
「なるほど」
「さて。私は荷物を教会に収めねばなりませんので。」
「そうでしたね。それでは俺も失礼します。また何か縁があれば。」
「はい。今回はありがとうございます。縁があればまたお会いしましょう。」
行商人と別れ、大通りに出てみる。
他の街であればいつもは賑わっているはずなのだが、やはり閑散としていた。
「やはり疫病の影響なのか?」
俺は違和感の原因を探す為に斡旋所に向かって歩いていた。ここに何かヒントがあるかもしれない。
「いらっしゃいませー」
斡旋所に入ってもやはり人気は少ない。
受付嬢が挨拶するが、心做しか元気がないように見える。
酒場の方を見てみても冒険者らしき人が何人か居るだけで、賑わってはいなかった。
「疫病の影響なのか?」
「そうなんですよ。疫病が流行したお陰で街に来る人が少なくなって誰も依頼受けてくれないんですよ。」
「依頼って疫病関係?」
「そうです。流行始めた頃から出てたんですが感染が怖くてそのままなんですよ。依頼者様からは早く解決してくれと催促されるし。」
なるほど…多分依頼主は町長なんだろう。なかなか依頼を受けてくれないから焦っているのかもしれない。冒険者側から見ても、感染リスクがあるからなかなか踏み切れないのは分かる。
「はぁ~誰でもいいから受けてくれないかなぁ~…」
「分かった。俺がその依頼受けよう。」
「本当ですか!ありがとうございます。」
「実はたまたまこの街に薬を運んでいる行商人と会って、一緒に来たんだ。ほっとけないからな。」
「そうだったんですね。依頼の方は受け付けました。詳しい話は教会のシスターに聞いて下さい。治療しているのはシスター達ですから」
「分かった。」
そう言うと俺は斡旋所を出て、教会に向かう。
パッと見はどの街にでもあるような何の変哲もない教会だ。
中に入ると一人のシスターが出迎える。
「レファナ・レンスです。依頼を受けて下さりありがとうございます。」
「ユウ・クレストだ。」
周りを見渡すとシスター全員が疲れた顔をしていた。レファナも例外ではない。何とか疫病を治そうとしているが、それが出来ず困り果てているのだろう。だからこそ依頼があったわけだし。
「早速だが、詳しい話を聞きたい。いいか?」
「分かりました。お話します。」
レファナの話によればつい数週間前から『体調が悪くなったから助けてくれ』と人々が押し寄せて来たらしい。
見ると全員意識がない状態だったし、回復魔法もかけてみたが全く効果がなく、司祭に相談しても取り合わなかったそうだ。
「なるほど。でも司祭が取り合わないってなんだ?これだけ大事になっているのに。」
「分かりません。最近はお部屋に閉じこもって出てきませんし、疫病の対応もシスターに任せると言ったきりで。先程届いたお薬も効果がなかったし…どうしましょう。」
やはり行商人の薬は効果なかったか。厄介な疫病だ。
「お願いです。もう病気で死ぬ人を見たくないんです…どうか助けてください。」
「わかった、協力するよ。患者は隔離されているんだろう。少し見せてくれないか?」
「わかりました。こちらです。」
レファナに連れられて階段を下りていき、地下の隔離部屋に入る。
そこには何十人と苦しそうな顔をしている子供達がいた。
「やはり。」
俺の違和感は当たっていた。この街に入ってから子供達を見ていないのだ。例え街中が閑散としていても、普通の街であれば子供達の声や遊んでいる姿があるはずなのに。
「患者は子供だけですか?大人で発病した人はいないですか?」
「いないですね。運ばれて来たのは全員子供でした。」
「教会と子供達は何か接点ありますか?」
「えぇと…疫病が広まる前に、街中の子供達を集めてパーティをした事があります。何故か大人達は立ち入り禁止になってて、私たちシスターも入れなかったんです。」
「なるほど…そこで何かあったとしか。」
そう言うと俺は子供達に近付いて、様態を見てみる事にした。
「これは!!」
「何かわかりました?」
子供に近付いてみると異様な強い魔力を感じた。これは、疫病なんかではない。
「これは疫病じゃありません、呪いですよ。その昔、魔族が良く使っていた呪いにそっくりです。」
その昔、人間が魔族を討伐しに戦争を仕掛けた時に魔族側が使ったのだ。俺は旅をしている時にその文献を目にした事があった。
「呪いですか?それではこの子達は助からないと?」
街の子供たちがみんなこのまま死んでしまうのか。レファナはガックリと膝を落とし、絶望の表情を浮かべる。
「治す方法は、呪いをかけた魔族を倒す事です。」
「そんな…何処にいるのか分からないのに?」
「分かりませんが、司祭とその魔族が繋がっている事は確かです。行きましょう、司祭室へ!」
俺とレファナは駆け出して行く。全ての真相を知っている司祭の元へ。




